法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」

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イラスト:トラブルを解決し、握手をする二人の当事者と、間に入って解決の支援をしたADR事業者の男性。

会社が給料を払ってくれない、隣家の騒音に悩まされている、といった身近なトラブルを解決したいが、裁判にはしたくないという場合には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」の利用を考えてはいかがでしょうか。ADRは、裁判所が行うほかに、民間事業者が実施するものもあります。この民間事業者が実施するADRを選ぶときに役立てていただきたいのが、「かいけつサポート(認証紛争解決サービス)」のロゴマークです。これは、法律で定められた基準をクリアして法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者であることを示しています。

1ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

裁判によらず公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続です。
身の周りで起こる様々なトラブルの中には、裁判できちんと白黒の決着をつけたいというものもあれば、なるべく当事者同士の話し合いで解決したいというものもあります。また、トラブルを解決したいのはやまやまだけれども、裁判をするとなると、内密にしておきたい情報まで法廷で公開しなければならないのがイヤだ、という場合もあるかもしれません。
そのようなとき、裁判以外の方法でトラブル解決を図れる「ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)」という方法があります。

ADRは、民事上のトラブルについて、当事者と利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分をよく聴きながら専門家としての知見を活かして、当事者同士の話し合いを支援し、合意による紛争解決を図るものです。

ADRの手続の一般的な流れは、次のようになります。

(1)ADRを利用したい人(申立者)がADR事業者に申し立てを行う
※申立の内容が、話し合いによる解決の手続を行うのに適さない場合などは、受理されないこともある。

(2)ADR事業者は、申立を受理すると、ADR手続の開始について、相手方に連絡する

(3)相手方がADR手続の開始に合意すると、ADR事業者により選任された手続実施者(調停人・あっせん人などと呼ばれる人)が間に入って、申立者と相手方が話し合いを行う
※相手方がADR手続の開始に応じないと、ADR手続は行われない。

(4)申立者と相手方双方が合意すれば、ADR手続は終了する
※合意が成立しない場合、ADR手続は不成立となる。

一般的にADRには、「民事調停」や「家事調停」、「裁判上の和解」など裁判所が行うもの(司法型ADR)、公害等調整委員会や国民生活センターの紛争解決委員会などの行政機関・行政関連機関が行うもの(行政型ADR)のほかに、本稿でご紹介する、民間のADR事業者が行うもの(民間型ADR)があります。
民間ADR事業者には、地域の弁護士会や司法書士会といった士業団体のほか、家電製品や自動車、ソフトウェアなどの業界団体や消費者団体、NPO法人などがあり、各分野の専門的知見を利用できることが特徴です。

例えば、隣家との土地境界に関するトラブルには不動産に詳しい民間ADR事業者(土地家屋調査士会など)がありますし、労働・雇用についてのトラブルには労務に詳しい民間ADR事業者(社会保険労務士会など)があります。また、ソフトウェアの著作権や特許権に関するトラブルについては、ソフトウェア分野に知見を持つ民間ADR事業者があります。

なお、ADRの対象となるトラブルは、話し合いによって解決することができる民事に関する法的トラブルです。それ以外のトラブルは、ADRによる解決が望めないことがあります。また、ADRを利用してもトラブルの当事者同士で合意ができず、トラブルが解決しないこともあります。

イラスト:お金の貸し借りのトラブル。貸した側の男性が借金の返済を求めるが、借りたほうの男性が応じない。
お金の貸し借り
イラスト:賃貸トラブル。貸主と借主が敷金のことでもめている。
賃貸トラブル
イラスト:騒音トラブル。外からの騒音に耳をふさいでいる男性。
騒音トラブル
イラスト:通販トラブル。箱から出したグラスが割れていて、困っている女性。
通販トラブル

2「かいけつサポート」とは?

