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Highlighting JAPAN

 

 

史上初、ポーランド生まれの女流棋士

2017年2月、史上初の外国人女流棋士が誕生した。ポーランド出身のカロリーナ・ステチェンスカさんは、日本の漫画で将棋を知り、インターネットで将棋を覚えて来日。プロ棋士としての意気込みや活躍ぶりを伺う。

現在女流1級棋士のカロリーナ・ステチェンスカさんは、史上初、唯一の外国人女流棋士として話題となっている。子どもの頃から考えることやボードゲームの勝負が好きで、小学校でただ一人チェス大会に出場するなどしていた。16歳の時、日本の漫画で将棋の存在を知り、インターネットで世界中の幅広い年代、国籍のプレイヤーと対戦して将棋を覚えた。チェスに似て非なる将棋の魅力にすっかり取りつかれ、ネット上の欧州大会に出場し、強くなりたいという気持ちが大きく育っていった。

2011年にインターネット上で日本の北尾まどか(現女流2段)棋士に来日を勧められ、19歳で震災直後の日本へ渡った。「当時は日本語をしゃべれず、家族は心配しましたが、将棋があるから大丈夫かなと思いました。生まれて初めての日本で、ホームステイして、毎日将棋会館の道場で将棋を指して。今思えば変ですね」と、今は流暢な日本語で笑う。

一度ポーランドに帰国し、現地の大学を卒業してから日本の山梨学院大学の3年生に編入。学生生活の傍らプロ棋士を目指し、大学院2年生の2017年に女流2級に昇級してプロ入りを果たした。大学院での卒業論文は「将棋の国際化について」で、卒業後の昨2018年にはロスアンジェルスで行われた海外普及イベントである国際トーナメントにも参加した。日本の将棋史上初の外国人女流棋士として海外普及の大きな役割を担い、自身のHPで将棋ルールを英語で紹介したり、『インターナショナル将棋マガジン』という雑誌を発行するなどの活動も行っている。

日本のプロ棋士は、公式戦での対局以外にも将棋講座や本の執筆などを通して将棋を教えたり、様々なイベントへの参加を通して将棋を普及したりと、幅広い活動をする。ステチェンスカさんは現在、日本企業とスポンサー契約を交わしているが、女流棋士にスポンサーがつくこと自体も史上初として話題になった。外国人棋士ならではの英語将棋講座も持っていると言い、「忙しいけれど、将棋は好きなことなので苦にならない。毎日将棋をしてお金がもらえるのは楽しいですね」と笑う。「将棋はアート」と断言し、良い将棋や綺麗な将棋が指せた時に最もやりがいを感じるそうである。「将棋は取った相手の駒を投入できるのが魅力で、そのお陰でチェスよりもはるかにバリエーションが多く、窮地に陥っても逆転できるのが面白い。指し方の形の美しさにも美意識があり、強くなると一番きれいな最短の勝ち筋が見えるのです。それは直感的なもので、なぜかは説明できません」と、ステチェンスカさんは熱く語る。長丁場をやり遂げる体力の大切さも感じ、ボクシングを始めたと言う。

母国とは食べ物も暮らし方も全く異なる東京での生活に、最近ようやく慣れてきたそうである。日本の良さを尋ねると治安の良さや鉄道網の発達を挙げ、「でも、将棋があるのが日本の一番良いこと」と笑顔を浮かべた。「私は自分が日本で将棋のプロになるとは想像もしなかった。未来はわからないからこそ、人生は面白いのです。とにかく強くなりたい。初段に昇段するために、今年は150%頑張ります」と、ステチェンスカさんは今後への意気込みを語ってくれた。