火山灰が降る地域と量を迅速に予報する「降灰予報」

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火山灰が降る地域に加えて、量についても迅速に予報する 「降灰予報」がバージョンアップ!

火山現象の中で噴石や火砕流の恐ろしさは広く知られていますが、火山灰も大きな被害を起こすことがあります。火山灰は噴火した火山から遠く離れた地域にまで広がり、交通障害や停電を引き起こしたり、農業や商工業に影響を与えたり、健康被害を招いたりすることがあります。こうした降灰被害の予防・軽減に役立てるため、気象庁は従来の「降灰(こうはい)予報」を改良し、火山灰が降る地域に加えて、平成27年(2015年)3月からは積もる量などの情報も提供することになりました。

1日本に活火山はいくつあるの?全国に111の活火山が。中には、今後100年以内に噴火する可能性があるものも

活火山とは、おおむね過去1万年以内に噴火した火山や、現在も活発な噴気活動のある火山のことです。現在、日本全国にある活火山は、近畿、四国を除くほぼ全国に分布しており、総数は111とされています(令和6年(2024年)年3月現在)。

よく知られている活火山としては、阿蘇山や桜島など、ほぼ常に噴煙を上げ、しばしば噴火を起こしている活火山があります。伊豆大島(三原山)や雲仙岳(普賢岳)、三宅島(雄山)、有珠山そして御嶽山のように、ここ半世紀の間に多数の避難者や死傷・行方不明者を伴う噴火災害を起こした活火山もあります。また、富士山のように、長期間大きな火山活動が見られない活火山もあります。

なお十和田のように現在は湖や湾となっていても、かつての大きな噴火でできたカルデラ地形を示していたり、伊豆東部火山群のように、市街地沿岸の海底で噴火したことのある活火山もあります。
111の活火山のうち50の活火山については、今後およそ100年の間に噴火の可能性があり、その噴火による社会的影響があるとして、気象庁では地震計などを設置して24時間体制で常時監視しています。

我が国では、これほど多くの活火山が、大小の都市からそう遠くないところにあり、登山や観光などで多くの人々に親しまれているのです。それだけに、活火山の噴火により、深刻な災害が引き起こされる可能性は、常にあるのです。

図:日本の活火山

日本全国111の活火山の分布図

画像をクリックすると拡大します
(資料:気象庁)

気象庁「活火山とは」

2火山灰はどんな被害をもたらすの?広い地域の交通機関や農作物、ライフラインに影響するほか健康被害のおそれも!

噴火に伴って災害を引き起こす火山現象には、大きな噴石や融雪型火山泥流、火砕流など様々なものがあります(詳細は5章に)。これらの現象ほど生命に対する危険性が高いものではないものの、もう一つ、大きな被害をもたらすおそれのあるのが、火山灰です。

噴火により噴出する固形物には、風の影響を受けず弾道を描いて飛散する「大きな噴石」、遠くまで風に流されて降る「小さな噴石」や「火山灰」などがあります。
この中で火山灰は直径2㎜未満の小さな粒子ですが、1回の噴火で何万トンから何十万トン、さらにはそれ以上という膨大な量が噴出し、風に乗って遠くまで届いて広い地域に降り積もり(これを「降灰(こうはい)」といいます。)、さまざまな被害をもたらします。

例えば空中を浮遊する火山灰は、飛行中の航空機の窓ガラスを傷つけ前が見えなくなったり、エンジンに吸い込まれて損傷(最悪、停止)させたりする危険があります。
地上に降り積もる火山灰は、視界を悪くして交通を妨げます。例えば道路に積もるとわずか0.5mmの厚さでもセンターラインなどが見えにくくなったり、スリップしやすくなったりします。火山灰が雨を含んで電線に付着すると、その重さのために電線が切れたり、導電性が高まるので漏電などを起こして送配電機器を故障させたりして、停電を引き起こすことがあります。停電が商業や工業、医療や生活など非常に広い範囲に影響することは言うまでもありません。火山灰が人の目に入ったり、多量に吸い込んだりすると、健康被害につながるおそれもあります。
そして、積もった火山灰を取り除き、処分するための手間や費用負担も発生します。111もの活火山を持つ我が国では、降灰に対する備えをすることは、重要な防災・減災対策の一つなのです。

