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INDEX

  • 紅葉柄の入った白地の着物に赤色の帯を合わせた装いの女性
  • 春の桜と秋の紅葉したもみじを表した「桜楓(おうふう)」の柄の着物
  • 秋らしい「竜田川」の柄の着物
  • 着物にあしらわれた「竜田川」の柄のクローズアップ
  • 紅葉を連想させる赤色の帯を締めた着物姿の女性

September 2021

紅葉の柄の着物

紅葉柄の入った白地の着物に赤色の帯を合わせた装いの女性

華やかな色や柄で知られる日本の伝統衣裳である着物は、様々な柄で四季の移ろいを表す。秋には紅葉をモチーフにした着物がまた美しい。

春の桜と秋の紅葉したもみじを表した「桜楓(おうふう)」の柄の着物

日本の伝統衣裳である着物は、精緻な織物や染物*によって仕立てられる。そして、その柄の多くには、四季を表現した花鳥風月が用いられる。

「着物は、どの季節に着るものでも、基本的にすべて同じ形です。同じ形であるという制約の中で、日本人は、柄や色によって四季を表現し、その移り変わりを楽しんだのです」と着物の製造卸業を営み、伝承文様の復刻などにも携わる『小紋屋 高田勝(こもんや たかだ かつ)』の3代目主人・高田啓史さんは話す。

その代表的な柄は、春の桜、夏の朝顔、秋の紅葉したもみじや菊、冬の松や竹など、それぞれの季節を感じさせる植物をモチーフにしたものが圧倒的に多い。

この中でも、もみじは様々な種類の柄があり、ほぼ通年で着ることができる。例えば、紅葉前の清新な緑色の葉をモチーフとした「青もみじ」の柄の着物は、5月頃から夏にかけて着られる。そして、赤く紅葉したもみじや、散ったもみじ葉と流水模様とを組み合わせた「竜田川」は、秋に着る着物の定番の柄である。「竜田川」の柄は、9世紀の歌人、在原業平(ありわらのなりひら)の和歌が由来となっている。それは、京都の南に位置する奈良県の紅葉の名所である竜田川が、散りもみじで紅(くれない)に染まった様子を詠んでいる**。

秋らしい「竜田川」の柄の着物
着物にあしらわれた「竜田川」の柄のクローズアップ

この他、春と秋それぞれを代表する桜と紅葉したもみじをあしらった「桜楓(おうふう)」の柄は、主に春秋に着ることができる。

着物の柄に加えて、帯や装飾品でも季節を表現できる。

「桜の花の色の着物に紅葉を連想させる赤色の帯を締めたり、シックな無地の着物に紅葉を象った帯留めをワンポイントで使ったりすることで、紅葉いろどる秋を表す方法もあります。このようにして、様々な工夫を凝らして、その季節に合った装いにすることは、着物の楽しみ方の一つです」と高田さんは話す。

紅葉を連想させる赤色の帯を締めた着物姿の女性

季節感を表現する着物のアレンジは、自然を愛で、共にありたいという日本人の心を表現したものと言える。

* 織物は京都の西陣織、染物は京都の友禅、石川県の加賀友禅などが日本では有名である。
** ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは (https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202010/202010_02_jp.html)