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  • 「生の額絵」春の景色
  • 「生の額絵」秋の景色
  • 白砂青松庭:借景となる亀鶴山に「亀鶴の滝」を望む景色
  • 床の間の壁をくりぬき、絵画のように見立てた「生の掛軸」

May 2021

絵画の景色そのままの庭園

「生の額絵」春の景色(上)と秋の景色(下)

足立美術館にある日本庭園は、一幅の絵画のような美しさである、と国内外から高い評価を受け、人々を魅了してやまない。

白砂青松庭:借景となる亀鶴山に「亀鶴の滝」を望む景色

島根県安来市にある足立美術館は、“日本画と日本庭園の調和”を基本コンセプトとするユニークな美術館だ。美術館では、近代日本画の巨匠、横山大観(1868~1958。以下「大観」)の作品を始め、北大路魯山人(1883~1959)の陶芸など近現代の日本美術を中心に総数約2000点の作品を所蔵する。また、5万坪(約16.5ヘクタール)に及ぶ庭園があり、自然の山々を望む主庭の「枯山水*庭」(かれさんすいてい)、「苔庭」(こけにわ)、「池庭」(いけにわ)など、多様なテーマで芸術的にデザインされている。その庭は、アメリカの日本庭園専門誌「数寄屋リビングマガジン/ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の「日本庭園ランキング」で、2003年から18年連続で、日本一の庭園に選定されている。

「足立美術館は1970年、地元出身の実業家、足立全康(あだち・ぜんこう1899~1990)が長年にわたって収集した美術品をもとに創設しました。全康は“庭園もまた一幅の絵画である”と語り、享年92歳で他界するまで美術品の収集はもとより、庭作りにも情熱を傾け、両方を鑑賞する美術館を目指しました」と、公益財団法人 足立美術館広報部長の武田航(たけだ・わたる)さんは話す。

足立氏が特に愛した、大観の作品を、初期から晩年までの約120点所蔵し、質量ともに最も充実しているコレクションだ。館内には大きな窓枠を額縁に見立て、庭園を絵画のように鑑賞する「生の額絵(なまのがくえ)」などの見どころがある。山肌を流れ落ちる高さ15メートルの「亀鶴の滝(きかくのたき)」は、人工の滝であり、大観の名画「那智乃瀧(なちのたき)」に描かれた景色そのままに作庭されている。その庭を見る者は、大観の絵の中にいつの間にか引き込まれたような感を抱く。**

床の間の壁をくりぬき、絵画のように見立てた「生の掛軸」

「当館には、美術館としては大変珍しい庭園部という部署があり、7名の専属の庭師が、毎日、庭園の維持管理に努めています」と、武田さんは話す。

2016年度から2019年度にかけては、4期連続で毎年60万人以上の人々が国内外から訪れた。フランスの歴史ある旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』においては、この足立美術館の日本庭園が、最高評価の「三つ星」として掲載されている(第6版)。

足立美術館の庭師たちは、今日もまた、新型コロナウイルス感染症が収まって、国内外から多くの人々が訪れる日に備えて、広大な庭園の手入れに余念がない。

* 川や池の水を使わず、石や砂を使って山水の風景を表現した庭を「枯山水」と呼ぶ。
** 大観の絵の滝は、133メートルの和歌山県の那智の滝である。