(イントロダクション:女性ナレーター)
性犯罪・性暴力の被害者のためのワンストップ支援センターには、年間およそ6万件の相談が寄せられ、こどもの被害に関するものも少なくありません。こどもを性暴力から守るために周囲の大人には何ができるのでしょうか。性暴力に遭ったこどもが発するサインや被害に遭ったこどもへの対応の注意点、専門家への相談窓口などについて確認しておきましょう。
(本文:Q.女性ナレーター/A.男性ナレーター)
Q1:「性暴力」とは、同意のない性的な行為のことですよね。
A1:そのとおりです。性暴力は、個人の尊厳を著しく踏みにじる重大な人権侵害であり、犯罪にもなり得るものです。性暴力による被害に遭っているのは、若い世代の女性だけではありません。年齢や性別にかかわらず、性暴力の被害を受けることがあります。女性だけではなく、男性も被害に遭っています。こどもや高齢者の被害もあります。また、加害者の8割は顔見知りであり、恋人同士や夫婦間、親しい人の間での被害もあります。
Q2:相手と対等な関係でなかったり、嫌だと言えない状況であったりしたなら、本当の同意があったことにはなりませんよね。こどもの性被害としては、どんなものがありますか?
A2:はい。特に、性的な行為に対する十分な判断能力が備わっているといえない年齢のこどもへの性的な行為については、本人の同意の有無にかかわらず、性暴力になり得ることに留意が必要です。
例えば、
- 着替え、トイレ、入浴をのぞかれた。
- 抱きつかれた、キスされた。
- 服を脱がされた。
- 水着で隠れる部分(プライベートゾーン)を触られた。
- 痴漢にあった。
- 下着姿や裸の写真・動画を撮られた、送るよう要求された
など、これらの行為は、性暴力に該当します。また、加害者は知らない人とは限りません。よく知っている身近な大人(先生、コーチ、親や親せき)からの加害も多いのです。
Q3:このことを大人が認識しておくことはもちろん、こどもが性的な行為についても理解できる年齢になってきたら、保護者など周囲の大人からこども自身にも伝えておくことが大切ですね。近年はこどもたちのSNS利用も普通のことになってきたので、その点でも被害に遭ってしまう機会が増えていたりするのでしょうか。
A3:まさに、特に近年はSNSの利用に起因する性暴力もあり、こどもや若者が被害者になるケースが増えていることが報告されています。内閣府が2022年にワンストップ支援センターで受けた相談に関して調査したところ、相談者が被害に遭った時の年齢は、10代以下が約半数を占めており、中学生以下に限っても約)3割に上ることが明らかになりました。
Q4:被害時の年齢が低いほど、長期間にわたってこどもの心身を深く傷つけるものになりますね。
A4:そうですね。そもそも、こどもは性暴力の被害に遭っても、それを性被害だと認識できない場合があることや、加害者との関係性などから誰にも相談できず、被害が潜在化・深刻化しやすいことが指摘されています。一刻も早く被害の継続を防ぎ、こどもたちを性被害から守るためには、周囲の大人がこどもたちの発するサインを見逃さないようにすることが大切です。
Q5:どのようなサインに気を付ければよいでしょうか?
A5:影響の現れかたはケース・バイ・ケースですが、例えば、頻尿、おねしょといったからだの変化、ふさぎこむ、元気がない、無気力といったこころの変化や、自傷行為、リストカットなどの行動面の変化といった心身の不調や問題行動が見られるといわれています。なお、性暴力の被害に遭っても、全くサインなどは現れず、普段どおり元気にしているこどももいます。こどもが発した言葉の中にも、何か気になることがあれば、気に留めておくことも必要です。
Q6:実際にこのようなサインなどで、身近なこどもが性暴力の被害に遭っていることに気付いた場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?