降灰による主な影響
交通 視界不良により航空機や鉄道、自動車の運行に支障が生じる
航空機などのエンジンが火山灰を吸い込み故障する
鉄道のレールに堆積した火山灰のために車輪やレールが導電不良となって信号や踏切が障害を起こす
道路に堆積した火山灰のために自動車がスリップする
火山灰の粒子により車のフロントガラスなどが損傷する

(写真提供:鹿児島市)

(写真提供:気象庁)
ライフライン 火山灰の重みで電線が切れたり、雨を含み漏電を起こして送電設備が故障したりして、停電が起きる
浄水・配水など水道施設への降灰のため給水などに支障が生じる
商工業 商品の上に火山灰が積もる
内部に火山灰が侵入することでコンピュータや精密機器が故障する
交通機関のマヒや農作物への影響により商品供給に支障が出る
停電や給水停止などにより、商工業活動の全般に支障が出る
農林水産業 露地栽培の作物に火山灰や小さな噴石が積もり、商品価値を損なう
日照の減少などにより農作物が生育不良になる
火山灰の重みでビニールハウスが損傷する


(写真提供:鹿児島市)
自然環境 川などへの降灰により水質が悪化して、水中生物等が死ぬ
海中への降灰により、サンゴなどの底生・付着性生物が死ぬ
健康 目、鼻、のど、気管支に異常が起きる
ぜん息の症状の悪化や呼吸器疾患が発生する
生活 堆積した灰の重みで屋根が崩れる
小さな噴石によりスレート屋根や太陽電池パネルなどが破損する

3降灰予報ってどんな情報なの?噴火前・噴火直後・噴火後の3段階で、降灰が予想される地域、量などを発表

降灰対策に役立てるため、気象庁では平成20年(2008年)3月に「降灰予報」の運用を開始しました。平成27年(2015年)3月からは、降灰が予想される地域(市町村)に加えて、それぞれの地域で予想される降灰の量についても予想して発表しています。

降灰量に関する情報は、利用者に分かりやすいよう、降り積もった際の厚さによって「多量(1mm以上)」「やや多量(0.1mmから1mm)」「少量(0.1mm未満)」の3階級で表現されます(参考:4章の表「降灰量に応じた『とるべき行動』の例」)。

降灰予報は、噴火前、噴火直後、噴火後の3段階に分けて発表されます。

具体的には、噴火警報発表中の火山で、噴火により人々の生活に影響を及ぼす降灰が予想される場合に、(1)事前に噴火規模や気象条件などを想定し、それを踏まえて噴火時の降灰をシミュレーションして「降灰予報(定時)」を発表します。そして、(2)実際に噴火したら5分から10分程度で「降灰予報(速報)」を発表します。次いで(3)実際の噴火規模や気象条件などの観測データを踏まえて計算し、噴火後20分から30分程度に「降灰予報(詳細)」を出します。

これらの降灰予報は、気象庁ウェブサイト内の「降灰予報」などで確認できるほか、気象庁から報道機関などに情報提供されますので、テレビやラジオなどにもご注意ください。

3段階の降灰予報

(1)降灰予報(定時)
噴火警報発表中の火山で、噴火により人々の生活に影響を及ぼす降灰が予想される火山について発表されます。一定規模の噴火をすると仮定してシミュレーションを行った結果にもとづいて、噴火した場合に噴火後18時間先(3時間区切り)までに予想される降灰範囲や小さな噴石の落下範囲の情報を発表します。
噴火に備えて計画的に準備するための情報です。

(2)降灰予報(速報)
噴火による降灰量が一定の基準(降灰予報(定時)発表中の火山では「やや多量」以上の降灰)を超えることが予想されたとき、噴火後速やかに(5分から10分程度)発表されます。噴火から1時間先までに予想される降灰量分布や小さな噴石の落下範囲を提供します。
噴火後、事前に準備した降灰対策にすぐに取りかかれるようにするための情報です。

(3)降灰予報(詳細)
噴火による降灰量が一定の基準(降灰予報(定時)発表中の火山では「やや多量」以上の降灰)を超えることが予想されたときに発表されます。噴火後、実際に観測して得た情報を用いてより精度の高い計算を行い、その結果を踏まえて噴火後20分から30分程度で発表します。
噴火から6時間先まで1時間区切りで、予想される降灰量分布や降灰開始時刻についての情報を提供します。
降灰量など、詳細な観測結果に応じて適切な対応をとれるようにするための情報です。

