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木材を使用して、元気な森林を取り戻そう!

令和3年(2021年)10月8日

イラスト:森の中のログハウスで自然を楽しんでいる家族

森林は、二酸化炭素の吸収のほか、地下水を豊かにするなどの水源のかん養、土砂災害の防止、木材・キノコ・山菜といった林産物の供給、保健休養の場の提供など、私たちにとって欠かせない役割を果たしています。こうした健全な森林に育てていくためには、木材を積極的に使うことが重要です。木材を利用することの重要性やその促進に向け私たちができることなどをご紹介します。

1なぜ、木材を使う必要があるの?

我が国は、森林の面積が約2,500万ヘクタール(平成24年)と国土面積(約3,800万ヘクタール)の約3分の2に相当し、世界でも有数の森林国といえます。
この日本の森林資源(蓄積)(※1)は約49億立方メートルであり、その約6割を「人工林(※2)」が占めています。また、森林資源の蓄積量は毎年約1 億立方メートル程度増加しており、その多くが人工林の成長によるものです。

※1)森林を構成する樹木の幹の体積のこと。森林資源の量の目安となる。
※2)人の手により植栽された森林。主に、スギ・ヒノキ・カラマツなどの針葉樹。

現在、成長したこれら人工林の多くが木材として利用可能になっているにもかかわらず、外国産木材の輸入量の増加や林業の採算性の低下により、国産材供給量は国内全体における木材需要量(約7,500万立方メートル)の約3割(約2,500万立方メートル)に留まっています。
このような林業の生産活動の停滞から、放置される森林(人工林)もみられるようになっています。

人工林では、植栽した木を間引きして密度を調整する「間伐(かんばつ)」といった手入れを行わないと、木立の間に日光が差し込まず下草が生えないなどにより土壌が失われたり、土砂崩れの原因となったりします。また、適切な伐採が行われないと、新しい木が植えられず高齢の木々ばかりとなり二酸化炭素の吸収量が低下するなど、森林の持つ多面的機能の低下につながってしまいます。
そこで、森林(人工林)を元気にするため、「植林」→「育成(間伐などの手入れ)」→「(成長した木を)伐採」、そして「利用する」というサイクルを回していくことが重要です。
それによって、健全な森林の育成とともに住みやすい環境と資源を持続的に得ることができます(いわゆる、バランスのとれた状態)。そのためには、人工林で育った木材を、私たちがもっと利用することが必要です。

現状

イラスト:現状の森林の状況。未利用間伐材等が毎年2,000万立法メートル発生。間伐が行われず、土壌が失われ、CO2の吸収量が低下。

  • 植林後、手入れされない
  • (密集したままなので)植栽された樹木は細く、根も発達しない
  • 下草が生えない
  • 土壌が失われ土砂崩れが起こりやすくなる
  • 二酸化炭素の吸収量低下
  • 森林に関わる働き手減少、農山村地域の活力低下

バランスのとれた状態

イラスト:植える、育てる、収穫する、適材適所で使うというサイクルにより、バランスのとれた森林の状態。森林の多面的機能が発揮され、CO2吸収能力の維持向上されている状態。

  • 植林後、「下刈」「除伐」「間伐」など継続的な手入れと成長した木の伐採
  • 間伐され、活き活きとした森林
  • 森林の多面的機能が発揮
  • 幹が太くなり、根も発達
  • 下草が生え、土壌を保持し、土砂崩れ等防止
  • 二酸化炭素の吸収能力を維持向上
  • 間伐材のニーズが広がり働き手が増え、農山村地域が活性化

2木材を使うメリットは?

(1)森林の多面的機能を保持

森林には、水源のかん養や土砂災害の防止、林産物の供給、保健休養の場の提供、生物多様性の保全といった多様な機能を持っています(これを「森林の有する多面的機能」と言います)(下図参照)。
光合成によって大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収する樹木の活動は、深刻な問題となっている地球温暖化への対策としても重要です。

森林の多面的機能(イメージ図)

イラスト:森林の多面的機能(イメージ図)。水を育む、土砂の流出を防ぐ、土砂崩れを防ぐ、雨水を土壌に蓄え、河川の急な増水を防ぐ、水を安定して供給する、川や海の生き物を育む、二酸化炭素を吸収し酸素を供給する、木材を供給する、野生動物の生息・生育の場、キノコや山菜などの林産物を供給、安らぎを与える

