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令和3年(2021年)10月28日

有事などの際、国を支える力になる!
「予備自衛官等制度」

有事などの際、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官等制度を設けています。予備自衛官等による災害対応については、東日本大震災を初め、これまで7回実施し、現役の自衛官に加えて予備自衛官及び即応予備自衛官を招集し、災害救助活動などにあたりました。ここでは、わが国の防衛力を支える重要な制度である「予備自衛官等制度」について紹介します。

1.「予備自衛官等」ってどんな人?

ふだんは民間人として働き、有事などの際は自衛官として任務にあたります

予備自衛官等は、ふだんは会社員や自営業、学生などそれぞれの本業を持ちながら、有事などの際には、防衛招集や災害招集などに応じて自衛官として任務に就く非常勤の特別職国家公務員です。

有事などの緊急事態に当たっては、大きな防衛力が必要です。しかし、その防衛力を日頃から保持することは効率的ではありません。このため、普段は必要最小限の防衛力で対応し、いざというときに、必要となる人員を急速に集めることができる予備の防衛力が必要となります。多くの国でも、いざという時に急速に戦力を増強するシステムを取り入れています。我が国においては、これに相当するものとして、即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補からなる予備自衛官等制度を設けています。

予備自衛官等制度の概要

  即応予備自衛官 予備自衛官 予備自衛官補
導入年度 平成9年度 昭和29年度 平成13年度
役割 第一線部隊の一員として、任務に就く 後方地域の警備、後方支援等の任務に就く 一般公募により採用され、教育訓練を受け、予備自衛官に任用
採用年齢
  • 2尉、3尉、准尉、曹長、1曹:52歳未満
  • 2曹、3曹、士 :50歳未満
  • 1佐:59歳未満
  • 2佐、3佐:58歳未満
  • 1尉、2尉、3尉、准尉、曹長、1曹:57歳未満
  • 2曹、3曹、士:55歳未満
  • 一般:18歳以上34歳未満
  • 技能:18歳以上で、技能に応じ53~55歳未満
任用期間
  • 3年(継続任用も可)
  • 上限年齢:2尉~1曹は52歳、2曹、3曹は50歳未満まで継続任用
  • 3年(継続任用も可)
  • 上限年齢:62歳未満まで継続任用
 
招集区分 防衛招集、国民保護等招集、治安招集、災害等招集、訓練招集 防衛招集、国民保護等招集、災害招集、訓練招集 教育訓練招集
訓練/教育訓練日数 30日間/年
  • 5日間/年(自衛隊法上は20日以内/年)
  • ※一般公募予備自から即自への志願者
    軽火器:36日間/3年以内
    迫撃砲:39日間/3年以内
  • 一般:50日間/3年以内
  • 技能:10日間/2年以内
処遇
  • 即応予備自衛官手当:16,000円/月
  • 訓練招集手当:10,400円~14,200円/日
  • 勤続報奨金:120,000円/1任期(3年)
  • 予備自衛官手当:4,000円/月
  • 訓練招集手当:8,100円/日
  • ※予備自衛官補出身者の即応予備自衛官になるための訓練における訓練招集手当は8,300円/日
  • 教育訓練招集手当:8,200円/日
  • ※令和元年度以前の採用試験合格者は7,900円/日
防衛招集等により自衛官になった場合は、常備自衛官と同様の給与を支給  
雇用企業への給付金 即応予備自衛官雇用企業給付金
42,500円/月(年間51万円)
即応予備自衛官育成協力企業給付金
一般公募予備自が即自に任用された場合:56万円
 
雇用企業協力確保給付金 34,000円/日  

※自衛官未経験者が対象

2.どのようなときに、どのような活動をするの?

