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Highlighting JAPAN

世界一の健康長寿を目指して

かつては、県民一人当たりの塩分摂取量が多く、脳卒中などによる死亡率で全国ワースト1位も経験したが、約20年前より生活改善に取組み、日本一の長寿県として知られるようになった長野県。さらに新たに始動させた信州ACEプロジェクトでは県民が一丸となって世界一の健康長寿の地域を目指している。

平均寿命が男女ともに全国1位(2010年)を誇る長野県。2014年より、更なる展開として、県民一人ひとりが自らAction(体を動かす)、Check(健診を受ける)、Eat(健康に食べる)に積極的に取り組むことで、世界一の健康長寿を目指す県民運動「信州ACEプロジェクト」を推進している。健康長寿への取り組みについて、長野県健康福祉部の小林秀子氏に話をうかがった。

長野県民の長寿の要因として、長野県が行った「健康長寿プロジェクト研究事業」では「高い就業意欲や積極的な社会活動への参加による、生きがいを持った暮らし」、「健康に対する意識の高さと、健康づくり活動の成果」、そして「高い公衆衛生水準及び、周産期医療の充実」を挙げている。

長野県民の高齢者就業率は男女ともに全国1位(2012年)。農業従事者が多く定年がないことや、ボランティア・サークル活動に参加できる機会が多いことがその一因と考えられる。

他方、食塩摂取量が国の定めた摂取基準一日当たり男性8g未満、女性7g未満と比較して、成人一人一日あたり平均10.6gと多く、脳卒中死亡率が全国で男性13位女性8位(2010年)と高い。

しかし、平均寿命、健康寿命(平均自立期間)ともに男女全国1位(2010年)を保っているのは、野菜の摂取量が男女ともに全国1位(2012年)と多く、一方で習慣的喫煙率やメタボ該当者・予備軍が全国で最下位レベルにあることが大きい。さらに人口10万人あたりの保健師数全国1位(2012年)をはじめ、専門職による地域の保健医療活動が活発であり、健康的な生活を普及啓発する保健補導員や食生活改善推進員など健康づくりの住民ボランティアの活動も盛んという特徴がある。

「1980年に減塩運動を本格的に始めた時点では、県民の食塩摂取量は主婦1人1日当たり15.9gもありました。栄養士や食生活改善推進員などによる減塩講習会や製造業者と協力した減塩製品の開発など、長年にわたり働きかけてきましたが、現在でも食塩摂取量は全国で2番目に高く、決して優等生ではありません。この点をさらに改善するよう努力しながら、食生活、運動、健診の3項目に重点をおいて生活習慣病予防を目指すのが『信州ACEプロジェクト』です」と小林氏は語る。

信州ACEプロジェクトの具体的な内容は、「速歩や体操などで体を動かす」(Action)。「年に一度は検診を受け、生活習慣を見直す。高血圧者は毎日血圧測定をする」(Check)。「1食の塩分は3g、野菜はもう一皿を心がけ、外食の際には塩分表示を確認する」(Eat)である。

すでに多くのプランが実施されており、ほとんどの市町村でウォーキングコースの整備が進められ、コンビニや飲食店などでのACEメニューの提供、81万の全世帯に対する減塩の方法等に関する情報配布などが一例として挙げられる。

また、日本では2013年度に国民医療費が過去最高の40兆610億円となり、過去最高を更新した。そのうち65歳以上分は23兆1,112億円にのぼる。一方で、長野県は人口1人当たりの後期高齢者(75歳以上)医療費が長年にわたり全国でもっとも低い水準を保っている。

「医療費の削減は大事ですが、それがあくまでも個人の健康と幸福の副産物であるように、高齢者だけでなく老若男女の健康づくりに取り組むことが大切だと考えています」と小林氏は話す。

世界一の健康長寿という目標に向かって、企業、市町村、病院、学校、飲食店・コンビニ・スーパー、そして団体やボランティアなど、人々の生活にかかわるコミュニティ全ての団結力が感じられる。本格始動間もない「信州ACEプロジェクト」は、すでに順調に走り始めているようだ。