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Highlighting JAPAN

 

 

石灰石を原料とした「LIMEX」で世界の木と水を守る

地球上どこにでもある石灰石から作られた日本発の新材料「LIMEX」が世界から注目されている。環境負荷を低減するだけでなく、木と水がない国でも紙やプラスチックの代替製品を製造できる技術としてグローバル展開が進む。

近年、海洋のマイクロプラスチック汚染が世界的に問題視されており、ストローやスーパーのレジ袋を廃止する国や企業が増えるなど、環境に優しいプラスチック代替製品が求められている。そのような中、石灰石を原料とする「LIMEX」への注目が集まる。LIMEXは木や水を使うことなく作ることができ、プラスチックや紙の代替として使える日本発の新材料である。

LIMEXを使った製品としては、名刺やパンフレット、タグなどの紙代替製品、包装容器、クリアファイルなどのプラスチック代替製品があり、国内で3000以上の企業で採用されている。LIMEXを開発した株式会社TBM は海外からの注目度も高い。CSRを推進する10000社以上の企業からなるCSRヨーロッパが開催する「Brussels SDG Summit 2018」のパートナーに認定され、イベントの公式パンフレットにもLIMEXが採用された。

TBM代表取締役CEOの山﨑敦義さんは、10年ほど前に台湾の企業が石灰石から作ったストーンペーパーという紙代替製品と出会い、石灰石のポテンシャルを知った。

「当初はストーンペーパーの輸入販売事業を行っていましたが、ストーンペーパーは紙に比べて重く、品質が悪い上に高価だったため普及しませんでした。本気で地球環境を考えるならばあらゆる紙・プラスチック製品に使われる材料でなければいけない。そこで、日本製紙株式会社で紙の技術開発に取り組んできた角祐一郎さん(現TBM会長)の協力で、石灰石を原料とした製品を自分たちでゼロから作りました」と山﨑さんは語る。

LIMEXの原材料である石灰石は、地球上のどのような地域にも存在するため安価で、資源が少ないと言われている日本でも100%自給自足できる十分な埋蔵量を誇る。この石灰石に石油由来の樹脂を少量混ぜて作るが、トウモロコシなどのバイオ成分を使った生分解のLIMEXも開発中である。紙代替では、シート状のLIMEXに空隙を入れ、紙として不可欠な「軽い」という品質を実現した。しかも、紙よりも耐水性、耐久性に優れているという特徴がある。

またLIMEXはリサイクル効率が極めて高いというメリットもある。LIMEXの印刷物や製造・印刷時に出た廃材を回収し、射出成形などによりプラスチック代替の成形物として再利用することができる。

LIMEXは2014年に国内特許を取得したのを皮切りに、世界40カ国以上で基本特許を出願し、既に20カ国以上で登録されている。TBMではLIMEXを製品として製造販売するだけでなく、技術ごと世界各国に輸出しようとしている。

「その国で採れる石灰石を使い、しかも既存の製造設備をそのまま活用できるのがLIMEXの強みです。アフリカやサウジアラビアなど木と水が不足している国でも自国資源で紙やプラスチックを作ることができ、輸送時のCO2排出を減らすこともできます。このようにして地産地消の技術を広めることで、LIMEXが世界で当たり前に使われる材料になり、地球規模での環境負荷低減に貢献することが狙いです」と、グローバル戦略について山﨑さんは説明する。

LIMEXのグローバル展開は今まさに加速しており、TBMは2018年12月にポーランドで開催されるCOP24に参加し、日本パビリオンの一つとしてLIMEXによる脱炭素化についての発表を行った。今後も世界規模でLIMEXの可能性は広がっていくことだろう。