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  • 玄氣堂で販売されている玄米パン
  • 完全グルテンフリー、27品目アレルギー食品不使用の玄米パン3種(左から、抹茶小豆、ひまわり、プレーン)
  • 熊本のコメノパンヤ玄氣堂の店内
  • 玄米と水から作られる玄米ペースト
  • 玄米ペーストのグルテンフリーのパスタの調理例

November 2020

お米から作るパン

玄氣堂で販売されている玄米パン

熊本県の阿蘇山の麓で、地元産の玄米を原料に、新しい技術で作られるパンが人気を得ている。

完全グルテンフリー、27品目アレルギー食品不使用の玄米パン3種(左から、抹茶小豆、ひまわり、プレーン)

阿蘇山へと真っすぐに伸びる街道の傍らに、パン屋『コメノパンヤ玄氣堂』がある。店内いっぱいに広がるのは、小麦のパンとは少し異なる、独特の甘く香ばしい香りだ。ここで販売しているパンは、原材料の8割以上が「玄米」である。

通常、稲から収穫されたばかりの実である稲籾(もみ)は、一般消費向けにその表面を包んでいる籾殻やその下の糠(ぬか)や胚芽などの表面部分を削り、白米にする。一方、玄米は、稲籾から糠や胚芽を残し、籾殻だけを取り除いたもので、白米と比較すると、ビタミン類やミネラル類、食物繊維などの栄養素が豊富である。さらに、抗酸化作用やコレステロール調整作用などの機能成分も含まれる。

玄米と水から作られる玄米ペースト

玄氣堂の玄米パンは、こうした玄米の栄養素や機能成分がほとんど損なわれずに作られており、しかも美味しいとあって、2014年の開店以来、健康への関心が高い人を中心に、人気を集めている。

玄氣堂を経営するのは、株式会社熊本玄米研究所である。同研究所は、熊本県を中心に農機具の販売、メンテナンス業を行っている株式会社中九州クボタによって設立された。設立のきっかけは、米の生産量の減少である。日本では1970年代から米の消費は減少の一途をたどり、九州地方を代表する米どころである熊本県でも生産量が減り続けている。

同社の代表取締役社長であり研究所の代表を務める西山忠彦さんは「国土の75%を山地が占める日本は、昔から丘陵に棚田を形成してきました。今、その棚田の耕作放棄地が広がりつつあるのが大きな課題です」と語る。棚田を維持することは、治水や生態系保護等、多面的な意味も大きい。「米の生産を増やし、何とか棚田の美しい風景を守りたい」との西山さんの思いから、栄養豊富な玄米を使ったパン作りへの挑戦を決めた。

熊本のコメノパンヤ玄氣堂の店内

これまで米粉を使ったパン作りは全国各地で行われていたが、糠や胚芽に油分が含まれる玄米は粉にするのが難しい上に、油分が酸化しやすく、パン作りには向かないとされてきた。そこで、熊本玄米研究所は、加工性を上げるために、玄米と水とを混ぜてミキサーに入れて粉砕し、栄養素や風味を左右するでんぷん質を壊さずに、ペースト状にする技術を開発した。原料の玄米は熊本産で、ミキサーも熊本で開発された特注品が使われた。こうして完成した玄米ペーストによって、玄米の栄養と風味が余すところなく生かされた、全国でも珍しいパンの生産が可能となった。

2016年には、客からの強い要望に応えるため、100%玄米ペーストを用いたグルテンフリーのパンとパスタを製造する工場を設立、これらの製品のインターネット販売も開始した。

「小麦に含まれるグルテンは、人によっては小麦アレルギーやグルテン過敏症などを引き起こす場合があります。グルテンフリーの玄米のパンやパスタは、こうした体質を持つ方でも安心して食べられます。そういった方のためにも今後は是非海外でも販売したいと考えています」と西山さんは語る。

玄米ペーストのグルテンフリーのパスタの調理例

現在、玄米ペースト製造のため、自社農場のほか、熊本県内の数十軒の農家と契約し、年間100トンほどの米を使用している。熊本玄米研究所には、こうした農家から「人々においしく食べてもらえる米を作るのが農家の何よりの喜びだ」という声が届くという。玄米でパンを作るという挑戦が、米の新たな可能性を広げている。