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Highlighting JAPAN

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クリエイティブルーツ

地球人を育てるデジタル地球儀(仮訳)



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2014年8月末まで東京・丸の内で開催中の「触れる地球ミュージアム」。ここで展示されているデジタル地球儀は、地球環境に関する最新情報が常時インターネット経由でダウンロードされ、地球儀に手をかざして回すことで、球形のディスプレイに多様な情報が映し出される。リアルタイムの気象情報や地震・津波、渡り鳥の移動、数億年の大陸移動、地球温暖化からPM2.5(大気汚染の原因となる浮遊粒子状物質)の越境汚染までリアルに表現し、地球が生きていることを体感することができる。

このプロジェクトを手掛けるのは、京都造形芸術大学教授でNPO法人Earth Literacy Program代表の竹村真一氏。1995年に起きた阪神・淡路大震災を受けて、世界中の地震の発生を可視化するウェブサイトを1996年に作ったことがきっかけとなった。「これだけ地震が起こっているということを見える化すれば、日本人の地球観が変わるだろうと思いました」と竹村氏は当時を振り返る。

さらに地球を可視化する装置が必要だと思った竹村氏は、地球儀の形態で開発することを思いつき、2002年にプロトタイプを作った後、2005年に大型版を完成させた。直径1.28メートルの触れる地球は、本物の地球の1000万分の1の大きさ。実際は1万メートルの厚さのある対流圏が、この縮尺だとちょうど1ミリになっている。

竹村氏の願いは、地球儀を作ることではなく、地球人を作ること。地球人を作るためには地球規模で思考するためのツールが必要だという思いが竹村氏を突き動かした。「活版印刷や大航海時代の世界地図によって歴史が転換期を迎えたように、この触れる地球によって、地球的に考えられる人が増えてほしい」と竹村氏は語る。

最新技術を使ったクリエイティブデザインに特化するGKテックと共同開発した大型版は、2005年に愛知県名古屋で開催された日本国際博覧会「愛・地球博」で展示され、その年のグッドデザイン金賞を受賞した。また2008年の洞爺湖サミットではメディアセンターの目玉として展示され、好評を博した。

2013年、竹村氏は新たにJVCケンウッド社と共同開発し、直径80センチの中型普及版を発表した。主に国内外の教育機関や博物館、プラネタリウムなど公共施設への導入が進められている。中型普及版はリリース後すぐに第7回キッズデザイン賞の最優秀賞内閣総理大臣賞を受賞した。

竹村氏は、触れる地球を「オールジャパンの技術を結集したプラットフォーム」だと表現する。地球儀に内蔵しているプロジェクターや、地球をまわす手の動きを感知するセンサーは日本の高い技術力で作られている。地球儀ディスプレイの半透明のアクリルドームには、世界最高水準のリアプロジェクション技術が使われている。

さらに、触れる地球に提供されているコンテンツも日本のトップクラスの科学データの結集だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や海洋研究開発機構(JAMSTEC)、ウェザーニューズ、国立環境研究所などから100種類以上の地球観測データの提供を受けている。「だからこそ世界に届ける意味があるのです」と竹村氏は言う。

このクール・ジャパンの創造は、内向きに自国だけを見るのではなく、地球目線で地球全体を見渡しながら、日本と世界を繋いでいくことの必要性を私たちに教えてくれる。

 



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