山の事故を防ごう!登山を楽しむために知っておきたい安全対策

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安全対策の上、山のレジャーを楽しむ家族

Point
近年のアウトドアブームで、登山を始めたかたや、山のレジャーを楽しむ機会が増えたかたも多いでしょう。自然に親しむ山のレジャーは心身のリフレッシュができますが、一方で、山では季節を問わず、年間を通じ多くの事故が発生しています。山のレジャーを安全に楽しんでいただけるよう、「山の事故」を防ぐ6つのポイントをまとめましたので、是非、参考にしてください。

1「山の事故」の現状

「山の事故」について警察庁が発表したデータを見ると、令和4年(2022年)には3,015件・3,506人の山岳遭難が発生しています。そのうち死者・行方不明者は327人でした。 令和4年(2022年)は、発生件数、遭難者数のいずれも過去最多となっています。

山岳遭難者を年齢層別に見ると、60歳以上が全遭難者の50.7%を占めています(グラフ①)。そして死者・行方不明者においては、60歳以上が70.6%にはね上がります(グラフ②)。加齢とともに体力が低下することは否めません。自分の体力に合った登山計画を立てるなど、無理をしないことが重要です。

グラフ① 令和4年山岳遭難者(3,506人)の年齢層別構成比

山岳遭難者の年齢層別構成比のグラフ。内訳は本文に記載。

資料:警察庁「令和4年における山岳遭難の概況」から政府広報室作成

グラフ② 令和4年 山岳遭難者のうち死者・行方不明者(327人)の年齢層別構成比

山岳遭難者のうち死者・行方不明者の年齢層別構成比のグラフ。内訳は本文に記載。

資料:警察庁「令和4年における山岳遭難の概況」から政府広報室作成

遭難の態様別に見ると、1位「道迷い」が全体の36.5%、次いで「転倒」(17.2%)、「滑落」(16.5%)となっています(グラフ③)。

グラフ③令和4年 山岳遭難者(3,506人)の態様別構成比

山岳遭難の態様別構成比のグラフ。「道迷い」が全体の1/3以上を占めている。

資料:警察庁「令和4年における山岳遭難の概況」から政府広報室作成

遭難者の約半数は無事に救出されていますが、行方不明になったり、亡くなったりするケースも少なくありません。特に単独登山で遭難した場合、複数登山に比べて行方不明や死亡となる割合が高くなっています。

グラフ④ 単独登山者及び複数登山者の遭難状況

令和4年における単独登山者及び複数登山者の遭難状況のグラフ。全体のうち「死者・行方不明者」が単独登山者では14.4%、複数登山遭難者では約6%を占めています。

資料:警察庁「令和4年における山岳遭難の概況」から政府広報室作成

近年、登山道の整備や登山装備の進歩もあって、誰もが気軽に登山を楽しむことができるようになりましたが、山という自然を甘く見てはいけません。今一度、安全に登山を楽しむためのポイントをしっかり押さえておきましょう。

2「山の事故」を防ぐ6つのポイント

山の事故から命を守るためには、次の6つのポイントを徹底することが「自己救命策」となります。

(1)事前の情報収集を万全に

登山など山のレジャーを安全に楽しむためには、事前の情報収集が大切です。登山する山の地形や登山道、過去の事故情報などを把握し、装備や服装・ルート選び・スケジュール作成の参考にしましょう。

また、登山中に天候が崩れると、事故の可能性が高まります。登山の予定を立てる際には、天気予報を確認し、天候不良が予測される場合は中止・延期をお勧めします。山の天候は変わりやすいので、当日の天気予報をチェックするのはもちろん、登山中も携帯ラジオなどでこまめに気象情報をチェックしましょう。

(2)無理のない登山計画を

安全な登山は、どの山に登るかという計画から始まります。登山者の体力や体調、登山の経験や技量などに見合った山やコースを選びましょう。
コース選定と併せて、滑落などの危険箇所や、山小屋などの宿泊施設・避難施設がどこにあるのか、営業しているのかなど、事前によく調べ、回避コースを含めて十分に把握することが重要です。

登山コースを決めたら、自分の体力では下山までに何時間掛かるかをシミュレーションしてください。疲れすぎないよう、適宜、休憩をとることも考慮しながら、時間にゆとりをもった無理のないスケジュールを立てることが大切です。日没が近づくと山道は急に暗くなるので、明るいうちに下山できるようなスケジュールにしましょう。

登山コースの選定と併せて危険箇所や、山小屋などの宿泊施設などを事前に確認する登山者

(3)登山計画書の作成、提出

登山計画を立てたら、登山者の氏名や連絡先、日程やコースなどを「登山計画書※」にまとめ、登山口などに設置されている「登山届ポスト」、自治体、山を管轄する都道府県警察などに提出しておきましょう。また、登山計画書は、家族や職場などにも共有しておき、万一の場合の素早い捜索救助の手掛かりとなるよう備えましょう。
※登山計画書は、登山届・入山届・登山者カードなどとも呼ばれます。

