台風並みの暴風となる「春の嵐」「メイストーム」 気象情報や警報・注意報に注意して安全対策を
暖かくなる3月から5月にかけては、春の陽光に誘われて、山や海、公園など行楽地へと外出したくなる季節です。しかし、低気圧が急速に発達して、「春の嵐」「メイストーム」と呼ばれる台風並みの暴風や猛吹雪が発生しやすい季節でもあります。ふだんから気象情報に注意して、特に天気の急な崩れが予想されるときには外出を控えて暴風に備えるなど、台風と同じように警戒してください。
1台風並みの猛威を振るう「春の嵐」とは?
さわやかな晴天の日が多い春は、屋外でのレジャーに最適な季節です。さらに、大型連休も重なる時期でもあり、行楽地へのお出かけを計画している人も多いのではないでしょうか。しかし、3月から5月にかけては、日本付近で急速に発達した低気圧によって「春の嵐」や「メイストーム(5月の嵐)」と呼ばれる激しい現象が発生し、台風並みの暴風や猛吹雪、海岸では高波となることもあるので、お出かけの際には十分な注意が必要です。
このような激しい現象の発生要因は、日本付近に北から入り込んでくる冷たい空気と南から流れ込む暖かい空気がぶつかりあって上昇気流が生まれることで、温帯低気圧が急速に発達するためです。
ちなみに台風の場合は、台風の中心が近づくと急激に風が強まりますが、「春の嵐」をもたらす発達した温帯低気圧は低気圧の中心から離れたところでも風が強く吹くため、被害の範囲が広がりやすいという特徴があります。
「春の嵐」発生事例(平成24年(2012年)4月3日から5日)
平成24年(2012年)4月2日21時に黄海にあった低気圧が急速に発達しながら日本海へ進み、4月3日21時には中心気圧が964ヘクトパスカルと台風並みに発達しました。この低気圧により山形県酒田市飛島では39.7メートル/秒、最大瞬間風速(※)51.1メートル/秒、和歌山県友ヶ島で最大瞬間風速41.9メートル/秒を観測するなど、各地で記録的な暴風となり、転倒や屋根からの転落、倒木の直撃などにより多数の死傷者が出たほか、トラックなどの横転事故、住宅の破損や停電、そして交通機関のマヒなど様々な被害が発生しました。
このように台風並みの猛威を振るう春の嵐は、台風と同様、事前に気象情報に注意して、必要な対策をとることが重要です。
※「最大風速」は10分間の平均風速における最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値のこと
2大荒れの天気が予想される場合は?
では、春の嵐の脅威に備えるためには、どうすればよいのでしょうか。
低気圧が急速に発達することによって起こる春の嵐は、急な天気の変化をもたらします。春の嵐によって大荒れの天気が予想されるときは、気象庁が数日前から、次のような気象情報を発表します。
(1)数日前から1日前に気象庁から「暴風に関する気象情報(※)」が発表されます。
(2)災害のおそれのある強風(東京都23区では13メートル/秒以上)となる6時間から3時間前には「強風注意報」が発表されます。
(3)その後も状況に応じて「暴風に関する気象情報」が発表されます。
(4)さらに、重大な災害のおそれがある暴風(東京都23区では25メートル/秒以上)となる6時間から3時間前に「暴風警報」が発表されます。
(5)注意報・警報発表後も、「暴風に関する気象情報」で、刻一刻と変化する暴風の状況が発表されます。
このように「強風注意報」や「暴風警報」は、強風や暴風が吹き始める数時間前に発表されます(暴風に限らず大雨などの警報等も同様です)。このため、「強風注意報」や「暴風警報」が発表された時点でまだ風が強くないとしても決して油断しないでください。そして、「暴風警報」等に記載されている暴風警戒期間にも留意して、なるべく屋内で待避するようにしてください。
「暴風に関する気象情報」が発表されたら、その後発表される「強風注意報」や「暴風警報」に注意し、早めに強い風に対する備えをしてください。
なお、強風注意報や暴風警報の発表基準は地域によって異なります。各地の警報・注意報の発表基準は下記のウェブサイトをご覧ください。
「気象情報」とは
災害に結びつくような激しい現象が予想される場合に、警報・注意報に先立って警戒を呼びかけたり、また、警報の発表中に現象の経過、予想、防災上の留意点などの解説を行ったりする情報のこと。例えば、ニュースなどで「気象庁では、○○に関する(気象)情報を出して警戒を呼びかけています」という形で伝えられる。
「警報」と「注意報」の違い
- 「警報」・・・重大な災害が起こるおそれのあるときに警戒を呼びかける予報
- 「注意報」・・・災害が起こるおそれのあるときに注意を呼びかける予報
※高波・大雨、雷などの警報・注意報に関する詳しい情報は、下記をご覧ください。
3強風や暴風の「風の強さ」の目安は?
