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Highlighting JAPAN

福岡をゲーム産業の「ハリウッド」に

数多くのゲーム制作会社が集積する福岡は、ゲーム産業の世界的な拠点を目指している。

福岡県福岡市は今、注目を集めている日本の都市の一つである。イギリスの情報誌「「MONOCLE」誌が今年6月に発表した「世界で最も住みやすい25の都市ランキング」において、福岡市は7位にランクされている(1位は東京、2位はベルリン)。福岡の住みやすさに魅かれ、移り住む人も多い。日本は少子高齢化が進み、多くの市町村で人口が減少しつつある。しかし、2015年の国勢調査によれば、福岡市の2010年から2015年にかけての人口増加率は5.1%と日本の主要都市で最も高い。人口は150万人を超え、全国で5番目の人口を持つ都市となった。

人口増加だけでではなく、起業する人も増えている。2016年7月に公益財団法人「福岡アジア都市研究所」が発表した調査結果によると、福岡市の開業率は約7%と主要都市の中で最高となっている。このように活発化する福岡のビジネスの中で、特に近年成長しているのがゲーム産業である。

「福岡はストレスが少ない街です。都市の機能がコンパクトにまとまっているので、生活や仕事がしやすいのです。満員電車に長時間乗って通勤する必要もありません。市の中心から空港までも近いです。エンターテイメントも十分に楽しめますし、食事もおいしいです」と株式会社レベルファイブ取締役社長/CEOの日野晃博氏は言う。「こうした福岡の環境はクリエイティブな仕事をする場所として、非常に適しているのです」

1998年に福岡市で創業されたレベルファイブは、数々の人気ゲームソフトを世に送り出している日本を代表するゲーム制作会社である。代表作の一つ、「妖怪ウォッチ」シリーズは、ゲームソフトの国内外累計出荷本数1350万本を超え(DL版を含む)、テレビアニメ、コミック、映画、関連玩具なども大ヒットし日本で社会現象を巻き起こした。

レベルファイブだけはなく、ガンバリオンの「ワンピースアンリミテッド」、サイバーコネクトツーの「NARUTO ナルティメット」など、福岡にはゲーム制作会社が集積し、数多くのヒット作を開発している。それに伴い、ゲーム関連の人材が福岡に集まっている。レベルファイブの本社で働く約280名の社員の出身も、約半数は九州や福岡以外である。

現在、福岡のゲーム産業振興の一翼を担っているのが、日野氏が委員長を務める「福岡ゲーム産業機構」(以下、産業機構)である。産業機構は福岡市、九州大学、福岡のゲーム制作企業を中心に結成された「GFF(Game Factory's Friendship)」によって2006年に設立された。産業機構はゲーム関連企業への就職希望者に対する企業合同説明会やインターンシップ、ゲームコンテストなどの様々な人材育成活動を行っている。

「最近は、行政のゲームに対する理解も非常に深まり、ゲームが重要な産業として公的に認められるようになりました」と日野氏は言う。「福岡のゲーム産業はまだまだ発展途上です。世界の人が楽しめる、もっと面白いゲームを作れるのだと、クリエーターを鼓舞しています」

日本はこれまで様々な世界的なゲームを生み出してきた。例えば、今年夏のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式で安倍晋三首相が「マリオ」に扮して話題となった「スーパーマリオブラザーズ」、現在、世界中で「ポケモンGO」がブームとなっている「ポケットモンスター」などである。レベルファイブも昨年、海外でのクロスメディア展開向けの拠点LEVEL-5 abbyをアメリカに設立し、作品の海外展開を強化している。その中でも、妖怪ウォッチは、韓国、フランスやスペインなどのヨーロッパで、日本と同じように様々な妖怪のキャラクターが小学生の間で人気となっている。テレビアニメの放送も100カ国以上に広がっている。

「海外を意識して妖怪ウォッチを作った訳ではありませんが、妖怪という日本独自の文化がファンタジーとして海外で受け入れられたのではないでしょうか」と日野氏は言う。「私たちはディズニーのように、世界の人が話題にする作品を常に目指しています。そして、福岡を、世界中からゲーム関係の人材が集まる、ゲーム界のハリウッドにしたいです」