命をつなぐ骨髄バンク あなたのドナー登録を待っている人がいます

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病室のベッドにいる子供と、その傍に立つ家族、医療スタッフ

骨髄バンクは、白血病などの血液疾患の治療のための造血幹細胞移植のうち「骨髄移植」や「末梢血幹細胞移植」が必要な患者さんと、それを提供するドナーをつなぐ公的事業です。適合するドナーが見つかる確率は兄弟姉妹の間でも4分の1、血のつながっていない他人になると数百から数万分の1です。移植を希望する全ての患者さんがチャンスを得るためには、一人でも多くのかたのドナー登録への協力が必要です。ここでは、移植の必要性やその実情、ドナー登録の方法や、実際に採取される流れなどを分かりやすくご紹介します。

1造血幹細胞移植とは?

造血幹細胞移植とは、白血病などの血液疾患を抱える患者さんの、正常な造血機能を回復させる有効な治療法です。
私たちの体内を循環する血液には、全身に酸素や栄養素を運んだり、老廃物を体から排出したり、出血を止めたり、ウイルスなどの感染を防御したりするなど、生きていくために必要な機能があります。
この血液を造っているのが、骨の内部にある「骨髄」というスポンジ状の組織で、その中には赤血球や白血球、血小板といった血液細胞のもとになる「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」が多く含まれています(下図参照)。

骨髄の中にある造血幹細胞と、白血球、赤血球、血小板の役割

この造血幹細胞に異常が起こり、正常な血液が造れなくなる病気が白血病や再生不良性貧血などの血液疾患で、免疫が機能せず感染症にかかりやすくなったり、出血しやすくなったりします。
こうした血液疾患の治療法には「放射線照射」や「抗がん剤投与」のほか、病気に冒された造血幹細胞を健康なものに置き換えて正常な造血機能を回復させる「造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)」があります。
この「造血幹細胞移植」には「骨髄移植」以外に、全身に流れる血液:末梢血(まっしょうけつ)から採取した造血幹細胞を移植する「末梢血幹細胞移植(まっしょうけつかんさいぼういしょく)」や、「さい帯血(さいたいけつ)」(お母さんと赤ちゃんを結ぶへその緒と、胎盤の中に含まれる血液)に含まれている造血幹細胞を移植する「さい帯血移植」があります(下図参照)。

造血幹細胞移植の種類

(1)骨髄移植 (2)末梢血幹細胞移植 (3)さい帯血移植
ドナーの腸骨から骨髄を採取する医師 注射で造血幹細胞を採取しているドナー 出産後、臍帯から注射で血液を採取
腸骨(腰の骨)から注射器で骨髄液を吸引(採取) (注射によって末梢血中の造血幹細胞を増やし)血液成分を分離する機器で造血幹細胞を採取 出産後、切り離したさい帯(へその緒)や胎盤に残っている血液を採取し、-196℃の液体窒素の中で保存(移植時に解凍)

(採取した造血幹細胞)
採取した造血幹細胞を点滴で受けている患者
数時間の点滴によって、患者さんの静脈から注入

移植が対象になる主な病気

白血病:血液を造る細胞の異常でがん化した血液細胞だけが増え、正常な血液が造られなくなる
再生不良性貧血:血液を造る細胞の機能が低下し、血液成分が極端に少なくなる
骨髄異形成症候群(MDS)、悪性リンパ腫、先天性免疫不全症、代謝異常など

※参考:公益財団法人日本骨髄バンク「移植が有効といわれる疾患について」

2ドナーの数は足りないの?

ドナーが見つかる確率は数百から数万分の1(非血縁者の場合)
赤血球にA・B・O・ABという4種類の血液型があるのと同様、白血球にもHLA型(※1)といわれる型があり、その組合せは数万通りも存在します。
造血幹細胞移植を行うには、提供するかたと患者さんのHLA型が適合している必要があります。しかし、その確率は兄弟姉妹間でも4分の1、血がつながっていない非血縁者(他人)間になると数百から数万分の1と極めて低いため、近親者にHLA型の適合者がいない場合に、患者さんが独力でドナーを探すことは至難の業です。

HLAの伝わり方

そこで、より多くの患者さんにHLA型の適合するドナーが見つかるようにするため、行われているのが骨髄バンク事業です。これは、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」(平成24年法律第90号)に基づく骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者として、「公益財団法人日本骨髄バンク」が主体となり、日本赤十字社や都道府県等の協力により行われているものです。同法人では、骨髄・末梢血幹細胞を提供する意思がある人たちにドナー候補者として骨髄バンクに登録していただき、患者さんとの間で公平に移植のあっせん(コーディネート)などを行っています。
なお、さい帯血については、骨髄バンクのようなドナー登録制度はなく、全国6か所にある「公的さい帯血バンク」が提携している産科施設において、出産予定の妊婦さんのうち、さい帯血の提供に同意をされたかたから採取をし、保存をしています。