法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者が行うADRをいいます。
民間事業者によるADRを安心して利用してもらうために、法務省では、民間ADR事業者の申請に基づき、法律(裁判外紛争解決の利用の促進に関する法律。以下「ADR法」という。)で定められた基準をクリアしているかどうかを審査し、その基準をクリアしている事業者を法務大臣が認証する制度(法務大臣による裁判外紛争手続の認証制度)を取り扱っています。認証のための主な基準は、次のとおりです。

認証基準(主なもの)

(1)トラブルの内容に応じた専門家を紛争解決の手続を進める人(調停人)として選任できるよう、専門的人材を確保していること
(2)当事者と利害関係のある人が調停人とならないような仕組みが備わっていること。
(3)調停人が弁護士でない場合は、法的な問題に対応するため、弁護士の助言を受けることができるようにしておくこと
(4)紛争解決の手続について、標準的な手続の進行、資料の保管や返還の方法、費用の算定方法、苦情の取扱い等を定めていること
(5)当事者のプライバシーや秘密などを守るための体制が整っていること
※認証基準の全容は、ADR法第6条参照

解決サポートのロゴマーク

(ロゴマーク)

ADR法に定められた基準をクリアし、法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者は、「かいけつサポート」の愛称とロゴマークを使用することが認められています。民間ADR事業者を選ぶ際は、「かいけつサポート」のロゴマークの有無を参考にしてください。
なお「かいけつサポート」は、法務大臣が認証をするもので、法務省が自ら紛争解決を図るものではありません。
現在、「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者は、全国各地に160以上あります。
各事業者によって取り扱う紛争の分野・範囲は異なりますが、かいけつサポート全体としては、次の分野・範囲の紛争を取り扱っています。

「かいけつサポート」が取り扱う紛争の分野・範囲

【民事一般】
原則として金銭債権の請求に関する紛争のみ
民事に関する紛争(全般(ただし、登記手続関連の家事事件以外の家事事件を除く。))
民事に関する紛争(紛争の価額が140万円以下のものに限る。)
民事に関する紛争(全般)
民事に関する紛争(登記手続への協力を求めることを目的とするものに限る。)

【商事一般】
商事に関する紛争
下請取引に関する紛争
コンビニエンスストア本部と加盟者間のフランチャイズ契約に関する紛争

【知的財産】
知的財産に関する紛争
ソフトウェアに関する紛争
商標法及び不正競争防止法における侵害行為に関する権利者と業者間の紛争

【消費者】
電子商取引に関する紛争
商品の欠陥に関する紛争(自動車)
留学に関する紛争
ブランド品に関する売買契約紛争
特定商取引に関する紛争
日本国内において締結された、旅行業を営む事業者と消費者との旅行契約に関する紛争及びホテル営業、旅館営業又は簡易宿所営業を営む事業者と消費者との宿泊契約に関する紛争
商品の欠陥に関する紛争(家電)
デジタルプラットフォームに関する紛争

【事業再生】
中小企業における債権債務の整理に関する紛争
事業再生に関する紛争

【事業承継】
中小企業の事業承継に関する法的紛争

【金融・保険】
金融商品に関する紛争
共済契約に関する紛争

【労働】
労働関係紛争
職場におけるハラスメントの紛争

【生活環境】
外国人を一方の当事者とする職場環境等に関する紛争
不動産の価格に関する紛争
外国人の職場環境等に関する紛争
愛護動物に関する紛争
マンションに関する紛争
敷金返還等に関する紛争
不動産賃貸借に関する紛争
土地の境界に関する紛争
外国人を一方の当事者とする騒音、ゴミ処理その他の日常生活に関する紛争
不動産の取引、管理、施工、相続その他の承継に関する紛争
土地の境界に関連する相隣関係の紛争

【交通】
自転車事故に関する紛争
自転車事故又は自動車の物損事故等に関する紛争

【家事】
婚姻関係及び内縁関係の維持又は解消に関する紛争
親族間における感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争
子の監護(面会交流)に関する紛争
子の監護に関する紛争
夫婦関係等に関する紛争
外国人を一方の当事者とする身分関係に関する紛争
相続に関する紛争
外国人を当事者とした夫婦と親子に関する紛争
子の養育に関する紛争
家事・相続に関する紛争(登記手続への協力を求めることを目的とするものに限る。)
婚姻関係の維持又は解消に関する紛争

【スポーツ】
スポーツに関する紛争

【エネルギー】
電力系統の利用に関する紛争

3土地を国に引き渡せるのは、どんな人?

