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  • フォッサマグナパークで世界ジオパークネットワークのゾウロス理事長(中央右)とアイスランドのカトラユネスコ世界ジオパークのシグルズル先生(左)を案内
  • 小滝川ヒスイ峡ジオサイトで海外の地質学者を案内するセオドア・ブラウンさん
  • 糸魚川ユネスコ世界ジオパークの24エリアの一つ、親不知ジオサイトの眺め
  • 糸魚川ユネスコ世界ジオパークのジオサイトの一つ、新潟県糸魚川市にある蓮華温泉にある露天風呂を楽しむブラウンさんと友人
  • 地元のレストランで賞味できる、南蛮えび、ベニズワイガニ、あんこうなど糸魚川の海の幸が入っている「ジオ丼」
  • 糸魚川の米楽園(マイランド)で田植えのアクティビティに参加するブラウンさん

October 2021

糸魚川ユネスコ世界ジオパークの魅力を世界へ

小滝川ヒスイ峡ジオサイトで海外の地質学者を案内するセオドア・ブラウンさん

新潟県糸魚川市の自然や文化に魅了されたアメリカ出身のセオドア・ブラウンさんは、市の職員として、ジオパークなど、糸魚川の魅力を国内外に発信している。

フォッサマグナパークで世界ジオパークネットワークのゾウロス理事長(中央右)とアイスランドのカトラユネスコ世界ジオパークのシグルズル先生(左)を案内

「ユネスコ世界ジオパーク」(UGGp)は、“国際的な地質学的重要性を有するサイトや景観が、保護・教育・研究・持続可能な開発が一体となった概念によって管理された、単一の、統合された地理的領域”である。2021年4月現在、世界44カ国で169のジオパークが認定され、日本では9地域が認定されている。

2009年に日本で初めて認定された地域の一つが、新潟県の「糸魚川ユネスコ世界ジオパーク」だ。このジオパークには、西南日本と東北日本の地質を分断する巨大断層「糸魚川―静岡構造線」など地質学的に重要な地層や地形、そして、糸魚川の歴史や文化と深く関わりのある遺跡、神社、博物館など、代表的な見どころが24エリアで紹介されている。その魅力を国内外に発信しているのが、糸魚川市役所のジオパーク推進室に勤めるアメリカ出身のセオドア・ブラウンさんである。

糸魚川ユネスコ世界ジオパークの24エリアの一つ、親不知ジオサイトの眺め

「糸魚川ユネスコ世界ジオパークの魅力の一つは、北アルプスの3000メートル級の山々から水深1200mになる日本海の海底谷までがつながる急峻な地形が生み出すダイナミックな景色です」とブラウンさんは話す。

ブラウンさんが生まれ育ったアメリカのオハイオ州には、日系の自動車会社との関連企業があり、幼い頃から赴任した日本人との交流を通して日本文化には親しみがあった。大学では日本語を学び、日本留学も経験した。卒業後に日本で働く希望をかなえるため、地方自治体が外国青年を招致して任用する「JETプログラム」に応募、2008年に小・中学校の外国語指導助手として糸魚川市に着任した。

糸魚川ユネスコ世界ジオパークのジオサイトの一つ、新潟県糸魚川市にある蓮華温泉にある露天風呂を楽しむブラウンさんと友人

「まったく知らない土地でしたので、少し不安がありましたが、心の温かな地元の人々に支えられて、糸魚川での生活はすぐに楽しいものになりました」とブラウンさんは話す。「ベニズワイガニやアマエビ、キノコや山菜といった『海の幸・山の幸』の新鮮な食材を使った地元料理や、大自然の中を走るサイクリングにも魅了されました」

着任当時、糸魚川市は世界ジオパーク登録に向けた活動を行っており、ブラウンさんは、ボランティアとして英語での情報発信の支援などの活動に参加、ジオパークとして正式に登録された後も、支援を続けた。

地元のレストランで賞味できる、南蛮えび、ベニズワイガニ、あんこうなど糸魚川の海の幸が入っている「ジオ丼」

2013年、外国語指導助手の任期終了後、ブラウンさんは糸魚川市役所のジオパーク推進室の職員となった。ブラウンさんは、海外からの関係者に向けて、ジオパークへの視察対応やジオパークに関する講師を務める他、4年ごとに実施されるユネスコ世界ジオパークの再認定審査のための、通訳、英語での書類作成、プレゼンテーションなどの仕事を任されている。

かたや、新型コロナウイルス感染症の流行前には、糸魚川市を訪れる外国人旅行者が増加していたこともあり、英語による、市内の観光地情報のインターネットを通じた発信や観光パンフレットの作成といった外国人旅行者のための環境整備もブラウンさんの重要な仕事であった。また、ブラウンさんは、外国人旅行者と地元の人々との交流が、糸魚川の魅力を更に高めると考え、英語でのおもてなし講座や、飲食店を対象とした外国人への接客方法のアドバイス、飲食メニューの英語版の作成などの活動に積極的に取り組んだ。このほか、ジオパークを題材にした子供向けの教材の作成や市内の学校でジオパークについての講座によって、市内の学習支援も行っている。

糸魚川の米楽園(マイランド)で田植えのアクティビティに参加するブラウンさん

約10年にわたり、ブラウンさんは糸魚川ユネスコ世界ジオパークの各サイトを何度も訪れているが、その中でもお気に入りの一つが、「蓮華(れんげ)温泉」である。休日に山々に囲まれた露天風呂でのんびりと時間を過ごすのが、何よりも楽しみだ。

このように、心から糸魚川に愛着を抱くブラウンさんの目下の目標は、古民家を再生し自分の住まいとすること。その理由を「古民家には、雪深い地で暮らす人々の知恵が詰まっています。これもジオパークの文化的な遺産であると私は思います」とブラウンさんは言う。

ジオパークの自然を愛し、そこにまつわる文化について直の体験を重ねるブラウンさん。また新たな糸魚川物語が世界へと発信されるだろう。