Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan May 2018 > 農業

Highlighting JAPAN

 

グローバル市場に広がる日本の農林水産物・食品の可能性


日本政府は「2019年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標」を掲げている。この実現に向けた取組を、農林水産省食料産業局の井上宏司局長に伺った。

■日本の農林水産業・食料産業がグローバル市場を拡大するための取組を教えてください。

日本の農林水産物・食品の輸出促進と、訪日外国人観光客の需要、いわゆるインバウンド需要への対応に取り組んでいます。2017年、日本の農林水産物・食品の輸出総額は約8071億円で、外国人観光客が自国へ持ち帰る食品などの購入額約3500億円と、日本での飲食に使われた約8900億円を足せば、2兆円を上回る巨大な市場となりました。これをさらに伸ばしていくことが、農林水産業・食品産業の成長産業化に向けた大きなテーマです。輸出品目に関しては、ほたて、真珠、たばこなどの輸出額が大きいのに対し、最近は牛肉、イチゴ、緑茶、米という典型的な農産物が増加傾向にあります。

■2019年の農林水産物・食品の輸出額を1兆円に拡大する政策目標の実現に向け、どのような策が講じられていますか。

大きなところでは、「日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)」の新設です。この組織が日本の農林水産物・食品などのPRを海外で行い、海外の消費者などの認知度向上と市場拡大を図っています。
また、国内の生産者と国内外の商社、国外の外食産業、小売業などをつなげていくマッチングを進めています。

従来は、海外の食品展示会への出展の支援などを行っていましたが、さらに、2017年10月には「“日本の食品”輸出EXPO」を千葉の幕張メッセで初めて開催しました。70か国から訪れたバイヤーは約2800名で、商談スペースが常に埋まるほどの盛況ぶりだったため、第2回目となる今年は規模を倍増して80か国4000名のバイヤー招致を見込んでいます。

また、日本の生産物が正当に評価されるには、「権利の保護」と「ブランド化」も大切です。海外での植物品種の登録出願の支援を行っているほか、地域独自の風土や生産方法などが結びついた産品を保護する「地理的表示(GI)保護制度」(参照)といった制度も実施しています。さらに、食品安全や労働環境、環境保全に配慮した農業生産工程管理の規格である「G.A.P.(ギャップ)」や日本発の食品安全管理の規格である「JFS2(ジェイ・エフ・エス)」などの認証取得の推進も、「ブランド化」の手段の一つです。

■グローバル市場における日本の農林水産業と食料産業について、今後の展望を教えてください。

かつて、サシの入った日本の牛肉は健康志向の欧米では敬遠されるのではないか、という声もありましたが、すき焼きやしゃぶしゃぶにするといった食べ方も合わせて提案することで需要が大きくなりました。このように、単に個別の産品の売り込みを行うのではなく、食べ方を紹介する・食文化と一体的に発信するといった工夫も、輸出拡大には必要です。

現在、日本食レストランが世界中で急増するなど、日本の食への関心は高まっています。この好機を逃すことなく国内産業の活性化を図っていくため、あらゆる取組をもって将来につなげていきたいと思います。その際、各々が独自に動くのではなく、食と観光を一体として日本の地域の魅力をアピールしていく「SAVOR JAPAN3(農泊 食文化海外発信地域)」(参照)のような活動にも注力していかなくてはなりません。

脚注)
※1 G.A.P.(ギャップ)
GOOD(適正な)、AGRICULTURAL(農業の)、PRACTICES(実践)を示す国際第三者認証。120か国以上に普及し、事実上の国際標準となっている。

※2 JFS規格
日本発の食品安全マネジメント規格で、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)によりその規格と認証のしくみの構築、運営がなされている。

※3  SAVOR JAPAN https://savorjapan.com/