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ラグビーの街〜岩手県・釜石市の復興

「ラグビーの街」として知られる岩手県釜石市は、2019年に開催されるラグビーワールドカップの開催地の一つである。東日本大震災では甚大な被害を受けたが、ラグビーと共に“復興の軌跡”を歩んできた。

岩手県釜石市は、かつて日本選手権7連覇を果たした「新日鐵釜石ラグビー部」の誇りを受け継いだラグビークラブ「釜石シーウェイブスRFC」を擁する街で、1929年に日本初のラグビー専用スタジアムが建設された花園(東大阪市)と並び、「日本ラグビーの聖地」と呼ばれている。

2019年9月からアジアで初めて日本でラグビーワールドカップが行われるが、釜石は全国で12箇所ある開催都市の一つとして2015年に正式に決定された。しかし、2011年3月11日の東日本大震災で多くの尊い命と財産を奪われたこの街が、候補地として手を挙げるまでには紆余曲折もあった。釜石市ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局総括部長の正木隆司さんは、当時を振り返る。
「市内のラグビー関係者を中心とする有志の方々が集まり、『ラグビーワールドカップを語る会』が開催されたのが2011年の12月、震災からまだ半年少々の頃でした。市民の皆様は避難所から、ようやく仮設住宅へと移られたばかりの時期だったので、正直『ラグビーどころじゃないでしょう』という意見も、あの頃はあったように感じます」

釜石市が掲げる復興の基本計画は、前期・中期・後期の3つに分かれており、最初の3年は「復旧・復興」が主であった。中期に差しかかった2014年あたりからハード面での復興事業がおおむね完了し、これからは釜石が一丸となって「復興後の街づくりや未来への希望について考えよう」といった気運が、市民が先導して高まった。その第一歩が「ラグビーワールドカップの誘致活動」であり、開催地に決まった瞬間、パブリックビューイング会場では、子供から高齢者までが皆、歓声を上げ大喜びで握手を交わした。

ラグビーワールドカップの開催に当たって2017年に着工された『釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)』は、2018年7月末に完成予定である。「開催時には2万人とも予想される観客の輸送」や、内陸部(花巻市)と釜石市を結ぶ東北横断自動車道、宮城県仙台市と青森県八戸市をつなぐ三陸沿岸道路の整備など、釜石市、国、岩手県、多くの団体が官民問わずスクラムを組み取り組んでいる。

この復興スタジアムには、いくつかのメッセージが込められていると、正木さんは語る。
「スタジアムが設置される鵜住居地区は、海からすぐそばで、津波の直撃を受けました。震災時には市立鵜住居小学校と市立釜石東中学校があり、子どもたちが手に手をとりあって避難し、九死に一生を得た地区でもあります。この地を『復興のシンボル』としながら、多くの方に訪れていただき、まずこれまでの支援に対する感謝の意をお伝えしたい。また、釜石を始めとする被災した地域が復興に取り組む力強い姿も見てもらいたいと願っています」

公益財団法人 ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長の嶋津昭さんは
「ラグビーワールドカップは、48試合を消化するのに44日間、7週間もかかる特別な国際スポーツ大会です。世界中から足を運んでくださる約40万人(想定)の観客の皆様は、平均して2〜3週間も滞在し、初めて日本を訪れる方も多いはずです。そういう人たちと交流を深め、日本のいろんな側面を知っていただける非常に有効な機会だと確信しています」と述べている。