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Highlighting JAPAN

福島県における産業復興の兆し

2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故により甚大な被害を受けた福島県は、懸命な復興努力によって住民が戻り始め、産業復興が始まり、8度目の桜の季節を迎えようとしている。

2018年3月で、7度目の3.11を迎える。

福島県では、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により避難指示区域が設定された。地道な除染活動や自然減衰による空間線量率の低下や、懸命な生活環境の整備により、避難指示は徐々に解除され、2013年8月の避難指示区域設定時には約8.1万人だった避難指示対象者の数も、2017年4月時点で約2.4万人に減少(図参照)。福島第一原子力発電所構内は約95%のエリアで一般作業服等での作業が可能になるまでに環境が改善され、汚染水対策や燃料デブリ 取り出しに向けた原子炉格納容器の内部調査も進んでいる。

今、福島県は、産業復興に向けた動きを加速している。福島県の日本酒は全国新酒鑑評会で5年連続金賞受賞数「日本一」に輝いている。農産物も諸外国による輸入規制の緩和が進み、積極的なPR活動が実を結んだことで桃などの特産品も震災前の輸出量を取り戻した。

さらに、廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産分野などを重点分野に掲げる「福島イノベーション・コースト構想」が推進されている。

例えば、被災地の一つ浪江町の棚塩産業団地では、2020年度中の稼働を目指し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)と民間企業により1万キロワット級の世界最大規模の水素製造実証事業が始まっている。県内での水素利用のみならず、2020年の東京オリンピック・パラリンピック時に東京で利用することも目指している。また、この産業団地には、福島ロボットテストフィールドの一部としてドローン用の滑走路が配置される予定があり、企業誘致に向けた工場用地の造成も進められている。

政府はこの産業団地を始め被災地で事業を再開する被災企業や新たに事業所を開設する企業への設備投資補助「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金(製造・サービス業等立地支援事業)」を行っている。

例えば、日産自動車株式会社と住友商事株式会社が出資して設立し、電気自動車用リチウムイオンバッテリーの二次利用を手がける横浜市のフォーアールエナジー株式会社は、2018年春に浪江町に工場を開所する。蓄電池の再利用・再製品化事業を進める同社と浪江町復興計画第二次に掲げるスマートコミュニティ等のコンセプトが一致し、2017年10月に工場進出の協定締結となった。

同社は、一製造拠点としてだけでなく新技術の開発拠点としても大きく飛躍できるよう浪江町とともに発展していくことを目指している。

電気自動車を始めリチウムイオンバッテリーは、拡大を続けており、使用後の再利用は非常に重要となっている。フォーアールエナジーは独自に開発した技術で、浪江町の工場を使用済み電気自動車用リチウムイオンバッテリーの再利用・再製品化の拠点とする計画であり、浪江町進出は、同社にとっても大きな意味を持つ。

他の被災地域の産業団地にもエネルギーや機械関係の企業などが進出している。さらには廃炉に向けた研究基盤として、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が研究施設を整備し、国内外の英知を結集して、廃炉に係る研究開発や人材育成を進めており、新産業、新ビジネスの創出が期待されている。

福島県の復興は、オールジャパンの取り組みによって、更なる発展を目指し前進を続けている。



関連動画: The Next Step ~福島の未来を共に~
https://www.youtube.com/watch?v=Cg_qN_6odtI


(注)
i  燃料デブリとは、冷却材の喪失により原子炉燃料が溶融し、原子炉構造材や制御棒と共に冷えて固まったもの。
https://www.jaea.go.jp/04/ntokai/fukushima/fukushima_01.html