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Highlighting JAPAN

 

 

自分で地図を作りながら周辺を見守る「警備ロボット」

リアルタイムで3次元地図を作成しながらの自律移動が可能な警備ロボットが開発された。オフィスビルや商業施設の監視役として、来年以降の実用化が期待されている。

SEQSENS株式会社が開発した「SQ-2」は、リアルタイムで3次元地図を作成しながら自律的に移動することができる警備ロボットである。GPSを利用したり地図情報を読み込ませる必要がなく、ロボットに取り付けた3個のレーザースキャナーを使った3Dマッピング技術により周辺環境や自分の位置を把握して移動し、障害物や環境の変化を見つけ出す。近くに人がいれば瞬時に判別できるので、人間がいる空間でも安心して警備、巡回ができる。

SEQSENSEは明治大学理工学部の黒田洋司教授が開発した自律移動型ロボット技術の社会実装を目的に設立されたベンチャー企業で、自律移動型ロボットが活かせるマーケットとして最初に選んだのが警備業界だった。1台のロボットで24時間警備を行えば、人間の警備員数人分を雇うコストに加えて、教育や採用にかかるコストも不要になる。

「警備業界は今大変な人手不足です。施設内に設置された大量の防犯カメラ映像を1人の警備員でチェックするのは困難ですし、何人もの警備員を雇うにはコストもかかります。警備ロボットに巡回警備のような作業を任せれば、人間は人間にしかできない高度なセキュリティ対応ができます」と、SEQSENSEのCEOの中村壮一郎さんは警備ロボット開発の背景を説明する。

開発で最も苦労したのは「警備のタスク」を徹底して分析したことだった。警備の仕事と言っても、施設や設備の監視・管理、不審者を見つけたときの通報のほか、人目には触れない裏方的な作業も多数ある。時には業務の在り方を見直すなど、どのように警備ロボットを活用するか、警備会社やビル管理会社などと一緒にゼロから開発を進めてきた。

そうして作られたロボットは、オフィスビルや大型商業施設内など、人混みの中を移動していても違和感がないようにとデザインされたシンプルなフォルムながら、3個のレーザースキャナーを始め、360度カメラ、高解像度カメラ、サーモセンサー、超音波センサーなどの各種センサーを搭載した。マイクとスピーカーを付けて防災センターと会話する機能を持たせることもできる。将来的には、ガスなどの臭いセンサー、生体情報をキャッチするバイタルセンサーなど、目的に応じたセンサーを造設する拡張性も備えている。

開発には、自律移動ロボット技術に加えて、組み込みソフトや回路設計、クラウドの構築、人の顔認証などを行うAIなどのスペシャリストが携わっている。「この技術をアカデミアにとどめるのではなく、世の中で役立つロボットを作りたいというエンジニアばかりで、自分たちでマーケットを作っていく所から取り組んでいこうと考えています」と中村さんは語る。

「SQ-2」は2019年夏頃のリリースを目指し、実証実験を繰り返しながらバージョンアップ開発を進めている。まずは警備ロボットからだが、その先には、製造業、物流、建築、農業など、あらゆる分野で自律移動型ロボットが活躍できるフィールドがあると言う。人とロボットが共存する世界はもうすぐ実現する。その日に向けて、ロボットを作るだけでなく、人間社会の在り方まで考えて取り組んでいる。