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  • ドミニク・シュミッツさん
  • 和歌山県の高野山にある西禅院の庭の手入れをするドミニクさん。
  • 四季折々の日本の庭
  • 西禅院の3つの庭園は重森三玲(1896–1975)によって作庭され、2010年に日本の登録記念物(名勝地関係)に指定された。

April 2021

ドイツ人が作る日本庭園

ドミニク・シュミッツさん

ドイツ出身のドミニク・シュミッツさんは、京都において日本庭園の伝統的な造園技術を学んで、ドイツ出身ならでは感性を加味しながら、新たな庭園づくりに取り組んでいる。

和歌山県の高野山にある西禅院の庭の手入れをするドミニクさん。

和歌山県で「ドミニク造園」を営むのは、ドイツ出身のドミニク・シュミッツさん。彼がつくる庭は、日本庭園の伝統を踏まえつつ、ドイツ出身の人ならではの感性を加えた新しさがあるという。

ドミニクさんは、「日本庭園は、四季それぞれ、五感を楽しませてくれます。例えば、木々の葉がかすかにゆれることで夏の風を感じ、水の音だけをたよりに庭の奥に進むと、やがて目の前に涼しげな滝が現れるように」と語る。

父が北部ドイツで園芸店を営んでいたドミニクさんは、その影響を受け1995年に造園業の道に進んだ。2003年に初来日、知人の紹介で、京都で250年以上造園を営む「植治(うえじ)」で修業を積むこととなった。

「植治」は18世紀半ばから、京都の名だたる寺社の庭づくりを手掛けてきた。よく知られている平安神宮の庭や丸山公園なども手掛けている。7代目・小川治兵衛(おがわ じへえ。1860-1933)は、近代日本の庭園づくりの巨匠の一人として知られている。ドミニクさんは、庭師が庭の草木に手を入れることによって、人工的にならず、かえって自然の本来の美しさが、より引き出されるとともに、草木が50年、100年と育っていった後の状態までも考えて作業を行う日本の造園技術について、多くのことを学んだと言う。

四季折々の日本の庭

約1年の修業の後、ドイツに帰国したドミニクさんは、造園で、ドイツの国家制度であるマイスターを取得して、ベルリンで造園と職人育成に勤しむほどに、日本庭園の良さが思い出され、更に探求したい気持ちが芽生えてきた。ドイツで知り合った日本人女性と結婚した縁もあって、2011年に再来日、再び「植治」の世話になり、主に京都の神社仏閣や史跡の庭園の維持管理を庭師の一人として担い、伝統的な日本庭園の技術を磨いた。

そして2017年、「海も山も美しく庭づくりに最適な地」と見定めて、妻の実家がある和歌山県で造園会社「ドミニク造園」を設立した。彼は、古い庭のメンテナンスでは、昔ながらの日本の技術を用い、新しい庭を造る時にはドイツで学んだ経験を重ね合わせる。

西禅院の3つの庭園は重森三玲(1896–1975)によって作庭され、2010年に日本の登録記念物(名勝地関係)に指定された。

「造園については日本、ドイツともに良いところがあります。それを合わせることによって、古いものを大切にしつつ、新たな庭づくりを目指しています。個人のお家の庭づくりで一番、心掛けているのはお客さんとの対話です。まず、お客さんの好みや要望を聞くことから庭づくりが始まる。毎日を過ごす庭ですから、何よりお客さんが幸せを感じる空間にしたいのです」とドミニクさんは話す。

日本庭園の伝統を踏まえながら、お客さんの好みを尊重して、ドイツの庭づくりの感性も加えて、新たな庭づくりを目指す、それが日独の庭の真髄を知るマイスター、ドミニクさんの理想の庭づくりだ。