例えば、東日本大震災などの大規模災害での救助・支援活動

災害が発生したとき、被災地で救助活動をする自衛隊の姿をニュースなどで目にしたことがあるでしょう。即応予備自衛官及び予備自衛官は、災害が発生し、被災者の救助・救援活動が必要になったときなどに招集され、活動します。

例えば、未曾有の大災害となった平成23年3月の東日本大震災。被災地では、被災者の救助活動や食料の輸送、給水や入浴の生活支援などに、大きな自衛隊の力が必要とされました。

発災当日の平成23年3月11日に約8,400人が動員されたのを始めとして、3月13日には動員数が約5万人に上り、最も多いときは陸海空合わせて約22万人のほぼ半数にあたる約10万7千人の自衛官が、人命救助や輸送支援、給水・給食などの生活支援そして原子力災害への対応などに携わりました。その中で、即応予備自衛官及び予備自衛官も活動にあたりました。

即応予備自衛官は、主に被災三県の沿岸地域に派遣され、給水支援や入浴支援、物資輸送などの生活支援活動にあたるとともに、捜索活動にも携わりました。一方、予備自衛官は、救援活動に携わる米軍の通訳、医療、そして部隊の活動の拠点となった駐屯地における業務などにあたりました。

東日本大震災における災害招集では、即応予備自衛官は延べ2,179人(実人数1,369人)、予備自衛官は陸海空自衛隊合計で延べ469人(実人数293人)をそれぞれ招集しました。

東日本大震災のほかにも、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震で即応予備自衛官が、令和元年東日本台風(台風第19号)、令和2年7月豪雨で即応予備自衛官及び予備自衛官が招集され、物資輸送や生活支援活動などに従事しました。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のための災害派遣(令和2年2月~3月)では、医師、看護師の資格を有する予備自衛官を招集し、自衛隊病院などにおいて医療支援などの任務にあたりました。

(1)
(2)
(3)
(写真:(1)東日本大震災における災害派遣活動、(2)新型コロナウイルス感染拡大防止のための災害派遣における予備自衛官の活動、(3)令和2年7月豪雨における予備自衛官の活動/写真提供:防衛省)

3.「即応予備自衛官」と「予備自衛官」の違いは?

“即戦力”の「即応予備自衛官」、後方支援を担う「予備自衛官」

即応予備自衛官及び予備自衛官の役割や応募資格は次のように異なります。

◆即応予備自衛官

防衛招集や災害招集などを受けた際、あらかじめ指定された部隊において、現職の自衛官とともに第一線部隊の一員として常備自衛官と同様の任務にあたります。
即戦力としての役割が期待されることから、「年間30日の訓練を受けること」が求められています。
応募資格については、以前は、「1年以上の自衛隊勤務経験を持ち、退職後1年未満の元陸上自衛官または陸上自衛隊の予備自衛官であること」とされていましたが、平成31年4月より、自衛隊勤務経験のない方についても、即応予備自衛官への任用が可能となりました(後述)。

即応予備自衛官の訓練内容の一例

(資料・写真:防衛省)

◆予備自衛官

防衛招集や災害招集などを受けた際、主に第一線の部隊が出動した後の駐屯地警備、避難住民の救援や誘導、災害救助活動などの任務にあたります。
「予備自衛官」は、自衛官経験のある方もない方も対象となりますが、自衛官経験のない方については、まず予備自衛官補として所定の教育訓練を受けた後、任用されます(後述)。また、通常、年間5日間の訓練を受けることになります。

予備自衛官「5日間訓練」の例(訓練パターン)

(資料・写真:防衛省)

4.未経験者も応募できる「予備自衛官補」とは?

教育訓練を受け、予備自衛官を目指す

予備自衛官補は、主に自衛官未経験者を対象とした制度です。
2つのコースがあり、応募資格は「一般」は18歳以上34歳未満、特定の技能や資格を生かせる「技能」は18歳以上で、保有する技能資格に応じて53歳から55歳未満までの年齢制限があります。
「技能」コースの対象となる技能資格には、医師、薬剤師、自動車整備士、システムアナリスト、建築士などのほか、外国語の知識・技能や弁護士、司法書士などが含まれています。