※1)HLA・・・ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)の略

骨髄バンクは、ドナー登録と患者登録を受け付け、骨髄移植等のあっせんを行う

日本では毎年新たに約1万人以上のかたが白血病などの血液疾患を発症していると言われており、そのうち骨髄バンクを介する骨髄移植又は末梢血幹細胞移植(以下「骨髄等移植」といいます。)を必要とする患者さんは毎年約2千人程度います。
現在、骨髄バンクのドナー登録者数は約54万人(令和5年3月末現在)となっていますが、半分以上が40から50代であり、若年層の登録が少なく、今後ドナー登録者数の減少が危惧されています。また、ドナー候補者の健康状態などによっては骨髄液などの提供ができない場合もあるため、HLA型が適合するドナー候補者が見つかったとしても骨髄等移植を受けられない患者さんもいます。一人でも多くの患者さんが骨髄等移植のチャンスを得るためには、さらにより多くの方々に、骨髄バンクと移植について、理解と協力が必要なのです。

3ドナー登録するには?

ドナー登録できるかた

骨髄バンクのドナー登録には以下の要件があります。

  • 骨髄・末梢血幹細胞の提供の内容を十分に理解しているかた
  • 18歳から54歳で健康なかた(ただし、実際に提供できるのは20から55歳)
  • 体重が男性45kg以上/女性40kg以上のかた

※ドナー登録できないかた
病気療養中又は服薬中のかた(特に気管支ぜんそく、肝臓病、腎臓病、糖尿病など、慢性疾患のかた)
悪性腫瘍(がん)、膠原病(慢性関節リウマチなど)、自己免疫疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などの病歴があるかた
本人又はご家族に悪性高熱症の病歴があるかた
最高血圧が151以上又は89以下のかた、最低血圧が101以上のかた
輸血を受けたことがあるかた、貧血のかた、血液の病気のかた
ウイルス性肝炎、エイズ、梅毒、マラリアなどの感染症の病気のかた
食事や薬等で呼吸困難やひどい発疹などの既往があるかた
過度の肥満のかた(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が30以上のかた)

ドナー登録の流れ

また、ドナー登録は次のような流れで行われます。なお、窓口において登録に要する時間(STEP3から5)は15分程度です。

STEP1 骨髄・末梢血幹細胞の提供に関する内容を十分に理解
基礎知識やドナー登録の条件、採取・提供の流れ、ドナー体験談などが分かりやすくまとめられている公益財団法人日本骨髄バンク「ドナー登録の方法」に書かれている内容を理解します。

骨髄バンクのリーフレット
※献血ルーム・保健所などの登録窓口に配布されています。

STEP2 「骨髄バンクドナー登録申込書」に必要事項を記入・署名
申込書は前述のパンフレット「チャンス」にあるほか、公益財団法人日本骨髄バンクのホームページや、献血ルームなどの登録窓口にも用意されています。

STEP3 登録窓口などに「登録申込書」を持参、ドナー登録手続きの実施
全国各地の献血ルームや保健所などに常設の登録窓口があるほか、日本赤十字社や地方自治体・官公庁・企業などの協力を得て各地で開催されるドナー登録会において、ドナー登録手続きが可能です。また、献血バスでも登録できる場合があります。
最寄りのドナー登録窓口は、公益財団法人日本骨髄バンクのホームページから検索可能です。
登録受付窓口(主に献血ルームや保健所・保健福祉センターなど)
ドナー登録会

STEP4 HLA検査用の血液を腕から採取
腕の静脈から約2ミリリットルを採血し、HLA型を調べます。
ただし、感染症や健康状態を確認するような検査は行われないほか、患者さんへの骨髄・末梢血幹細胞提供の公平性を保つなどの理由により、判明したHLA型を知ることはできません。なお、検査費用は無料です。

STEP5 ドナー登録後に「ドナーカード」を受領。後日、「登録確認書」が送付(登録完了)
ドナー登録が完了すると「ドナーカード」が渡され、その後、日本赤十字社から「登録確認書」が送付されます。

ドナーカードの見本
ドナー登録に関する疑問については電話やメールでも受け付けていますので、気軽にお問い合わせください。

公益財団法人日本骨髄バンク
電話 03-5280-1789 (受付時間:平日9:00から17:30)
メールでのお問合せ:公益財団法人日本骨髄バンク「お問い合わせフォーム」

4ドナー候補者に選ばれたら、すぐに採取されるの?

ドナー登録者のHLA型は、移植を希望する患者さんのHLA型と照合されます。HLA型が適合した場合、公益財団法人日本骨髄バンクからドナー候補者に選ばれたとの連絡が入ります。
ただし、ドナー候補者に選ばれても、すぐに骨髄や末梢血幹細胞の採取が行われるわけではありません。ドナーとなるかたの健康と安全確保のために、ドナー候補者本人の健康状態や、本人及びその家族の提供意思が確認されます。

ドナー候補者に選ばれてから採取前までの流れは以下のとおりです。

(1)ドナー候補者に選ばれたことの通知
公益財団法人日本骨髄バンクから、提供意思を確認する書類が送付
本人の提供意思と家族の意向、面談や検査の日程や健康状態などについて、同封されたアンケートに記入・返信

