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Highlighting JAPAN

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日本の夏

記憶に残るはかない芸術 (仮訳)

「秋田・大曲の花火」 



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夜空をカラフルに彩るはかない芸術――花火は、日本では伝統的に夏の風物詩となってきた。花火が打ちあがる音やキラキラと輝く光で、涼しさを感じ、暑さを忘れることができる。7~8月は花火の時期となり、全国各地のコミュニティで花火大会が催される。

秋田県大仙市大曲はそのようなコミュニティのひとつ。日本の東北地方にあるこの地域では、毎年8月第4土曜日に「全国花火競技大会(大曲の花火)」が開催される。規模、音響、色彩などさまざまな点において日本一の花火大会の一つと言われている。

打ち上げ花火は、紙で出来た球型の容器に火薬をつめて作られた花火玉を夜空に打ち上げ、華やかな姿を楽しむものだ。1885年の創業以来、大曲で花火の製造・販売を行っている小松煙火工業の五代目社長、小松忠信氏によると、大曲における花火の歴史は江戸時代にさかのぼるという。戦国時代を経て、平和な江戸時代が始まり、戦がなくなると、火薬を扱える兵がその技術を戦術以外のものに活かそうとして花火師になり、花火を専門に扱う火薬屋が登場したそうだ。

花火はやがて、五穀豊穣を願う意味で打ち上げられるようになる。しかし、花火を打ち上げるにはお金がかかるため、地主がお金を出し、花火を打ち上げた。地主たちは観客を魅了するため、お互いに競うようになったという。花火師たちは毎回新しい技術を取り入れながら、切磋琢磨し、それまでにない花火を作り上げてきた。花火は神社の祭典の余興としても行われ、1910年には「花火競技大会」という形となり、その花火の見事さで知られるようになった。

近代になると、花火の世界にもハイテクの時代が到来する。元々は手動での点火であったが、1980年代には電気による点火が始まり、90年代からは音楽と花火をシンクロさせるようになった。今や打ち上げのタイミングを1秒違わず正確にコンピュータでコントロールできる。

小松煙火工業は、「大曲の花火」に全87回連続参加し、平成25年8月には「昇銀引五重芯変化菊」という花火が評価され、最優秀賞である「内閣総理大臣賞」を受賞した。五重芯とは、花火の輪の中に、さらに五重の同心円を描くという全6色のカラフルな花火。その複雑さゆえにほとんど見ることができない究極の花火である。小松煙火工業の洗練された技術力を持ってしても、「変化菊」を完成させるまでに8年かかったという。

日本の花火師は、「花火の輪に究極の円を求める」と小松氏は言及する。均整がとれた同心円状のものを何層もつくるために、緻密すぎて観ている人に伝わらないことまで突き詰めるのだそうだ。層の密度を均一にし、完璧な同心円状の花火が完成するのはたった一瞬の出来事だ。しかし、「パッと光って一瞬に消えるのが花火の本当の良さなのです。それらは私たちの記憶に一生残るでしょうから」と小松氏は説明する。

花火には川で打ち上がるものもあれば、海で打ち上げるものもある。大都会で打ち上がるものもある。東京の最新ランドマークである東京スカイツリーからは隅田川沿いに花火を見ることができる。ぜひこの夏はバリエーション豊かな日本の花火を楽しんでほしいです」と小松氏は言う。



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