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March 2023

農業の生産性向上と持続可能な農業の推進

  • 2022年12月に宮崎市で開催された「高校生の提言」プロジェクトキックオフミーティング
  • 宮崎県の特産品の宮崎牛
  • 宮崎市で開催された農林水産省職員による出前講座
  • 綾町の様々な有機野菜
  • 宮崎県の特産品のマンゴー
  • 温室効果ガスの削減率を星の数で表示するラベル

宮崎県宮崎市で今年(2023年)4月に開催されるG7農業大臣会合では、農業の生産性向上と持続可能性をどのように両立させるかについて議論が行われる。食料の安定供給の確保が各国共通の課題となる中、日本の取組を紹介する。

2022年12月に宮崎市で開催された「高校生の提言」プロジェクトキックオフミーティング

ロシアによるウクライナ侵略などを背景に、食料安全保障の確保が世界的な関心を集める中、農業の生産性を向上させつつ、持続可能性をいかに確保するかが国際的な課題となっている。こうした中、今年の4月22日、23日に宮崎県宮崎市「シーガイアコンベンションセンター」で開催されるG7宮崎農業大臣会合においても、農業の生産性向上と持続可能な農業の両立についての議論が行われる。

みどりの食料システム戦略

日本政府は、2021年、食料・農林水産業の可能性と持続性をイノベーションで向上させる「みどりの食料システム戦略」を立ち上げた。この戦略では、2050年までの達成を目指す14の目標を掲げている。農林水産業の化石燃料起源のCO2ゼロエミッション化を実現する、化学肥料の使用を30%低減する、耕作面積に占める有機農業*の取組面積の割合を現在の0.6%から25%(100万ヘクタール)に拡大するなどである。さらに、この戦略を強力に推進するため、新たな法律**が、2022年7月に施行されたところである。

綾町の有機農業の取組

綾町の様々な有機野菜

G7宮崎農業大臣会合の開催地である宮崎県でも、生産性の向上と持続可能な農業の両立を目指した取組が行われている。県中西部の綾町(あやちょう)は、有機農業を推進している先駆的な町である。同町は1988年に「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定し「有機農業の町」として、除草剤、化学農薬、化学肥料を出来る限り使用せず、自然環境に負荷をかけない有機農業を実践し、21世紀を展望した新たな農業、農村づくりを進めている。同町で栽培される有機野菜は、ニンジン、ビーマン、トマト、カボチャなど多種に及ぶ。

農業大臣会合に向けたプロジェクト

宮崎県では、農業大臣会合に向け、将来の農業を担う人材育成のためのプロジェクトも行われている。その一つが、「高校生の提言」プロジェクトである。本プロジェクトは、農業大臣会合の開催をきっかけとして、グローバルな視点を持つ農業人材を育成するために立ち上げられた。プロジェクトでは、県内の高校生が持続可能な食や農業について議論を行い、農業大臣会合当日には、出席する各国大臣に提言を発表することが予定されている。

宮崎市で開催された農林水産省職員による出前講座

また、今年2月には、子供たちが国際的な諸課題を学ぶ機会となるよう、農林水産省職員が宮崎市の小学校と中学校の生徒へ出前講座を行った。日本の食料生産トップクラスの宮崎県で農業大臣会合が開催される意義や食料システムを未来に継承させる必要性などの説明を行い、参加した生徒からは、「今晩から食事を残さず、必要以上に料理をレストランで注文しない」などの感想が述べられた。

宮崎県の特産品のマンゴー

農業大臣会合に合わせて、世界への宮崎県の魅力発信のイベントが実施される。特に、レセプションや夕食会の場で、宮崎県の特産品である宮崎牛やマンゴーのほか、「みどりの食料システム戦略」に基づいて生産者の脱炭素化の栽培努力を「見える化」した、脱炭素化ラベルが付いた県産野菜(下記参照)などを提供する予定である。

宮崎県の特産品の宮崎牛

脱炭素化に向けた農家の努力の「見える化」

温室効果ガスの削減率を星の数で表示するラベル

農林水産省は、「みどりの食料システム戦略」に基づき、農業生産由来の温室効果ガス削減に貢献する取組を行う生産者の努力を「見える化」するため、農作物の温室効果ガス簡易算定ツールを作成。この緩和策には、化石燃料や化学肥料、化学農薬の使用量低減、農地土壌へのバイオ炭の施用が含まれる。農林水産省は、このツールを活用し、脱炭素化ラベルがついた農作物(米、トマト、きゅうり)を、表示への消費者意識向上のため、販売する実証を行う。この試験的なラベルは、温室効果ガスの削減率を星の数で表示している。

農林水産省は今後、「見える化」に向けて、対象品目の拡大や生物多様性保全情報を追加する検討を行う。そうして、食料システムを取り巻く関係者の行動変容に結び付けていく。

* 有機農業推進法において、有機農業は「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」と定義されている。
** 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律

注記: 本記事は農林水産省と宮崎県の了解の上、同省と同県の公表資料に基づき作成している。