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Highlighting JAPAN

世界食となったカップ麺

カップ麺が世界食になった背景には、インスタントラーメンの発明者が失敗を糧に挑戦を続けたことにあった。

カップ麺は、今や世界中の人々にとって定番の食事となっている。手頃な価格で、調理が簡単でおいしく、最近では健康志向のものも増え、消費者の様々なニーズを満たしている。

カップ麺は、インスタントラーメンを発明した安藤百福さんの、ラーメンをどんな場所でも手軽に食べられるようにしたいという決意から生まれた。安藤さん(日清食品の創業者でもある)は、1966年、自身が発明した世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を、アメリカのスーパーマーケットのバイヤーたちに紹介するために渡米した際に大きな壁にぶつかった。日清食品ホールディングス広報部の青木遥さんは、「当時のアメリカ人はインスタントラーメンを簡単に調理して食べるために必要などんぶりも箸も持っていなかったのです」と説明する。

安藤さんは、どんぶりや箸がないためにスーパーのバイヤーたちが麺を割って紙コップに入れ、お湯で戻した麺をフォークで食べている様子を目の当たりにし、インスタントラーメンを世界食にするための鍵は、世界の様々な食文化に適応させることであると悟った。

安藤さんは日本に戻ると、片手で持てる耐熱性のカップにインスタントラーメンが入った、新製品の開発を始めた。理想的な大きさのカップを見つけ出すために、40種類近くもの試作品を作って検討を重ねた。また、麺をカップにまっすぐ収めることも難しい問題であった。麺をカップに収めようとすると、傾いたり、ひっくり返ったりして、うまく入らなかった。安藤さんはカップに麺を入れるのではなく、麺を逆さまに伏せておいて上からカップをかぶせ、それを回転させるという「逆転の発想」によって、工場での大量生産を可能にした。

1971年、世界初のカップ麺である日清食品の「カップヌードル」が日本で発売された。当時はそのユニークな商品の良さが理解されなかったため、なかなか店舗には置いてもらえなかった。そこでお湯の出る自動販売機で売るなどしたところ、大きな話題を呼んだ。日本における成功の2年後には、カップヌードルは太平洋を渡ってアメリカでも発売された。

カップ麺は、2017年には世界で約212億食が販売された。袋麺の789億食よりも少ないものではあるが、日本、メキシコ、チリ、コスタリカ、グアテマラ、ドイツ、スペインではインスタントラーメン市場の大半を占める。

カップ麺は、現地に合った風味や材料から、麺の食感や長さまで、その国の食習慣が反映されている。容器の大きさも、それぞれの国の食文化によって変えられている。「例えば、フィリピンでは少ない量をより頻繁に食べる習慣があるので、ミニサイズが人気です」と日清食品ホールディングス広報部の岡林大祐課長は説明する。

またカップ麺は、時代とともに変化を続けている。1990年代中頃から、健康的な食生活への関心の高まりに合わせて、徐々に改良が加えられてきた。ノンフライ麺の使用や食物繊維を練りこんだ麺、さらに減塩、低カロリー、野菜増量といった様々なタイプが選択できる。カップ麺の進化は今後も続くに違いない。