4降灰予報を見聞きしたら、どうすればいいの?窓を閉める、マスクをする、多量の降灰が予想されるときは外出・運転を控えるなどの対策を

テレビ、ラジオなどのマスメディアや、気象庁ウェブサイト内「降灰予報」などから、お近くの活火山の噴火警戒レベルが上げられたことや降灰予報が出たことを見聞きしたら、次のような点に注意して被害の予防や軽減につなげましょう。

テレビで降灰予報を見ているイラスト

利活用のイメージ

【噴火前】 【噴火直後】 【噴火後】

テレビの天気予報などでその日の降灰範囲を確認

ラジオや気象庁ウェブサイトなどで小さな噴石の落下範囲を知る

気象庁ウェブサイトなどで6時間先までの降灰量を確認

降灰に備え、窓を閉め、外出時は傘やマスクを用意する

速やかに頑丈な建物の中に退避

やや多量の降灰が予想されるため、なるべく外出を控える。どうしても外出する時は傘やマスクを用いる。

気象庁では、降灰量に応じてとるべき行動を、一覧表にしてウェブサイトリーフレットで情報提供しています。降灰予報を見聞きしたときの防災対策の参考にしてください。

また、農業をはじめ物流、流通、製造など、各分野でも、それぞれに防災・減災対策を立てる際の参考にして、被害の軽減や早期復旧できる体制づくりに役立ててください。

降灰量に応じたとるべき行動の例

階級 降灰の厚さ 路面や視界のイメージ とるべき行動の例

多量

1mm以上

路面が完全に火山灰で覆われ、視界不良となる

外出を控える
運転を控える

やや多量

0.1mmから1mm

火山灰が降っているのが明らかに分かり、道路の白線は見えにくくなる

マスクなどで防御する
徐行運転する

少量

0.1mm未満

火山灰が降っているのがようやく分かり、うっすら積もる程度

窓を閉める
自動車のフロントガラスなどから灰を取り除く

(写真提供:鹿児島市、気象庁)

5降灰予報のほかに、どんな火山情報があるの?噴火警報・予報や火山活動の状況など、気象庁は様々な火山防災情報を発表しています

災害を引き起こす火山現象には、火山灰のほかに下の表のように、噴石、火砕流、溶岩流、火山ガスなどさまざまなものがあります。それらによる被災範囲は火山灰と異なりおおむね噴火した活火山やその周辺にとどまりますが、登山者や観光客が死傷したり建造物が破壊されたりするなど、しばしば深刻な被害を引き起こします。

火山噴火による主な災害

大きな噴石 爆発的な噴火によって火口から吹き飛ばされる概ね20cmから30cm以上の大きな岩石など。被害は火口周辺の2kmから4km以内に限られるが、大きな噴石の飛散で登山者などが死傷したり建造物が破壊されたりする災害が発生。
溶岩流 マグマが火口から噴出して地表を流れ下るもの。溶岩流が流れた場所は建物、道路、農耕地、森林、集落を焼失、埋没させる。なお、地形や溶岩の温度などによるが、流れ下る速度が比較的遅いことから、人の足による避難が可能。
火砕流 高温の火山灰や岩石の塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山の斜面を流れ下る現象。流下速度は時速数十kmから百数十km、温度は数百℃にも達し、通過域を焼失、埋没させるなど、破壊力が大きい。噴火警報などを活用した事前の避難が必要。
融雪型火山泥流 積雪期の火山噴火で、火砕流などの熱によって斜面の雪が融かされて大量の水が発生し、周辺の土砂や岩石を巻き込みながら高速で流れ下る現象。流下速度は時速60kmを超えることもあり、谷筋や沢沿いをはるか遠方まで一気に流下し、広範囲に被害を及ぼす。積雪期に噴火があったら、ただちに警戒・避難することが必要。
小さな噴石・火山灰 噴火により噴出した小さな固形物のうち直径2mm以上のものを小さな噴石(火山れき)、直径2mm未満のものを火山灰という。小さな噴石や火山灰は、火口から10km以上遠方まで(火山灰は数十kmから数百km以上)風に流され、広域に降下・堆積し、農作物の被害、交通障害、家屋倒壊、航空機のエンジントラブルなど広く社会生活に深刻な影響を及ぼすことがある。
火山ガス マグマに溶けている水蒸気や二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの様々な成分が、気体となって放出されるもの。ガスの成分によっては人体に悪影響を及ぼす。
火山噴火に伴う
堆積物による土石流や泥流
噴石や火山灰が堆積しているところでは、数ミリ程度の雨でも土石流や泥流が発生しやすくなる。土石流や泥流は、高速で斜面を流れ下り、下流に大きな被害をもたらす。
噴火後に雨が予想されるときは、川の近くや谷の出口に近づかないようにする。

