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Highlighting JAPAN

インスピレーションと美の瞬間

Coffret ProjectとLalitpurの設立者であり代表の向田麻衣氏は、人生の美しい瞬間を発見し、探求するよう数千人もの女性たちを励ましてきた。ネパールで高品質なオーガニック化粧品の製造を手がけつつ、向田氏はネパール人女性たちに自信を浸透させる方法を模索している。

「もし何でもやりたいことをできるとしたら、何をやりたいですか?」と向田麻衣氏は問いかける。このシンプルな問いをきっかけに、彼女は女性たちに自尊心や自由をもたらす方法や、ネパールで人身売買から救出された人々のための仕事を創出する方法を見出した。

向田氏は若干15歳のときに慈善事業ベンチャーに興味を持った。ネパールでNGO職員として働く高津亮平氏の講演を聞いた後、向田氏はその国へ行こうと奮い立ち、貯金をして2年後に現地にいる高津氏の元を訪れた。向田氏は、ヒマラヤ山脈の美しさと、人々が苦境にいるにもかかわらず幸せそうにしている様子に心を打たれた。しかし、彼女は現地の人々のために何ができるかが分からず、途方に暮れたとも回想する。

2008年、慶応義塾大学の4年生だった向田氏がトルコで実地調査を行っているとき、彼女のライフワークが見つかった。彼女は多くの人々にインタビューを行い、シンプルに何がしたいかを聞くことで彼らのニーズを知ろうとした。「私は決まった答えのない質問をすることで、人々が本当に関心を持っていることを理解したかったのです」と向田氏は振り返る。多くの女性たちは、化粧をしてもっと美しくなりたいと回答した。向田氏は日本に帰国し、化粧品を集めてからトルコへ戻り、そこで最初のCoffret Project (コフレ・プロジェクト) ワークショップを開催した。「コフレ」とはフランス語で「ビューティー・ボックス」を意味する。

化粧品が人々とつながる方法となった。「もちろん、メイクの色を通じてコミュニケーションしますが、相手の顔を触ることでも親しみのあるやりとりや交流が生まれます」と向田氏は語る。気持ちはいまだにネパールと強くつながっていた向田氏は、2009年12月にCoffret Projectをネパールで展開した。現地のシェルター (保護施設) にいる女の子たちの悲しみに沈んだ様子を見て、彼女は心を痛めた。化粧品は、彼女たちの笑顔や自尊心を取り戻すための向田氏ならではの手段となった。

Coffret Projectは拡大し、インドネシアやトルコでもボランティア活動を行うようになった。一方で、2011年に東日本大震災が東北地方で起きた直後、東北出身の向田氏は自身の事業を日本でも行った。津波により壊滅的な被害を受けた石巻市が復興に向けて奮闘しているなか、多くの人々は仙台市の職場への通勤を続けていた。

「服や化粧品を失った石巻市の女性たちが、持物を失っていない仙台市在住の同僚たちと一緒に働くことはとても困難でした」と向田氏は振り返る。「私たちが新しい化粧品を一人の女性に持っていくと、その女性は笑顔になり、仕事に行くときにこれを使えると言ってくれました」。東北におけるCoffret Projectの活動は半年間にわたり続けられた。

ネパールに再び注力するようになった向田氏は、シェルターにいる女性たちを支援する別の方法を検討した。Coffret Projectはそれまで約3年間行われており、女性たちの多くは自信を付けつつあった。仕事を作り出したかった向田氏は、あの時と同じ質問を投げかけてみた。「もし何でもやりたいことをできるとしたら、何をやりたいですか?」美しさや化粧品の力を体験した女性たちは、その分野に関わり続けることを望んだ。1年半におよぶ計画期間を経て、2013年5月にLalitpur (ラリトプール。「美の都市」の意) が設立された。ヒマラヤ近辺で採られた原料を使ってオーガニックなスキンケア製品を作るこの会社は、シェルターにいた女性たちを雇用している。

Lalitpurの強みは、向田氏がネパールへと引き寄せるコラボレーションにもある。何人かの日本人アーティストたちが現地のコミュニティへやってきて、Lalitpurのためにパッケージデザインや写真、絵を手がけた。アーティストたちとつながることで、向田氏はネパールの状況を人々により知ってもらいたいとも願っている。彼女は現在映画製作者や写真家と協力し、新しいアイデアを具現化しようとしているところだ。そして今年、向田氏は既存のベーシックラインとメンズラインを補完する新ラインとなる「Message Soap, in time」を立ち上げた。このシリーズは、石鹸の中にメッセージをプリントした生地を隠し、それをプレゼントすることで、自分の気持ちを伝えるというものだ。

今後の計画や展望をたずねると、向田氏はこう語った。「これまで私は外に目を向けてきました。そろそろ自分が持つ強みは何かを自問して、自分の内面と向き合い、自分に対して何をやりたいかを問いかけても良い頃ではないかと思っています」。彼女の答えが何であれ、それは間違いなく新たな美しい瞬間を生み出すことだろう。