また、森林資源の循環利用に関する意識・意向調査の結果から見ても、様々な働きが期待されているなど、私たちの生活に密接した存在であることが分かります。
積極的に木材が利用されれば、健全な森林の整備を進めることができ、森林はバランスのとれた状態となって多面的機能の維持が可能になります。

(2)人にやさしい素材

森林の産物である木材は、人にとって様々な心地よい感覚を与えてくれる素材です。

  • 心地よい湿度
    木には湿度が高くなると水分を吸収し、低くなると水分を放出して、室内の湿度を一定に保つ働きがあります。
  • 温かい
    金属などよりも「熱伝導率」が低い木材は、熱を伝えにくく、人が触れたときには金属板よりも温かく感じられます。
  • 心地よい香り
    木の香りにはストレスをやわらげ、心と体をリラックスさせる働きがあります。香りが私たちの気分に影響を与えることは経験的に知られていますが、近年では血圧が下がるといった計測データに基づいた、リラックス状態の評価も進み、木の香りによるリラックス効果が明らかになってきました。
  • 実は“柔らかい”?
    木材は、樹木が生きていたときにつくられたパイプ状の細胞の集合体。空隙の多い構造であるため、コンクリートと比べても衝撃を吸収しやすく、たわみ変形による衝撃緩和作用もあるといわれています。

(3)農山村地域の活性化に貢献

私たちが普段から木材を使った製品を積極的に使うことで、その対価は山村に還元されます。木材の自給力向上によって健全な森林整備を進められます。
それが、働き手の増加などにもつながり、農山村地域の活性化にも貢献します。

3私たちにできること

木づかい運動、木育(もくいく)

平成17年度から、林野庁を中心に国民運動として取り組んでいる「木(き)づかい運動」とは、木材を利用することの意義を広め、木材利用を拡大していくための国民運動です。
毎年10月を「木づかい推進月間」として集中的に活動を行ってきましたが、令和3年10月1日に施行された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の中で、10月は「木材利用促進月間」として法定化されました。これを踏まえ関係各省や業界とも連携し今後も10月はシンポジウムやイベントの開催などを通じて、木材利用の推進に向けた普及啓発活動を集中的に行います。

「木づかい運動」について詳しくは下記をご覧ください。

木づかいサイクルマーク

木づかいサイクルマーク

「木づかいサイクルマーク」は、木づかい運動に賛同する企業・団体が登録申請をすることで、国産材製品をはじめ、パンフレット・名刺・環境報告書などに貼付できるマークです。
日本の美しい森林の再生を願って「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という森のサイクルをデザインしたものです。特に無限大「∞」の記号で表現した緑色の部分は、森の循環が持続可能であること、そして地球温暖化の防止や森を育てるエコ活動に取り組む人たちの連携やつながりをイメージしています。

(1)身近な木づかい

家庭やオフィスでも木づかいができます。日頃使う割り箸や、オフィスで使うコピー用紙、スーパーで買った飲料容器。身近な製品の原材料は様々ですが、実は、中には、原材料に地域材あるいは間伐材を活用した製品もあります。こうした木材由来の製品を買うときには、「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という、人工林のサイクルの中で産出された、木材を活用した製品を選ぶことで、森林の整備につながります。

地域の材を活用した割り箸

写真提供:ウッドデザイン賞運営事務局*

間伐材を活用した紙製飲料容器

写真提供:森を育む紙製飲料容器普及協議会

間伐材を活用したコピー用紙

写真提供:ウッドデザイン賞運営事務局*

地域の材を活用したトイレットペーパー

写真提供:ウッドデザイン賞運営事務局*

上記写真のうち*印の3枚の写真はウッドデザイン賞(後述)受賞作品

関連情報サイト

(2)木育の取組

「木育(もくいく)」とは、子どもから大人までを対象に、木材や木製品との触れ合いを通じて木材への親しみや木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学ぶための教育活動で、「木づかい運動」の一環として取組が広がっています。

例えば、「東京おもちゃ美術館」では、厳選した木のおもちゃのセットを各地に運び、子どもたちが木のおもちゃに触れる機会を全国に広める「木育キャラバン」を、毎年、全国各地で開催しています。また、子育てや教育関連等、複数の関係者が連携し、小中学生向けに開発された、「木育プログラム」は、木材に関する授業と森林での間伐体験や木工体験を組み合わせたもので、平成27年度までに、延べ261校で実施されています。