ところで、この暴風や強風とは実際にどのくらいの強さなのでしょうか。天気予報では、風の強さについて「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」という言葉に加えて、「風速何メートル」のように速度に関する情報が伝えられますが、それらが一体どれだけの被害をもたらすものなのかイメージしにくいかもしれません。
そこで気象庁では、近年発生した被害事例をもとに作成した「風の強さと吹き方」をホームページなどで公表しています。この表によれば風の強さによって、屋外にいる人や走行中の自動車への影響、樹木や屋外の様子、建造物の被害といった具体的な事象をおおよその目安として理解できます。暴風に関する気象情報が発表されたときには、この「風の強さと吹き方」も参考にしながら、事前の備えを行いましょう。
風の強さと吹き方
4暴風が予想されるときの対策と、特に注意が必要な外出先は?
暴風に関する気象情報が発表されたら、風が強くなる前に、建物や建物の周りを見直して、飛びやすいものは固定するなど、対策を行いましょう。
また、学校や会社などにいるときは、強い風によって交通機関がストップし、帰宅が困難になるおそれがありますので、気象情報や警報・注意報が発表された場合は、学校や会社の指示に従って早めに帰宅するなど、強風のピークを避けて行動しましょう。
強風への備え
- 家の周囲やベランダに置いてある倒れやすいものなどは固定するか家の中に入れる。(物干し竿、植木鉢、自転車など)
- 屋根や雨戸、シャッターを点検し補強しておく
- 窓ガラスに飛散防止用のフィルムを貼っておく
強風が吹いているときは
- 転倒・転落や、看板などの飛散物による負傷を避けるため、外出はできるだけ控える
- 窓や雨戸、シャッターをしっかり閉める。雨戸などがない場合は割れた窓ガラスの飛散防止のためカーテンを閉める
特に注意が必要な外出先
強風注意報や暴風警報などが発表された場合には、無理をせずに計画変更しましょう。特に天気が荒れている時に山や海へ行くことは非常に危険です。
登山・ハイキング
春の山にはまだまだ残雪も多く、「春の嵐」の接近によって暖かい空気が流れ込んだ結果、雪崩が発生する危険があります。また、嵐の通過中は猛吹雪や強風で歩くのが困難になるほか、通過直後も急激な気温の低下で低体温症による疲労凍死に至るおそれもあるので注意が必要です。
釣りやマリンレジャー
強風や高波によって転覆のおそれがある船はもちろんのこと、防波堤、海岸にいるのも非常に危険です。春の海は天気が急変しやすいので、たとえ穏やかな天気であっても最新の気象情報に注意しましょう。
川遊び、キャンプ
強風でテントやタープなどが飛ばされるほか、特に河原では大雨によって急な増水や鉄砲水が発生するため警戒が必要です。
春の嵐は暴風だけでなく、高波や大雨、雷などを伴う場合があります。これらの気象についても、暴風に関する気象情報とともに伝えられますので、注意してください。
(取材協力 気象庁 文責 政府広報オンライン)