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Highlighting JAPAN

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地球温暖化対策

温暖化を目の前に世界が動く(仮訳)

国立環境研究所 藤野純一氏インタビュー



地球温暖化は国際的な社会合意として、さまざまな試みが世界各地で重ねられてきた。温暖化現象が国際的に認知されるようになって以来20年以上を経て、地球温暖化をめぐる議論と技術はどう変化したのか。国立環境研究所社会環境システム研究センターの藤野純一主任研究員に話を伺った。

地球温暖化の現状とその影響についてお聞かせください。

2014年11月に、地球温暖化を扱った公式文書であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次統合報告書が発表されましたが、その内容はショッキングなものでした。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度は過去80万年で最高となり、多くの極端な気象現象が観測され、このままでは21世紀末に約5度上昇してしまう予測も発表されました。産業革命以降1.9兆トンの二酸化炭素を排出しており、地球全体の平均気温上昇を2度以内に抑えるという国際目標を66%以上の確率で達成するために残された排出量は1兆トンに過ぎません。現在のペースが続けば、30年足らずで上限に達してしまうため、2100年前後に世界の排出量をゼロにしなければならないことが示されました。ここ数年、地球全体の気温上昇の停滞状況を指すハイエイタス(hiatus 中断という意味)と呼ばれる時期が続きましたが、2014年12月に世界気象機関は平均気温が観測史上過去最高を示したことを発表しました。

豪雨や熱波、寒波などの気候変化が起こりやすくなるなど、地球は確実に変化しています。自然災害への対策不足による二次災害も含め、地球温暖化が人々の健康や生態系へ与える影響は大きく、例えば都市計画にしても、私たちは温暖化を前提として取り組むべき段階に入ったと言えるでしょう。

世界や日本ではどのような対策に取り組んでいますか。

環境問題が取り沙汰される途上国においても、生活レベルの向上に伴い、水や大気・土壌汚染対策から着手し、環境都市づくりを掲げるなど、環境技術への関心は高まっています。先進国は、過去の経験から高度な技術を生んでおり、中でも日本はトップレベルです。

メジャーなものとしては省エネや再生可能エネルギーの技術開発が進んでいますが、温暖化ガスの2100年ゼロ排出を目指して、排出された二酸化炭素を廃棄物として隔離し、貯留する技術も真剣に検討されています。液化二酸化炭素を、石油を掘削した井戸や地盤の安定した岩盤地層の隙間などに注入する技術です。一方で、人々の省エネ行動や環境投資を促すような社会的な仕組みを行動経済学や社会心理学、さらにはビッグデータ分析を用いて提示するというアプローチもあります。

今後日本はどのようなことに注力すべきですか。

日本は深刻な環境問題を経験、克服してきた先行者であるため、高い技術を持っていますが、過去に成功した経済モデルの先にある、持続可能な社会経済システムのビジョンを描けずに、もがいています。

地域レベルでは、エネルギー効率の良い住宅を普及させる仕組みづくりや、コンパクトシティの核となる新型路面電車(LRT:Light Rail Transit)の敷設に伴う集住の促進など、高齢化社会や地域活性化の解決にもつながる持続可能社会づくりの萌芽があります。さらに、成長著しいアジアと連携協力することで、共に発展する持続可能な社会経済システムに向けた兆しがあります。

グローバルな環境問題は、私たちの身近な環境意識の向上から解決されるものです。私たちは自分たちの住む地域に与えられた自然資源を大切に使い、効率的に循環させなければなりません。日本は、バランスのとれた将来ビジョンを描きながら、実際に温室ガス排出量削減の実績を打ち出し、環境問題の先行者としての姿勢を国際社会へと示す必要があるでしょう。





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