最近では、インターネットによる登山計画書の作成・提出サービスも用意されていますので、ご活用ください。

登山計画書を提出することで、万一遭難した際に捜索の手掛かりとなり、迅速な救助につながります。これまでも登山計画書を提出していたことで、命拾いをしたという例が数多くあります。また、登山計画書を作成することが、計画を見直す機会にもなり、山岳遭難の防止にもつながります。
山岳遭難は低い山でも発生していますので、登る山の標高にかかわらず、登山計画書の作成・提出を徹底しましょう。また、提出先には下山の報告を忘れないよう心掛けましょう。

登山計画書にまとめる主な内容

登山計画書は特に決まった様式・書式はありません。代表的な記載例などは、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会などのサイトに掲載されています。

  • パーティーの名称及び所在地
  • 緊急の連絡先及び氏名
  • 登山の目的
  • 目的の山域や山の名称
  • 登山の期間
  • 日程、行動予定(コースの概念図も添える)
  • 参加者名簿(氏名、生年月日、住所、緊急連絡先、血液型など)
  • 装備や食糧などのリスト
  • 持参する通信手段(携帯電話番号、無線のコールサインなど) など

(4)服装、地図、通信手段など万全の装備を

登山に適した装備は、登山をする時期や、山の気候、登山の行程(日帰りか宿泊か)などによって異なります。登山計画を基に、どのような装備が必要かを考え、万全の準備で登山に臨みましょう。

服装、装備

山の天気は変わりやすく、雨風に当たれば体が冷え低体温症になるおそれもあります。服装は気温や天候などに合わせて着脱しやすいものを選びましょう。雨具(レインウェア)や防寒具も必須です。
靴は、登山予定の山の気候に合った登山靴やトレッキングシューズなど歩きやすいものを用意し、体力に不安のあるかたはトレッキングポールなどもお勧めです。
このほか、日差し除けや雨除けのための帽子、けが防止のための手袋、救急用具、水や非常食、ヘッドランプといった装備もお忘れなく。

地図、コンパス

道迷いなどによる山岳遭難を防ぐために、地図とコンパスを持参するほか、スマートフォン用登山地図アプリを併用することも重要です。

携帯電話や無線機など通信手段

万一遭難した場合に助けを呼べるよう、携帯電話や無線機などの通信手段を予備バッテリーも含めて必ず携行しましょう。携帯電話などにGPS機能が付いていれば、自分の現在地を正確に救助機関に伝えることができ、速やかな救助につながる可能性が高まります。ただし、多くの山岳では通話エリアが限られることやバッテリーの残量にも注意が必要です。

事前の情報収集に基づき、必要な装備を考える登山者

(5)冷静な状況判断と慎重な行動を

山岳避難の大きな要因として、天候の急変や不十分な装備で体力的に無理な計画を決行してしまったことなどが挙げられます。事前に天候情報を確認していても、当日や登山中になって悪天候になることもあり得ますし、前日まで健康だったとしても、疲労や病気などで体調不良になることも考えられます。
そうした場合、予定しているからといって、無理に登山を続けるのは非常に危険です。状況を冷静に判断して、早めに中止するか、引き返すよう努めましょう。

天候が急変し、引き返す登山者

(6)下山のときこそ細心の注意を!

登山において最も注意しないといけないのが下山です。遭難事故は下山時に多く起きています。下山では足腰に疲労がたまるため、転倒や滑落の危険が高まります。足元に注意をしながらゆっくり、慎重に進むことを心掛けましょう。
また、道迷いにも気を付けなければいけません。下ばかり見て進んでしまうと、登山道にある看板などを見落として間違った道に入ってしまう危険性があります。もし、道に迷ってしまったら、そのまま下山をするのではなく、元の道に引き返すようにしましょう。道に迷ったまま下山し、視界が開けた場所に進んだと思って、崖から転落するなどの事故も発生しています。正規の登山道に戻れない場合は、木々のない開けた場所や尾根など救助隊に見つけてもらいやすい場所で体力を温存して待機するようにしましょう。

3万一、遭難したときは?

救助を必要とする場合の通報先は、110番又は119番です。一刻を争う場合、ヘリコプターでの捜索・救助活動が必要になることもあります。提出された登山計画書や、避難場所のGPS位置情報があれば、より速やかに捜索場所を絞り込むことができます。
ただし、救助要請があっても、遭難した場所の地形や気象条件によっては、ヘリコプターでの救助が行えない場合もあります。

また、令和5年(2023年)4月から、音声だけでは把握が難しい事件・事故などの現場の状況を、スマートフォンなどにより撮影して警察に通報ができる「110番映像通報システム」が本格運用されています。通報者が送信した現在地の画像の景色などから遭難者の居場所を特定し、迅速な捜索や救助につながったケースもあり、山岳遭難の救助に役立っています。

「110番映像通報システム」の詳細については、下記の警察庁のウェブサイトをご覧ください。

「110番映像通報システム」の使用方法イメージ。110番通報すると、警察の通信指令室より送信されたURLを通じて、スマートフォンなどで撮影した映像を送信することができ、捜索を行う警察官に画像や映像が共有されます。

まとめ

山では60歳以上のかたを中心に山岳遭難が多発していますので、事前に安全対策のポイントを押さえておきましょう。また、季節を問わず、年間を通じ事故が発生していますので、それぞれの季節ごとの注意点も頭に入れておくと良いでしょう。

(取材協力:警察庁 文責:政府広報オンライン)

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