Skip to Content

The online magazine HIGHLIGHTING JAPAN

INDEX

Language

March 2021

温室効果ガスを排出しない船舶

海運・造船国家である日本は、2028年までに温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション船」を国際海運向けに商業運航用として投入することを目指している。

島国で、貿易立国である日本は、船舶でかなりの物資を輸出入する海運国家である。2018年4月、国際海運における温室効果ガス(以降、GHG)を削減する目的で、国際海事機関*(以降、IMO)は、削減目標や対策をまとめた「GHG削減戦略」を採択。2050年までにGHG総排出量を、2008年比で50パーセント以上削減、今世紀のできるだけ早い段階で排出量ゼロを目指すという目標を掲げた。これを受け、日本も船舶におけるGHG削減に乗り出し、2018年8月に産学官公の連携で「国際海運GHGゼロエミッションプロジェクト」を立ち上げ、2020年3月にゼロエミッションに向けたロードマップを策定した。

こうした中、日本は2028年にゼロエミッション船の投入を目指している。ゼロエミッション船とは、運航に当たってGHGを排出しない船舶のことである。

アジア人初のIMO海洋環境保護委員会の議長となった、現在、国土交通省大臣官房技術審議官の斎藤英明さんは、「現在はまだ、国際貿易に従事する世界中のどの船舶にもゼロエミッション船は存在しません。様々な国がゼロエミッション船の実用化にしのぎを削っています」と言う。

斎藤さんはGHG削減戦略に掲げられた目標について、「目標達成には、ゼロエミッション船の開発は不可欠と考えられています。なぜなら船舶の寿命は約30年。例えば2025年に導入された船は2055年まで運航することになります。世界が早い段階でゼロエミッション船にシフトチェンジしていかない限り、なかなかGHG排出量は減っていかないのです」と語る。

現在、日本ではゼロエミッション船として水素燃料船、アンモニア燃料船、船上CO2回収システム搭載船、低速LNG(Liquefied Natural Gasの略。液化天然ガス)+風力推進船の4つのタイプを想定しており、建造に必要な技術開発を進めている。水素燃料は自動車でも開発が進んでおり、使用時にCO2を排出せずエネルギー効率も高い特徴がある。アンモニア燃料船も、水素燃料船と同様に燃料をエネルギーにする際にCO2を排出しないクリーンなエネルギー船。船上CO2回収システム搭載船は、排気ガスからCO2を回収する既に陸上で実用化された技術を応用するもので、CO2回収装置を船舶に搭載することによって、どんな燃料であってもCO2排出ゼロの達成が可能になるが、どこまで船舶で効率的に回収できるかがカギになる。低速LNG+風力推進船は、現在主流の燃料である船舶用重油に代えてLNG燃料を用いるもので、風力推進などの技術を組み合わせることによってCO2排出量の削減率を高め、既存の技術でも建造可能である。更に将来的には船外に排出されるCO2を資源としてとらえて、これを回収し、有効利用するカーボンリサイクル燃料の導入でゼロエミッションの達成を目指す。

今後の技術開発のポイントの一つは、巨大なコンテナ船、ばら積船、タンカーといった大型の船を動かすことができるGHGを削減あるいはゼロエミッションの達成につながる新しいエンジンの製作であるという。

「これまで世界の誰もつくったことのないエンジンをつくらなければならないので、技術開発を必要とする要素は甚大です。ロードマップにしても、今後GHG削減に当たり、どのような道筋を通るのか、現時点で想定しきれないことも多々あります。ただ、日本政府として、意欲ある事業者に支援する仕組みづくりなども考えているので、高い技術力で開発を進めてもらい、将来的には、日本がつくるゼロエミッション船が世界の海を航行してほしいと願っています」と斎藤さんは語る。

四方を海に囲まれた日本は、領海・EEZ(排他的経済水域)の面積約447万平方キロメートル。世界第6位の広さを有する世界有数の海洋国家であり、国際海運における温室効果ガス削減に対して積極的な推進と貢献を果たそうとしている。

* 海上の安全、海洋環境の保護等の海事問題を取り扱うため、1958年に設立された国連の専門機関

シナリオ①:LNG→カーボンリサイクルメタン移行シナリオ
シナリオ②:水素・アンモニア燃料拡大シナリオ