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  • 加藤絵美さんと夫の晃司さん
  • 秋の収穫作業
  • 田植えをする加藤さん
  • B-eat JAPANがフランスで開催した福島産品を紹介するイベント

November 2020

お米で福島の復興を

加藤絵美さんと夫の晃司さん

福島県在住の加藤絵美さんは、夫婦で農業に従事し、農家の暮らしや福島の食を発信することで、地域の農業や雇用を守り、東日本大震災の復興につながる活動を続けている。

田植えをする加藤さん

株式会社カトウファームは、福島市内で最大規模の53ヘクタールの水田で米作りを営む農業生産法人である。その専務取締役を務める加藤絵美さんは2009年、夫の加藤晃司さんとともに稲作専門の農家だった夫の祖父の跡を継いで就農した。

しかし、就農から2年目の2011年3月、東日本大震災に見舞われ、福島第一原子力発電所事故が発生した。当時、第三子を妊娠中だった加藤さんは、こう振り返る。

「当時は原発事故や放射線、シーベルトやベクレルなど聴き慣れない言葉に現実味がまるでなく、これからどうしていけばよいのか戸惑いました。一時的に県外に避難しましたが、震災の翌月には田んぼや家のこと、福島の状況を把握したくて家に戻りました。ほかの土地に引っ越して農業を続けることも検討しましたが、私たちはやはり福島で農業をし、家族一緒に生活をしていきたい。そう強く思い、夫ともに“ここでお米を続けていこう”と決心しました」

福島県では15年の歳月をかけて開発した品種の米「天のつぶ」の栽培が本格的に始まろうとしていた。粒ぞろいが良く、光沢があり、ほのかな甘さとしっかりとした食感が持ち味の米として評価されている。加藤さんたちは福島県でしか栽培されない「天のつぶに賭けよう」と、この品種を中心に米作りを続けた。

秋の収穫作業

2017年12月、カトウファームでは、食品の安全確保、環境の保全、労働の安全の観点から、農業の持続可能性を確保するための取組など、消費者の要求を「適正な農業の実践」へとつなげる農業保証制度「グローバルGAP」を取得している。

加藤さんは福島の農業者自身がその安全性を訴えるだけではなく、「ありのままの福島、農家の生活を知ってもらいたい」と考え、日々の農作業や農家の生活をソーシャルメディアで地道に発信し続けた。そのかいあってか、応援してくれる声が届き始め、お米を買ってくれる人たちが少しずつ増えていった。

カトウファームではよりおいしく、安全安心な米作りに尽力し、減農薬や有機質肥料を使った土づくりに取り組んでいる。2015年には米の食味日本一を決めるコンテスト『第五回米-1グランプリ』決勝大会にカトウファームのコシヒカリが進出し、入賞したことでそのおいしさも証明された。

2018年には加藤さんが中心となって、福島の食の魅力を国内外に発信することを目的とした団体「B-eat JAPAN」を立ち上げた。県内4軒の農家がメンバーとなり、これまでにベトナム、フランス、タイでおにぎりや米を販売し、福島の魅力を伝えるイベントを開催した。いずれも盛況で、現地の飲食関係者や企業とのつながりも生まれた。

B-eat JAPANがフランスで開催した福島産品を紹介するイベント

さらに農閑期の仕事をつくり出し、経営の安定化を図るため、2020年9月、自家栽培した大麦やホップを原料に使ったクラフトビールの醸造所「Yellow Beer Works」(福島市大笹生)を開業した。

「自分たちだけではなく“福島全体の農業を守りたい”という思いで、私たちの活動について、インターネットでの情報発信を始めるとともに、講演会やイベントなどで、来られた方へ直に訴えるといったことに地道に取り組んできました。福島での農業の可能性は無限大です。今後は若手農業者の育成にも力を入れ、福島全体が良い方向に向かうように活動していきたいと考えています」と加藤さんは話す。