春になると多くの人が、つらい症状に悩まされる「スギ・ヒノキ花粉症」。毎年、花粉症の症状が出ている人は、花粉が飛び始める前から早めに医療機関に相談することが大事です。花粉の時期は、天気予報でも花粉飛散情報が提供されますので、そうした情報を確認し、万全の花粉症対策と早めの予防を心掛けましょう。
1花粉症の原因は?
花粉症は、樹木や草花の花粉が原因となって、鼻水やくしゃみ、目のかゆみ、のどの痛みといった、さまざまなアレルギー症状を起こす病気です。花粉症の原因というと、スギやヒノキなどがすぐに思い浮かびますが、それ以外にも、日本では、シラカンバやハンノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなど、およそ60種類の花粉が花粉症を引き起こすと報告されています。
花粉症の諸症状は、原因となる花粉が飛散する時期に現れます。スギやヒノキの花粉の飛散は春がピークですが、夏や秋に花粉が飛散する植物もあります。毎年決まった時期に鼻水やくしゃみ、のどの痛みなどの症状が出る人は、その時期が何か特定の植物の花粉飛散時期と重なっていないか確認してみてください。花粉症と考えられる場合、一度、医療機関を受診しましょう。症状を悪化させないため、また、花粉症の根治(治癒)を図るためには、適切な治療と予防行動などの対策が重要です。

資料:鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会
2花粉の飛散量は年によって違うの?
日本で最も多い花粉症は、春先に見られるスギ・ヒノキ花粉症です。花粉の飛散量が多いと症状も悪化しますから、花粉症罹患者にとっては、今シーズンの花粉の飛散量はどのくらいなのか、いつから花粉が飛び始めるのか、毎年、気になるところでしょう。
花粉を飛ばすのはスギ・ヒノキの雄花で、花粉の量は、前年の夏の気象に大きな影響を受けると言われています。日照時間が長く、気温が高い夏は雄花の量が多くなり、花粉の量が増えます。一方、長雨や冷夏の場合は、雄花が少なく、花粉の量が少なくなります。
また、花粉が飛散し始める時期は、初冬期(11月~12月)の気温と厳冬期(1月~2月)の気温の状況によって変化します。初冬期の気温が高めだと開花が遅れ、飛散開始時期は遅くなり、厳冬期以降の気温が高めだと、早めに開花して花粉の飛散開始が早まることが分かっています。
花粉の飛散開始時期や花粉飛散量などの花粉情報は、毎年1月下旬ごろから民間気象会社のウェブサイトや天気予報などで提供されます。花粉の時期は、そうした花粉情報を活用して、花粉症対策を行いましょう。
3花粉症対策のポイントは?
花粉の飛散シーズンは、体に侵入する花粉をいかに少なくするかが、花粉症対策の重要なポイントです。花粉が体内に侵入しないようにすることは、花粉症の症状を軽減するだけでなく、まだ花粉症でない人にとっては、花粉症の発症を防ぐ効果が期待できます。
花粉の体内侵入を防ぐために、花粉の飛散量が多い昼前後や夕方 は、外出を避けるようにしましょう。
外出するとき、また、外から帰ったとき、家の中にいるときは、次のようなことに気をつけましょう。
外出するとき
マスクの着用
マスクをつけることによって、通常のマスクでも花粉をおよそ70%減少し、花粉症用のマスクでは、およそ84%の花粉を減少させる効果があるとされています。顔にフィットし、息がしやすいもの、衛生面からは使い捨てのもの、性能的な面からは不織布のマスクがおすすめです。

メガネを着用
花粉症用のメガネも販売されていますが、通常のメガネを使用するだけでもメガネをしていないときより、目に入る花粉量は減少します。コンタクトレンズを使用している人は、コンタクトレンズによる刺激が、花粉によるアレルギー性結膜炎を悪化させてしまうので、メガネに替えたほうがよいと考えられています。
花粉が付着しにくい服装
外出時は、ウールなどの花粉が付着しやすい衣類は避け、綿、ポリエステルなど花粉が付着しにくい衣類を選びましょう。また、頭と顔は花粉が付着しやすい部分ですが、帽子をかぶることで、頭への花粉の付着量を減らすことができます。
外から帰ったとき
家の中に花粉を持ち込まない
建物に入る前に、衣類に付いた花粉を払い落としましょう。
うがいと洗顔
外出先から帰ったら必ずうがいを。のどに付着した花粉を除去する効果があります。また、顔を洗うことで、顔に付着した花粉を洗い落とします。しかし、丁寧に洗顔をしないと目や鼻の周囲に付いた花粉が体内に侵入し、かえって症状が悪化することがあるので、注意が必要です。また、水道水で洗うと粘膜を痛める可能性があるので、生理食塩水(食塩を0.9%の濃度に溶かした蒸留水)を用い、鼻うがい(※)の場合は体温程度に温めて、目は少し冷やして使いましょう。
※鼻うがい:鼻から生理食塩水などを注入して、ほこり、ウイルス、うみなどの汚れを取り除く方法

家に居るとき
換気時は窓を小さく開け、時間を短く
花粉が飛んでいるときでも、室内の換気が必要な場合があります。換気時は窓を全開にせず、10cm程度にし、レースのカーテンをすることで、流入する花粉を減らすことができます。流入した花粉は床やカーテンなどに多数残っているので、掃除やカーテンの洗濯をしましょう。
こまめに掃除する
室内には、衣類や髪の毛などに付着して花粉が持ち込まれたり、換気時に窓から花粉が入ったりして、たくさんの花粉が残っています。こまめに掃除機をかけ、室内の花粉を減らしましょう。

コラム
症状を悪化させないためには?
花粉症の発症には免疫機能の異常が関係していると言われています。花粉症の発症や症状の悪化を防ぐために、日ごろから、睡眠をよくとる、規則正しい生活習慣を身につける、適度な運動をするなどして、正常な免疫機能を保つようにしましょう。また、鼻などの粘膜を正常に保つために、風邪をひかない、たばこを吸わない、過度の飲酒をしないといったことも心掛けましょう。

コラム
政府の花粉症対策3本柱とは?
花粉症問題の解決に向け、政府は「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置し、令和5年(2023年)5月に「花粉症対策の3本柱」として解決への道筋を示しました。詳細は「政府の花粉症対策」をご覧ください。
花粉の飛散時期は、樹木や草花の種類によって異なりますが、夏から秋頃にかけてはスギ花粉の飛散量が少ない時期です。個々人でできるスギ花粉症への対処法は、花粉を回避すること、対症療法、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法、皮下免疫療法)等があります。このうち、アレルゲン免疫療法は、特に対症療法では効果が不十分なかたに推奨されるものであり、スギ花粉が飛散していない時期から治療を開始する必要があります。
政府の花粉症対策3本柱
(1)発症等対策
関係学会と連携し、診療ガイドラインの改定や対症療法等の医療・相談体制の準備に引き続き取り組む。また、アレルゲン免疫療法について、花粉が飛散していない時期に治療を開始する必要があることを踏まえ、治療を必要とする患者が花粉の飛散時期終了後速やかに医療機関を受診できるよう、ウェブサイト等で適切な情報提供の推進や広報に取り組む。また、予防行動について、国民に広く周知する。
(2)発生源対策
令和15年度(2033年度)までに、花粉の発生源となるスギ人工林を約2割減少させることを目標として、スギ人工林の伐採・植替え等を推進する。
(3)飛散対策
精緻化されたデータを民間事業者に提供すること等により、民間事業者が行うスギ花粉飛散量の予測の精度向上を支援する。
(取材協力:環境省 文責:政府広報オンライン)
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