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北のホストタウン 合宿の里・士別の『食』への取組み

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、現在227件のホストタウンが登録されている。(2018年4月27日現在)。中でも北海道士別市は早くから「合宿の里」を掲げる。気候も良く、ホストタウンとして大規模な施設の改修や世界基準の食事の提供に力を入れている。

士別市は北海道北部に位置し、人口2万人弱に対し、年間のべ2万人以上のアスリートが練習や大会のため訪れる「合宿の里」である。夏場でも冷涼な気候が特徴で、日本陸上競技連盟公認の第三種陸上競技場、スキージャンプ場、低酸素トレーニング施設など整備されたトレーニング施設の多くが無料で使え、それらが合宿所の近隣にまとまっておりアクセスしやすくなっている。士別市は、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下、2020年東京大会)で台湾ウエイトリフティング代表選手の合宿招致を目指し、台湾のホストタウンとして国に登録された。

同市が「合宿の里」となったきっかけは、1977年に陸上長距離のオリンピアンを輩出する順天堂大学の陸上競技部の合宿を受け入れたことに遡る。以後、長距離陣を中心に国内トップクラスの選手たちを受け入れ、1987年からウエイトリフティングナショナルチームや日本スキー連盟など多様な競技種目で国際レベルの選手を迎え入れるようになった。現在も、7〜9月をピークとして、韓国や台湾を含む国内外から例年多くの競技団体が合宿に訪れる。

同市はスポーツ×地域 スポーツで地域が活気づくが盛んであり、「食」に注力している。「美味しくて安全なのは当たり前」と2009年にGLOBAL G.A.P.(以下GGAP)(参照)の団体認証を取得している。2020年東京大会の選手村などでは、農産物調達基準にASIAGAPやGGAPといった国際基準のスポーツ×地域 スポーツで地域が活気づく生産工程管理(GAP)認証の要件を満たすことが求められる中、現在9名のGGAP認証を受けた生産者がカボチャ・ジャガイモ・タマネギ・アスパラガス・ブロッコリーの5品目を市内で生産している。

こうした農産物は、2017年7月ホストタウン交流の一環として誘致した台湾師範大学ウエイトリフティング部の合宿などで振舞われ、選手全員からおいしかったとの好評を得た。選手たちは地元少年団との合同練習で交流を深めたほか、弓道やそば打ち体験など日本文化と触れ合い、全ての活動が良かったなどの感想をアンケートに寄せた。
また、台湾ジュニア選抜チームの合宿には道内在住の公認スポーツ栄養士が帯同しスポーツ栄養学の講座を行った。GGAP食材などの地元低農薬食材を活用した料理が並ぶ食卓には、地域の方々と協力して考案した献立や食材の説明書きが添えられ、選手たちの関心を集めたという。

さらには、収穫期を過ぎた冬場でもGGAP食材を提供する試みとして、地元企業が所有する急速冷凍庫の活用を行うなど、新たな可能性の発掘にも余念がない。

「地域活性化というと経済面が注目されがちですが、それだけではありません。台湾のオリンピッククラスの選手が士別市で合宿していたとなれば市民も台湾チームを応援したくなるでしょうし、そうすれば2020年東京大会を2倍楽しめると思います。」士別市教育委員会合宿の里推進室ホストタウン統括監の濱田納睦さんは、市民一人一人がオリンピックをより身近なものに感じ、地域でも盛り上がる環境づくりを目指していきたいという。今後も公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)主催のオリンピックデーランを始めとしたイベントや台湾選手たちとの交流を通して市民のオリンピズムの醸成や地域の活性化に努めていく。