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  • CO2-SUICOM(スイコム)の歩車道境界ブロック
  • 従来のコンクリートとCO2-SUICOM の製造時のCO2排出量の比較(試算)
    CO2-SUICOM:製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を、CO2排出量の少ない特殊混和材と高炉スラグ微粉末等の産業副産物によって代替することで、1立方メートルあたり197キログラムのCO2を削減、さらに、炭酸化で1立方メートル当たり109キログラム CO2を吸収。
  • CO2-SUICOMの舗装ブロック
  • CO2-SUICOMの境界ブロック
  • 環境配慮をプロジェクトの一つとした都市開発の一環で、バルコニーにCO2-SUICOMが使われている住宅、Brillia ist 中野セントラルパーク(東京都中野区)。CO2-SUICOMは、外気にさらされる場所の鉄筋コンクリートを保護する効果も持つ。

October 2021

二酸化炭素を吸収するコンクリート

CO2-SUICOM(スイコム)の歩車道境界ブロック

二酸化炭素(CO2)を吸収する材料を活用し、製造時のCO2排出を実質ゼロにするコンクリートが開発された。

従来のコンクリートとCO2-SUICOM の製造時のCO2排出量の比較(試算)
CO2-SUICOM:製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を、CO2排出量の少ない特殊混和材と高炉スラグ微粉末等の産業副産物によって代替することで、1立方メートルあたり197キログラムのCO2を削減、さらに、炭酸化で1立方メートル当たり109キログラム CO2を吸収。

地球温暖化防止対策として、CO2排出量の削減が国際的な課題となる中、日本の建設産業はCO2削減のための様々な技術開発を進めている。その一つが、コンクリート製造に伴うCO2排出量の削減である。通常、コンクリートはセメント*、水、砂、砂利などの材料から造られる。セメントは、水と反応してコンクリートを固める重要な役割を果たすが、製造する際に多くのCO2を排出する。そこで、製鉄所や火力発電所で生じる産業副産物(高炉スラグや石炭灰など)を、セメントの代替材料として利用することで、CO2排出量を抑える取組が行われている。

コンクリートは、水に次いで世界で2番目に消費されている物質とも言われており、その取組は意義深い。

2011年、鹿島建設(かじまけんせつ)株式会社、中国電力株式会社、デンカ株式会社、ランデス株式会社は、世界で初めて、製造時のCO2の排出量を実質ゼロ以下にしたコンクリート「CO2-SUICOM(スイコム)」を共同開発した。CO2-SUICOMは、CO2-Storage Utilization for Infrastructure by COncrete Materials」の略称でCO2を「吸収する」(スイコム)として名付けられたもの。製造の際、1立方メートルあたり288キログラムの CO2を排出する通常のコンクリートと比較すると、CO2-SUICOMは、CO2の排出量低減とCO2の吸収によって、1立方メートルあたり306キログラムのCO2削減となる。つまり、製造時のコンクリートのCO2排出量は、実質ゼロ以下となり、作れば作るほど、CO2を減少させることになる (図参照)。

「 CO2-SUICOMは、産業副産物の利用という従来の技術に加え、コンクリートの‟炭酸化“という新たな技術を組み合わせて、作られています」と鹿島建設技術研究所土木材料グループ上席研究員の取違剛(とりちがい たけし)さんは話す。

炭酸化とは、セメントとCO2を反応させることで、コンクリートにCO2を吸収・固定させることである。取違さんによれば、この技術は、コンクリートの長寿命化研究の中から生まれたという。きっかけとなったのが、中国の大地湾遺跡で発見された約5000年前に建てられたコンクリートの住居跡調査だった。現代のコンクリートの寿命はおよそ100年だが、そのコンクリートは原形をほぼ留めた状態で発見された。

CO2-SUICOMの舗装ブロック
CO2-SUICOMの境界ブロック

「研究チームの調査で、当時の人々は、地面にコンクリートを構築した後、その上に粘土でドーム状の壁を築き、その中で火を焚いて乾燥させていたことが分かりました。つまり、偶然にも、CO2濃度の高い密閉された空間の中でコンクリートが固まることによって、コンクリートに大量のCO2が吸収されていたのです。この炭酸化によって、コンクリートは化学的に安定した状態になり、5000年もの間、原形を保っていたのです」と取違さんは話す。

この調査を踏まえ、同社がCO2-SUICOMの材料に選んだのが「γ(ガンマ)C2S」だ。γC2Sは水酸化カルシウムと珪石を原料とする粉末状の物質で、CO2と反応して硬化する性質を持つ。つまり、γC2SはCO2を吸収するという働きをするが、それはコンクリートを固めるセメントと同じような働きをする材料なのである。

こうして、同社は2006年に、γC2Sを使いCO2を吸収させ、長寿命化させたコンクリートの商品化を実現させた。そして、更に研究を進めた結果、火力発電所や製鉄所から出る産業副産物とγC2Sを主な材料として、CO2を大量に吸収させて固める全く新しいタイプのコンクリートCO2-SUICOMが完成したのだった。CO2-SUICOMは、従来のコンクリートに比べて、セメントの使用量が半減し、加えて、固める際にCO2を固定化するので,CO2の削減に貢献できる。さらに,火力発電所の排ガス(CO2)を用いて固定化させる実証実験にも成功しており、排ガス中のCO2を直接固定化・削減することも可能である。

環境配慮をプロジェクトの一つとした都市開発の一環で、バルコニーにCO2-SUICOMが使われている住宅、Brillia ist 中野セントラルパーク(東京都中野区)。CO2-SUICOMは、外気にさらされる場所の鉄筋コンクリートを保護する効果も持つ。

現在、CO2-SUICOMは、歩道と車道の境界ブロック、道路の舗装ブロック、河川護岸ブロック、集合住宅のバルコニーの天井などに利用されている。海外、特に地球温暖化防止の意識が強い欧米の企業からの関心も高く、製品の商品化と販売に関心を示している企業も出てきているという。

CO2-SUICOMは、2020年12月に日本政府が発表した「2050年のカーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(経済産業省)で、「カーボンリサイクル」を実用化した事例に取り上げられるなど、注目を集めている。

「大規模な建築や公共施設にCO2SUICOMが利用されるようになれば、コストが低減されCO2減少効果も高まります。その普及によって、世界の『カーボンリサイクル』に貢献していきたいですね」と取違さんは話す。

* コンクリートを作るための材料の一つで灰色の粉末。最も多く使われているのが石灰石や粘土などを混ぜて焼いた「クリンカ」に石膏(せっこう)を加え、粉末状にしたポルトランドセメントが主流である。

CO2-SUICOMによるCO2の固定化のイメージ