(2)確認検査
ドナー候補者との連絡調整を行うコーディネーターから採取(提供)についての詳しい説明と、医師による問診
提供意思に変わりがなければ、健康状態などを調べるための採血

(3)最終同意
ドナーに選ばれると、医師やコーディネーター、立会人の同席のもと、ドナー候補者とその家族の最終的な提供意思を確認(最終同意書へのサイン)

医師やコーディネーター、家族の立ち合いのもと、最終同意書にサインするドナー

※最終同意が確認されると、患者さんも移植に向けて必要な処置を受け始める(詳しくは後述)。患者さんの命にかかわるため、慎重にご判断いただきます。
採取が決定すれば「ドナー手帳」を受領

(4)健康診断
(骨髄・末梢血幹細胞提供の約1か月前)
採取する病院で健康診断を実施し、安全な採取に備える

5採取はどうやって行われるの?

骨髄・末梢血幹細胞移植を行う日が決まったら、患者さんとドナーのかたは移植に向けた準備を進めていきます。
なお、ドナーのかたの準備は骨髄採取の場合と末梢血幹細胞採取の場合でそれぞれ異なります。ドナーのかたからの採取方法は患者さんの希望により決められます。ただし、確認検査時にドナー候補者に対して承諾できない方法の有無を確認し、その意向は患者さんにも知らされるため、ドナーのかたが希望しない採取方法になることはありません。

骨髄の提供

(1)自己血採血
骨髄採取後の貧血予防のため、事前にドナー自身の血液を採血・保存(採取の1から3週間前)

(2)入院
健康チェックと採取に関する説明を受ける(採取の1から2日前)

(3)全身麻酔によって骨髄採取
手術室で仰向けになり、気管内挿管による全身麻酔
うつ伏せの状態で骨盤を形成する大きな骨(腸骨)から専用の針で骨髄液を採取(※)
(所要時間は1から3時間程度)
※採取量は、通常400から1200ミリリットル(患者さんの体重に応じて決定)

骨髄採取の手術を受けているドナー

(4)採取後の経過
採取後、通常2から3日で退院
退院後もコーディネーターが健康状態をフォローアップ
(採取後は、痛みや発熱などの症状が出ることもあるが、通常は速やかに回復)

末梢血幹細胞の提供

(1)注射
白血球を増やす薬(G-CSF)を皮下注射
連日の注射によって、全身の血液に造血幹細胞が増え、血液中に流れ出す。
(3から4日の通院又は入院)

(2)入院
健康チェックと採取に関する説明を受ける。
(入院での注射の場合は4泊5日から5泊7日。通院での注射の場合は2から4日)

(3)造血幹細胞を採取
血液成分分離装置を使い、注射によって血液中に増えて流れ出した造血幹細胞のみを採取(通常の「成分献血)と同様)
(注射を打ち始めて4から5日目。所要時間は3から4時間程度)
ただし、採取した細胞数が必要数に満たない場合は、翌日2回目の採取を実施

注射によって末梢血幹細胞の提供をするドナー

(4)退院
採取後、通常1から2日間で退院
退院後もコーディネーターが健康状態をフォローアップ
(注射や採取によって、骨痛・手足のしびれなどの症状が出ることもありますが、通常は速やかに回復)

骨髄や末梢血幹細胞の採取に伴い、ドナーには痛みや副作用などのリスクがあるため、採取前後や退院後もドナーの安全には細心の注意が払われます。
国内での骨髄バンクを介した骨髄・末梢血幹細胞移植においてはドナーの死亡例はありません。一方で様々な健康被害が生じた事例はあるものの、いずれも治療によって回復し通常の生活に戻っています。
公益財団法人日本骨髄バンクでは、全国の採取施設に厳重な注意を呼びかけ、このような事例の再発防止に努めています(万一、健康被害が起こった場合、最高1億円の補償制度を用意)。
併せて、公益財団法人日本骨髄バンクのホームページでも骨髄採取などの安全性について情報公開に努めています。

参考【1】患者さんの移植の流れ

(1)前処置(移植の約1から2週間前)
病気になった造血幹細胞をいったん破壊するため、抗がん剤の投与や放射線の全身照射を受けます。これによって、患者さんは血液が造れなくなり、感染に対する抵抗力がなくなるため、無菌室(極めて清浄に保たれた病室)で過ごします。激しい吐き気や全身の脱毛などの副作用に耐えながら、命がけの治療に取り組みます。

(2)移植
ドナーから提供された造血幹細胞は、通常の輸血と同じように、点滴で数時間かけて静脈から注入されます。

(3)造血機能回復、社会復帰へ
無菌室で感染症などに注意しながら安静に過ごします。やがて移植された造血幹細胞が働きはじめて正常な血液を造れるようになると(通常2から3週間)、一般病棟へ移ります。そこで良好な経過をたどれば、退院・社会復帰が可能になります。

骨髄移植等の治療の流れ
出典:公益財団法人日本骨髄バンク 登録のしおり「チャンス」

(取材協力:厚生労働省  文責 政府広報オンライン)

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