A6:被害に遭ったこどもの心の回復には、周囲の大人の適切なサポートが不可欠です。次の3つのポイントに気を付けながら、こどもの気持ちにしっかりと寄り添ってあげてください。
一つ目は、「絶対にこどもを責めない」です。被害に遭ったこどもは、「自分にも悪いところがあったかもしれない」、「被害にあったことを話すのは恥ずかしい」、「大切な人を悲しませたくない」といった思いなどから、被害をなかなか打ち明けることができません。こどもから被害を打ち明けられたときは、必ず「話してくれてありがとう。」、「あなたは悪くないよ」と繰り返し伝えるようにしましょう。話を疑ったり、否定したりせず、こどもの話を信じて寄り添いながら聞いてください。
二つ目は、「根ほり葉ほり聞き過ぎないようにする。」です。専門家ではない大人がこどもの話を聞きすぎると、こどもの記憶に影響してしまう場合があります。こどもの気持ちはしっかり受け止めつつ、被害の内容や状況などの事実関係については、質問を重ねたり、話を誘導したりすることのないようにして、できるだけ早く警察、ワンストップ支援センター、児童相談所などに相談しましょう。
三つ目、「なるべく早めに診察を受ける」です。直接被害があることが少しでも疑われる場合には、病院で、診察、治療を受けることが必要です。その際、証拠採取や性感染症の検査などについても医師に相談してください。妊娠の可能性がある場合、被害から72時間以内に緊急避妊薬を服用することで、高い確率で、望まない妊娠を防ぐことができます。また、性別を問わず、性暴力の証拠を採取するためにも、早めの受診が大切です。
Q7:絶対に責めず、聞き過ぎず、診察を早めに受けることが大事なのですね。では、こどもが性被害に遭ってしまったことを知ったら、どこに相談すべきなのでしょうか。
A7:犯罪被害相談電話の全国共通番号「#8103」にかけると、最寄りの警察の性犯罪被害相談電話窓口につながります。児童相談所の専門ダイヤル「189」にかけると、最寄りの児童相談所の虐待対応窓口につながります。性的虐待による被害などを受けた児童に関する通告・相談はこのダイヤルです。「#8891」にかけると、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながります。NTTひかり電話からかける場合は0120-8891-77です。また、性暴力に関するSNS相談Cure time(キュアタイム)では、チャットで相談できます。「キュアタイム」で検索してください。
Q8:ワンストップ支援センターはどのようなときに相談すればいいですか?
A8:診療などの医療的支援、カウンセリングなどの心理的支援、法律相談などの専門機関とも連携しており、性犯罪や性暴力についての悩みや不安を相談することができます。病院や警察への同行支援も行っています。また、被害者本人だけでなく、その保護者などからの相談も受け付けています。最寄りのセンターもご紹介していますので、「性暴力被害 ワンストップ」で検索してみてください。
Q9:最後に、男の子の被害について教えてください。被害にあうのは女性とは限りませんよね?
A9:性暴力の被害者、イコール女の子・女性とは限りません。「男性が性被害に遭うはずがない」、「男性なら抵抗できるはず」などというのは、全て誤った思い込みです。男の子も被害に遭っています。男の子の場合、性的な「遊び」や「いたずら」と軽視されることがありますが、性暴力の被害による心身の傷は深く、その後の成長にも大きく影響を与えることがあります。男の子・男性も被害者になる可能性があることを理解し、性被害を打ち明けられたときは、決して本人を責めたりせず、必要に応じて専門家からも助言や支援を得ながら適切な対応をするようにしてください。
(エンディング:女性ナレーター)
こどもを性暴力の被害から未然に守ることも私たち身近な大人の役割です。いざというときにこどもが性暴力から自分の身を守れるように、水着で隠れる部分は見せない・触らせないこと、相手のプライベートゾーンを見ない、触らないこと、イヤな触られ方をされそうなときは、「イヤだ」、「やめて」と言ってもいいこと、イヤなことをされたらすぐに大人に相談すること、また、自分は大切に扱われる存在であり、相手も自分のように大切に扱われるべき存在であることなどを日ごろから伝えておきましょう。