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Highlighting JAPAN

街がステージ:YOSAKOIソーラン

北の大地、北海道札幌市で、第28回YOSAKOIソーラン祭りが6月5日から9日に開催される。祭りに向けて今、日本全国にいる何千もの踊り子が踊りにに磨きをかけている。

50人の踊り子が、息をのむようなスピードと気迫で風を切るように舞う。札幌中央にある学校の体育館に、足を踏み鳴らす音や掛け声が響き渡る。

ステレオからは、低音の効いたバックビートを伝統的なビートに融合させた曲が鳴り響く。入念に考えられた振付は曲にぴたりと合っている。

「平岸天神」チームのメンバーである踊り子たちは、昨年200万人もの観客を集めた日本で最も盛大な祭りの一つ、YOSAKOIソーラン祭りに向けて振付のチェックをしている。

素人の目には非常に些細なことでも、リーダーは何度も踊りを中断させる。その細部までのこだわりには驚くばかりである。

「週末は10時間ほど練習します。仕事が早く終わった人は、平日の夜にも3時間練習します」とリーダーの木下貴仁さんは言う。木下さんは大学時代からこの祭りに参加してきた。

「皆、観客の方々に見せる価値のあるものを作ろうという共通の目的を持って集まっています」

来る6月5日、木下さんのチームは国内外から集まった270チームと共に、第28回YOSAKOIソーラン祭りで踊りを披露する。

街の通りを舞台とする祭りは日本では珍しくなく、特に夏の季節には数多く開催される。しかし、この札幌の祭りほど気分を高揚させるものは決して多くはない。

YOSAKOIソーラン祭りは、60年の歴史がある高知県の「よさこい祭り」をルーツとしている。長年にわたって各地に広まったよさこい祭りには共通のルールがある。「鳴子」と呼ばれる木製の道具(カスタネットに似た道具で、もともとは田畑から鳥を追い払うために使われていた)を手に持って踊ること、そして、よさこい節として知られる民謡(本家高知県のよさこい祭りで使われる祭囃子)を取り入れた曲を使うことの2つである。対して、YOSAKOIソーラン祭りでは、ソーラン節と呼ばれる地元北海道の民謡を取り入れた曲を使わなくてはならない。

「札幌のよさこい祭りは1992年、本家高知県のよさこい祭りに感銘を受けた一人の大学生の手によって札幌でスタートしました」と語るのは、組織委員会の横山尚子さんである。

「YOSAKOIソーラン祭りでは、多くの方々の参加を募っており、参加するには特別な制限もありません」と横山さんは説明する。

祭りは5日間にわたり、市内の19ヶ所に設けられた通りやステージ上で踊りが繰り広げられる。参加チームだけではなく、観客が踊りを披露できる場所もある。

必ず守らなければならない2つのルール以外、参加者は自由に曲のジャンルや衣装を選べるが、多くのチームの踊り子は色鮮やかな法被を身に着けている。

参加者の年齢も無制限で、27,000人の踊り子が集った昨年の祭りでは、最年少は0歳、そして最年長は89歳だった。横山さんは「少人数のチームから、100名を超えるチームも多い。ジュニアチームや学生、社会人、シニア中心のチームなど、年代もチームによって様々です」と説明する。

2019年の祭りでは、北海道内のチームが3分の2を占める。北海道以外から参加するチームの中には、ロシア、台湾、韓国の3つの外国チームも含まれる。

これらの参加チームの中には、祭りをダンスコンテストと捉えて闘志を燃やすチームもある。10回の大賞受賞という記録を持つ「平岸天神『本体』」も、その一つである。

「「平岸天神」は他のチームと同様に、教師、看護師、会社員、高校生など様々な人がメンバーになっています。また、成功をつかむチームには必ず、個性的な持ち味があります」と、チーム指導者であり、「平岸天神」を1993年に立ち上げた札幌平岸商店街振興組合の理事も務める村井優美子さんは語る。

「毎年、踊りのテーマは変わりますが、私たちはソーラン節をかなり前面に出した曲を使います。また、踊りが曲によく合うように振付を考えます。こうした点と、踊りに登場する私たちのトレードマークとも言える『ウェーブ』の要素が、独特の魅力を放っているのではないでしょうか」と村井さんは話す。

「4歳の時、母と一緒に初めて祭りに参加し、即座にその雰囲気が好きになりました」とチームメンバーの木村梨央奈さんは言う。「チームとこの祭りのない人生は想像できません。観客の拍手を聞くだけで、長時間に及ぶ練習をしたかいがあったと思えるのです」