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Highlighting JAPAN

 

 

うどんブーム到来

日本のうどんは既にアジアでは知名度も高いが、欧米諸国でも流行が始まった。現在世界14カ国地域へと店舗を展開する丸亀製麺に、海外での人気や戦略、ローカライズメニューなどについて伺う。

讃岐うどんのレストラン「丸亀製麺」を経営する株式会社トリドールホールディングス海外事業企画部部長・菅聡さんは、海外展開のきっかけを「粟田貴也・代表取締役社長の直感だった」と話す。もともと海外進出は意識しており、2011年にハワイの目抜き通りに空き物件をたまたま見つけて出店したところ、予想以上に大当たりした。ハワイ店は未だに行列が絶えず、海外店舗中売り上げ1位の座を誇っている。マーケティングリサーチにコストをかけるよりもまず出店してみようというチャレンジ精神の下、翌2012年以降はタイ、中国、韓国、インドネシアなどのアジア地域、オセアニア、ロシア、そして米国へと積極的な出店を進め、現在世界14カ国地域に広がった。

海外のうどん人気の背景を、菅さんは「海外では日本のラーメンブームが先行していたところに、脂っこさを好まない人々がよりヘルシーな印象のうどんを選んだと思われます」と説明する。また、ラーメンに比べて価格の低さも人気の一因である。うどんに自分でトッピングを選ぶセルフサービスは日本では一般的だが、「どこの国でもオープン前はまるで学食のようだと反発されました。でも私たちがセルフサービスにこだわった結果、むしろそのスタイルが面白がられて流行になりました」と続けた。

海外展開の特徴は、柔軟な商品開発にある。粟田社長は、半分は伝統を守るが、半分は現地事情に合わせて現代的にローカライズし、そこで新しいものが生まれることを面白いと考えるのだと言う。もちろん商品開発には多くの苦労がある。例えばうどんの出汁も、現地の食文化に応じて濃さや風味を調整した。スープも現地の好みに合わせ、中国の店舗ではトマトベース、インドネシアでは鶏白湯、タイではトムヤムスープのうどんがある。また、フィリピンでは牛肉と卵の甘辛いうどん『すき焼き忍者』が予想外に大人気だったと言う。無料の薬味も、国事情を反映してベトナムではパクチー、インドネシアでは刻み生唐辛子が用意されていると言う。

だが、店舗規模や現地の食品の取り扱いに適用される規制で一部例外はあるものの、国内外問わず原則的に店内で粉から製麺する自家製麺にこだわる。現地の水の硬度や小麦の個性などによって、うどんの出来栄えは全く違う。それぞれの国に出店する度に、麺もメニューも何十通りと試験して最良のレシピを作るのだが、初めの商品開発が最も大変であり、大切なのだと言う。

同社は現在、グループ全体で海外600店舗余りを持つが、最大のブランドである丸亀製麺のうどんを軸に、今後は米国に注力しつつ欧州、中東への出店も検討している。「国内よりも海外の支店数が多い状態を達成できて初めて、真のグローバルチェーンではないかと思います。私たちがそのパイオニアになりたいと考えています」と、菅さんの言葉は力強い。日本のうどんは、柔軟さの中にあるコシを個性として、海外でブームを巻き起こしている。