紛争の解決方法といえば「裁判」が代表的ですので、裁判と「かいけつサポート」にどのような違いがあるのか、両者を比較してみます。

裁判と「かいけつサポート」の主な特徴
  裁判 かいけつサポート
主体 裁判官 各分野の専門家
秘密の保護 公開 非公開
手続の進行 民事訴訟法に従った手続進行 ニーズに応じた柔軟な手続進行が可能
費用 裁判所の訴訟費用 認証を受けたADR事業者に支払う費用
強制執行力 あり なし

また、「かいけつサポート」を利用することには、主に次のようなメリット・デメリットがあります。

「かいけつサポート」のメリット

各分野の民間の専門家が手続を進めます

かいけつサポートは、取り扱う紛争の分野に精通した民間の専門家の知識・ノウハウを活用します。これにより、紛争の実情を踏まえた、きめ細やかで迅速な解決を図ることが期待できます。

手続が簡便・迅速です

法務省によると、かいけつサポート全体の取扱実績として、8割以上の事件が6か月以内に終了し、7割以上の事件が3回以内の審理で終了しています。この実績から、手続に時間や回数をかけずに、簡易・迅速に進められていることがうかがえます。また、近年、自宅等にいながらオンラインを利用して手続をすることができる「ODR(Online Dispute Resolution:デジタル技術を活用してADR をオンライン上で行うもの)に対応した事業者が増加していますので、より簡易・迅速な手続が期待されます。

利用前に手続の進行や費用の目安を知ることができます

かいけつサポートの事業者は、手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行や、当事者が支払う報酬・費用などの重要なポイントについて、事前に当事者に説明することが義務とされています。この説明を受けることにより、本当に自分にとってふさわしい解決方法なのかを、事前によく考えた上で利用することができます。

時効の完成猶予等の法的特例が認められる場合があります

第三者を交えてじっくり話し合いをしていると、その間に時効が成立してしまうことが考えられます。かいけつサポートを利用すれば、ADR法が定める一定の場合には、時効の完成猶予が認められます。このほかにも、訴訟手続の中止や調停前置の特則といった法的特例が用意されています。

イラスト:窓口で担当者に相談している女性

デメリット

相手方が話し合いに応じなければ手続を開始できません

かいけつサポートは、当事者間の紛争を調停人・あっせん人が仲介しながら話し合いを進め、和解の合意を目指そうという手続ですから、相手方が話し合いに応じないといった場合には、そもそも手続を開始することができません。

途中で一方が手続から離脱すると、その時点で手続が終了します

相手方が話し合いに応じて手続が開始されたとしても、一致点が見いだせない場合や、調停人の提示する和解案を当事者のどちらか一方でも受け入れなかった場合には、未解決のまま手続が終了することになります。

合意内容を強制的に実現させることができません

かいけつサポートによる話し合いの結果で合意した内容は、一般的に和解合意書の形式でまとめられますが、強制執行力はありません。ただし、お互いの話し合いの結果で合意したものなので、合意内容が実施されないという例は実際にはあまりないようです。

4「かいけつサポート」を利用するには?

法務省では、「かいけつサポート」のウェブサイトを通じて様々な情報を提供しています。「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者の情報を事業者名の一覧から探せるほか、「事務所の所在地」や「取り扱う紛争の分野・範囲」からも探すことができます。
「かいけつサポート」認証を受けている民間ADR事業者の名称や連絡先は、下記からどうぞ。

イラスト:パソコンで解決サポートのウェブサイトを見ている女性

また、法務省では、それぞれの民間ADR事業者の強み、解決事例、必要な費用等の主要情報を事業者単位で一覧的にまとめた「かいけつサポート事業者ガイドブック」という資料を公開しています。この資料は、「かいけつサポート」のホームページからダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

なお、手続をスムーズに進めるために、「かいけつサポート」を利用する前には、次のようなことを整理しておくとよいでしょう。

「かいけつサポート」を利用する前に

相手方の連絡先を確認しておく

あなたの依頼により「かいけつサポート」のサービスが始まると、依頼を受けた民間ADR事業者から相手方に郵便などで連絡や通知をすることになります。相手方の確実な連絡先などを事前に把握していると、手続がスムーズに進みます。

自分の言い分を整理しておく

例えば、トラブルについて、その内容とともに、起きた日時や場所、原因などについて、あなたがどのように考えているか、といったことを事前に整理しておくと、話し合いたいポイントがはっきりします。トラブルに関連する資料などがある場合は、事前に整理して準備しておくとよいでしょう。

自分がどのような解決を望むか想定しておく

話し合いを重ねても、あなたの言い分がすべて通るとは限りません。トラブルのどの点についてどこまで合意できれば相手方と和解してもよいか、いわゆる"落としどころ"を事前に想定しておくことが大事です。

(取材協力:法務省 文責:政府広報オンライン)

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