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  • 人形町にある老舗のたい焼きを食べるコンクリンさん
  • 近所のお店で蕎麦を食べるコンクリンさん
  • 下町の有名な祭り「神田祭」で担いだ神輿の前でポーズするコンクリンさん
  • 蕎麦を打つコンクリンさん

July 2020

東京の食の魅力を発信する蕎麦好きアメリカ人

人形町にある老舗のたい焼きを食べるコンクリンさん

日本史の研究によって修士号を持つアメリカ出身のデビッド・コンクリンさんは、ライターあるいはツアーガイドとして、東京の伝統的な食文化についての幅広い知識を、愛情をもって国内外の人に伝えている。

近所のお店で蕎麦を食べるコンクリンさん

東京の日本橋人形町は、江戸時代に湿地帯を埋め立てて造成し、商業地となった「下町」と呼ばれる地域にある。その町名は、この地に伝統芸能である人形浄瑠璃の人形の作り手や遣い手などの関係者が多く住んでいたことに由来すると言われている。今も歴史ある飲食店、和菓子店、工芸品店などが数多く並び、様々な祭りや市が季節ごとに開かれる、にぎわいのある街である。

「伝統的な食べ物や文化が楽しめる下町が大好きです。人々はとても接しやすく、簡単に友人を作ることができます」と、アメリカの西海岸、オレゴン州ポートランド出身のデビッド・コンクリンさんは言う。コンクリンさんは人形町に暮らしながら、ライターあるいはツアーガイドとして、日本、特に下町を中心とした東京の食の魅力を国内外に紹介している。

ポートランドの大学で日本近現代史を学んでいたコンクリンさんは、日本食への関心が高まり、大学院でオレゴン州における日本食文化をテーマに研究を始めた。そうした中、日本語の勉強のために訪れた東京で日本人女性と出会い2007年に結婚。その後、人形町に新居を構えた。

下町の有名な祭り「神田祭」で担いだ神輿の前でポーズするコンクリンさん

人形町は、蕎麦(そば)、寿司、焼き鳥などの飲食店や、豆腐、米、野菜などの食品を専門とする小売店が驚くほど多い。以前、コンクリンさんが家から徒歩約7分圏内にある食堂、居酒屋、喫茶店の数を数えると、750軒以上あったという。コンクリンさんにとって、自転車でこうした店を巡り、食べたり、買い物したりすることが今も大きな楽しみだと言う。世界的に知られる築地市場には、2018年に豊洲へ移転する前、夕食の食材の買い出しに、自宅から10分ほどかけて足を延ばすことも多かった。

「日本食は他の国のものとは、とても異なっています。様々な発酵食品、生魚の刺身、西洋料理を独自に進化させた揚げ物料理など、非常に多種多様なのです。私にとってここは”パラダイス”ですね」とコンクリンさんは笑う。

日本食の中でコンクリンさんは特に蕎麦が大好物である。ランチタイムに自転車に乗って蕎麦の食べ歩きを行い数年で100軒以上の蕎麦屋に行ったという。日本で蕎麦は、麺とつゆの香りを楽しむため音を出してすすって食べても不作法ではないため、コンクリンさんも、時には店の人から褒められるぐらい勢いよく音を立てて蕎麦を食べる。アメリカのレストランでパスタを思わず大きな音を立ててすすってしまい周囲のお客さんを困惑させてしまうほど、蕎麦の食べ方が身についている。そして、今では自分自身で蕎麦を打って、家族とともに食べることも好きになった。

「お蕎麦は、美味しくて、安く、しかもヘルシーです。原料となる植物のソバは世界中で栽培されていますし、麺料理は多くの文化でなじみがあります。蕎麦は寿司に続いて、世界に広がる可能性のある日本食だと思います今、英語で蕎麦の本を出版しようと考えています。」とコンクリンさんは言う。

蕎麦を打つコンクリンさん

コンクリンさんは、数年前から外国人旅行者や飲食業関係者向けのいわゆるフードツアーを行っている。フードツアーは、江戸・東京の食文化を紹介しながら、築地市場や料理道具で有名な合羽橋(かっぱばし)、老舗飲食店などを巡るというものである。スイーツや寿司など、参加者の要望に特化したツアーも行っている。こうした活動が日本のメディアにも注目され、コンクリンさんは新聞、雑誌、テレビにも登場するなど、活躍の場を広げている。

「新型コロナウイルス感染症の流行が収まったら、フードツアーを再開します。東京だけではなく、地方を旅しながら各地のビールやウィスキー、郷土料理を楽しむツアーを計画しています」とコンクリンさんは言う。

これからも、コンクリンさんのように、情熱と飽くなき好奇心を持つ外国人グルメによって、日本人が見過ごしている日本食の魅力が世界に紹介されるだろう。