予備自衛官補の採用資格と採用試験等

  採用年齢
一般 18歳以上34歳未満
技能 18歳以上で、保有する技能に応じ53~55歳未満
技能区分 技能の資格
衛生 医師、歯科医師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、診療放射線技師、臨床検査技師、看護師、救急救命士(准看護師の資格を併せて保有する者)、栄養士、准看護師、歯科衛生士、歯科技工士
語学 英語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語
整備 1級大型または小型自動車整備士、1級または2級二輪自動車整備士、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士
情報処理 システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、テクニカルエンジニア 等
通信 総合無線通信士、陸上無線技術士、第1種工事担任者 等
電気 第1種、第2種または第3種電気主任技術者
建設 1級または2級建築士、測量士、測量士補、1級または2級建設機械施工技士、木造建築士、1級または2級建築施工管理技士、1級または2級土木施工管理技士、1級または2級管工事施工管理技士
放射線管理 第1種または第2種放射線取扱主任者
法務 弁護士、司法書士
人事 遺体衛生保全士(エンバーマー)、納棺士
海上自衛隊予備自衛官補(技能) 1級海技士(航海)、1級海技士(機関)、2級海技士(航海)、2級海技士(機関)、3級海技士(航海)、3級海技士(機関)、4級海技士(航海)、4級海技士(機関)、5級海技士(航海)、5級海技士(機関)
  試験種目
一般 筆記試験(教養試験、作文)、口述試験、適性検査および身体検査
技能 筆記試験(小論文)、口述試験、適性検査及び身体検査
試験会場
一般 各都道府県1か所以上で実施
技能(陸上) 北海道札幌市、宮城県仙台市、東京都練馬区、兵庫県伊丹市、熊本県熊本市等
技能(海上) 大湊、横須賀、舞鶴、呉、佐世保の各地方隊警備区内

予備自衛官補の場合、招集は教育訓練のみです。「一般」は3年以内に50日、「技能」は2年以内に10日の教育訓練を受けて、予備自衛官として必要な知識・技能を修得します。教育訓練は、教育部隊のある駐屯地に宿泊して行われます。訓練日程は年間複数回が準備されているため、仕事などの都合に合わせて選ぶことができますが、各回とも5日間連続して参加することになります。
また、予備自衛官補の身分は非常勤の特別職国家公務員となり、教育訓練に参加した場合、教育訓練招集手当や旅費が支給されます。
教育訓練のすべてを修了すると、修了の翌日に「予備自衛官」として任用されます。さらに、平成31年4月より、自衛官としての経験がなくとも予備自衛官補の「一般」から任用された予備自衛官が所定の教育訓練を修了することにより「即応予備自衛官」として任用することが可能となりました。
予備自衛官補は、平成14年度から募集が開始されましたが、すでに予備自衛官補から予備自衛官に採用された方(「公募予備自衛官」と呼びます)は、予備自衛官全体の約10%を占めています。公募予備自衛官は、特定の技能を保有する方が多いため、元自衛官の予備自衛官だけでなく、現場の自衛官にもよい刺激を与え、組織の活性化にもつながっています。

予備自衛官補「一般」の教育訓練パターンの例

予備自衛官補「技能」の教育訓練パターンの例


(資料:防衛省)

予備自衛官等の募集や訓練について、詳しく知りたい場合は最寄りの自衛隊地方協力本部までお問い合わせください。自衛隊地方協力本部では、各地域に密着した窓口として、自衛隊の訓練・施設見学や自衛官等の採用試験、退職予定自衛官の就職援護など自衛隊に対する様々な質問・相談に応じていますので、お気軽にお問い合わせください。
自衛隊地方協力本部一覧

5.雇用企業の皆さまへ

雇用企業協力確保給付金、即応予備自衛官雇用企業給付金、即応予備自衛官育成協力企業給付金制度があります

予備自衛官または即応予備自衛官が、防衛招集や、災害招集などを受けた際には、勤務先を離れることとなります。この際の企業における事業の継続に伴う負担を考慮するため、「雇用企業協力確保給付金」という制度が設けられています。

即応予備自衛官は、年間の訓練日数が多いことから、勤務先の理解を得ることが重要になります。そこで、即応予備自衛官を雇用する企業などの負担に報いるとともに、即応予備自衛官本人が訓練招集や災害等招集に出頭しやすい環境を整えるため、「即応予備自衛官雇用企業給付金」という制度が設けられています。

自衛官経験のない予備自衛官が即応予備自衛官になるためには、約40日間の訓練が必要になります。このため、予備自衛官の雇用主の方々のご理解ご協力を得ることが重要であることから、「即応予備自衛官育成協力企業給付金」という制度が設けられています。

(取材協力:防衛省 文責:政府広報オンライン)

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