国内メーカー製の木製玩具


写真提供:林野庁

 

「木育」情報サイト

(3)ウッドデザイン賞

「ウッドデザイン賞」は、消費者目線で、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを表彰するもので、平成27年にスタートしました。これまでの受賞作品では、曲がる木材をカバーに用いたシステム手帳や、地元の木材を用い内装を木質化した観光列車など、暮らしを彩る木づかいの製品や、木を使うことで地域や森林を活性化する取組などが見られます。
ウッドデザイン賞によって、木のある豊かな暮らしが普及・発展し、日々の生活や社会が彩られ、木材利用が進むことを期待しています。

iLignosシステム手帳

えちごトキめきリゾート雪月花

写真提供:ウッドデザイン賞運営事務局
上記2枚の写真はウッドデザイン賞2016の受賞作品

「ウッドデザイン賞」情報サイト

4国産材の利用をさらに広げるために

木材の利用を促進するためには、これまで、木材が使われてこなかった分野において、新たに需要拡大することが重要です。木材の需要拡大に向け、政府としても以下のような様々な取組を行っています。

福岡女子大図書館

池上線 戸越銀座駅

訓子府町こども園

シダアリーナ

写真提供:木材利用推進中央協議会
上記4施設は「平成29年度木材利用優良施設表彰(木材利用推進中央協議会)」受賞施設

「木材利用優良施設表彰」サイト

(1)公共建築物等の木造化・木質化

平成22年10月に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づき、国や地方公共団体が木材利用に関する方針等を策定し、自ら発注する物件への木材利用や補助事業等による民間事業体への支援の取組を進めており、木材を使った公共建築物などが増えてきています。
また、最近では、CLT(Cross Laminated Timber)を利用した、中高層や中大規模の木造建築も国内外で増えてきています。

「CLT」について、詳しくはこちら

工業製品として使えるJAS無垢製材品

木材製品は、使用している間に寸法が変化したり、曲がったりして品質・性能にバラツキのある材料と思っていませんか?
無垢材であっても、国の基準に従ってしっかりと製造管理されたJAS製品であれば、集成材や鉄骨などと対等に競争できる規格化された建材として使えます。
例えば、JAS製品は、品質・性能が明確であり、厳密な構造計算が求められる中大規模建築でも使いやすいため、最近ではJAS無垢製材品を利用した5階建ての商業施設や大型の体育館、倉庫、店舗等が建てられています。

(注)JAS(日本農林規格):農林物資の品質改善や生産の合理化等を目的とした国が定めた農林物資の規格。


商業施設 (京都府向日市)


体育館 (北海道黒松内町)

写真提供:林野庁

(2)木質バイオマスのエネルギー利用

材料としての活用のほかに、再生可能エネルギーの一つとして、未利用な間伐材等の「木質バイオマス(※)」としての利活用にも取り組んでいます。木材のエネルギー利用には以下のようなメリットがあります。

※「バイオマス」とは生物資源(bio)の量(mass)を表す言葉であり、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)」のこと。そのなかで、木材からなるバイオマスのことを「木質バイオマス」という。

二酸化炭素の排出抑制と地球温暖化の防止

木材を燃やすと発生する二酸化炭素は、伐採されるまでの森林成長の過程で光合成によって樹木に吸収され固定されたものです(つまり、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない=カーボンニュートラル)。化石燃料の代わりにすることで二酸化炭素の排出抑制となります。

廃棄物発生を抑制

廃棄物となる製材工場の残材や住宅解体材がバイオマスエネルギーとして有効に活用されれば、廃棄物の削減と循環型社会の形成に役立ちます。

リスクの分散

バイオマスエネルギーの利用は、エネルギー源の多様化、リスクの分散という意味でも重要で、貴重な地域分散型のエネルギー源の一つとしても利用が期待されます。

(3)木材輸出の促進

木材需要の創出に向け、近年では、木材の輸出促進に取り組んでいます。木材の輸出額は平成25年以降増加しており、平成28年の輸出額は238億円となりました。内訳を見ると、品目別では丸太が全体の3分の1、輸出先国別では、中国・韓国・フィリピン・台湾で全体の8割を占めており、さらなる輸出拡大に向け、より付加価値の高い木材製品の輸出拡大や、新たな輸出先国の開拓に向けた取組を行っています。

(取材協力 林野庁  文責 政府広報オンライン)

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