(上の表の参考:気象庁「主な火山災害」

このような火山災害の軽減を図るために、気象庁では、全国の火山の活動状況を監視し、その情報をもとに次表のような火山防災情報を発表しています。
これらの情報は随時、気象庁のウェブサイト内「各火山の活動状況」のページなどで公表されますので、登山や観光、静養そして仕事などのために活火山やその周辺に近づく際は、事前にその活火山について警報や予報が発表されているか、あるいはどのような火山活動が観測されているか、などを確認することをお奨めします。

気象庁が発表する、降灰予報以外の火山防災情報

噴火警報・噴火予報 全国111の活火山を対象として、噴火警報・予報を発表しています。
噴火警報は、生命に危険を及ぼす火山現象(大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流等、発生から短時間で火口周辺や居住地域に到達し、避難までの時間的猶予がほとんどない現象)の発生やその拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」(生命に危険を及ぼす範囲)を明示して発表します。また、噴火警報を解除する場合等には噴火予報を発表します。
噴火警報・予報が発表され、噴火想定に基づく地元自治体の避難計画が策定された活火山ごとに、「噴火警戒レベル」を発表します。これは、「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき行動」を「レベル1・活火山であることに留意」から「レベル5・避難」までの5段階で示す指標で、50の常時観測活火山のうち、49火山(令和6年(2024年)3月現在)で運用されています。
噴火速報 火山が噴火したことを端的にいち早く伝え、身を守るための行動をとっていただくために発表する情報
火山の状況に関する解説情報(臨時) 噴火警戒レベルの引上げ基準に達していないが、火山活動の推移によっては噴火警戒レベルの可能性がある場合等に発表する情報
火山の状況に関する解説情報 噴火警戒レベルを引き上げる可能性は低いが、火山活動に変化がみられる時などに、火山活動の状況について発表する情報
火山活動解説資料 地図や図表を用いて、火山の活動の状況や警戒事項について、定期的または必要に応じて臨時に解説する資料
月間火山概況 前月1か月間の火山活動の状況や警戒事項をとりまとめた資料
地震・火山月報(防災編) 月ごとの地震・火山に関連した各種防災情報や地震・火山活動に関する分析結果をまとめた資料
噴火に関する火山観測報 噴火が発生したときに、発生時刻や噴煙高度などをお知らせする情報
火山ガス予報 居住地域に長期間影響するような多量の火山ガスの放出がある場合に、火山ガスの濃度が高まる可能性のある地域をお知らせする情報

(資料:気象庁「気象庁が発表する火山に関する情報や資料の解説」

噴火予測と火山防災情報

考古データや地質・地形データからみて、日本列島では、大規模噴火が過去に繰り返し発生したことが明らかになっています。しかしそうした大規模噴火は、発生頻度が低く、その間隔は人間の生活時間に比べて非常に長いのが特徴です。そのため、将来の噴火の時期や規模を予測することは困難です。

一方、火山のうち活動が活発な活火山については、観測点の高密度化、観測内容の高精度化や多項目化が進んでいます。その結果、近代的観測網が整備されたいくつかの活火山については、活動特性の理解が進み、噴火発生予測の手がかりとなる経験や知見が蓄積されています。しかし、同じ活火山でも常に一定の規模・期間で噴火するとは限らないため、噴火する時期や期間、規模などの詳細を正確に予測することは困難です。そうした特性を踏まえたうえで、火山防災情報をご活用ください。

(取材協力:気象庁 文責:政府広報オンライン)

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