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Highlighting JAPAN

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和食

刃先とともに進歩する(仮訳)

世界の寿司職人を養成する東京すしアカデミー



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東京すしアカデミー講師の西田修氏は立ったまま包丁を置き、生徒たちにこの日の授業の目的を簡単に説明する。それは小さなお皿に6分以内に手際よく刺し身を並べることだ。西田氏が指導する多数の学生は料理人や料理人志望者で、世界的な寿司の人気を示すかのように、その国籍はエストニア、フィリピン、アメリカ、メキシコ、ポルトガル、台湾、ギリシャ、イギリス、ドイツなど多様だ。

2002年に開校した東京すしアカデミーは、日本初の江戸前寿司職人を養成する学校である。江戸前寿司とは酢飯に刺身をのせて作る握り寿司を中心とした東京の伝統的な寿司のことである。寿司職人になるには、通常10年間の修行期間が必要だが、同校では短期の濃密な指導で体系的に技術を学ぶことができる。寿司シェフコース(1年制)、江戸前寿司ディプロマコース (平日8週間) などがあり、後者は手に職をつけて再び海外を目指す日本人だけでなく、観光ビザで来日する外国人にも人気だ。

東京すしアカデミーの執行役員・総務部長の杉山ひろみ氏によると、アジアの中でもタイ、シンガポール、ベトナムなどの東南アジアで寿司の人気が急激に高まっているという。同校は2013年4月にシンガポールにも寿司職人養成校を開校した。現地では技術指導を英語で行い、シンガポール人の受講生だけでなく、英語で寿司を学びたい外国人にも好評だ。また、中国の広州と香港に直営のレストランを2店舗持っており、東京すしアカデミーの卒業生を研修生として受け入れている。2013年10月から2014年2月にかけ、インドのニューデリーとムンバイで行われた農林水産省主催のキャンペーンJapanese Food Season–Oishii Japan in India (オイシイジャパン) が行われたが、杉山氏によると同省と連携して調理の実演や講習会を行なったという。 

驚くまでもないが、同アカデミーに対する海外からの関心は近年、急速に高まっている。当初は日本語の話せない受講生には、個人指導を基本としていたが、2010年には通訳者を介した英語による指導を開始し、現在では100名を超える外国人受講生が卒業している。

ギリシャのロドスにあるホテルチェーンで料理長を務めるStavros Manousakisさんは、本来の仕事を休んで講座を受講し、1週間後に卒業する予定だ。勤務先の客室500室のホテルに寿司レストランがオープンするため、修行のため日本に送り込まれたのだ。Manousakisさんによると、ギリシャでは寿司の人気が出始めているそうだ。ただし、多くのお店では、正しい技法について「誰も知らないので、まともな寿司とはいえない」とのこと。すでに料理人として豊富な経験を持つ彼だが、「以前の知識は忘れなければなりませんでした。今は日本のやり方を学んでいます」と語る。

東京すしアカデミーは開校以来13年間で2000人以上の卒業生を生み出し、うち約500人の日本人卒業生が世界各地で働いている。田中寛人さんも海外で活躍する卒業生のひとりだ。電子部品会社で5年間、海外営業を担当していたが、仕事を辞めて1年制の寿司シェフコースに入学した。卒業後はすぐに、イタリアのミラノの日本レストランで仕事が見つかったという。田中さんは「学校で学んだことを職場で活かせれば、3~5年かかかる仕事も1年間で習得できると思います」と語る。

8年の在米経験のある在校生のトウジアキコさんも、同様の未来を思い描いている。彼女は2、3年日本で働いた後、「いつか自分のレストランを開店する」目標を胸に、海外に行くことを望んでいるという。国内外問わず男性優位と考えられてきた料理人という職業に就く女子学生は増加しつつあるが、トウジさんもそれを象徴する存在である。杉山氏によると、近年は女性の在学生が5割に達することもあるという。

健康的でおいしく、おしゃれな食べ物として、世界が求める寿司の魅力は衰えを知らない。東京すしアカデミーは寿司を一貫ずつ握りながら世界に挑む人材を養成し続けている。



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