「デング熱」にご注意を! 予防策は「蚊に刺されない」「蚊を発生させない」

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平成26年(2014年)夏、「デング熱」の国内での感染例が69年ぶりに確認され、首都圏を中心に162例の報告がありました。デング熱の患者は全世界で毎年1億人にのぼるとみられ、日本でもいつまた発生するかわかりません。デング熱の日本での流行を防ぐため、どのような病気か、どのような予防策があるか、など、あらためて確認しておきましょう。

1デング熱とはどんな病気?蚊が媒介する感染症で、熱帯・亜熱帯を中心に世界100か国以上で発生

デング熱は、デングウイルスに感染することによって発症する感染症で、ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカによってウイルスが媒介されます。
デングウイルスに感染してからデング熱が発症するまでの潜伏期間は2~14日。ウイルスに感染してもデング熱を発症しない人もいますが、発症した場合には、38度以上の高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が現れます。また、体に赤い小さな発疹が出ることもあります。

デング熱には現在のところ直接に効く治療薬はありませんが、発熱や痛みなど個々の症状を抑える適切な対症療法を受ければ、ほとんどの場合、1週間程度で回復します。
しかし、重症化して歯ぐきからの出血や血便、血尿などの出血症状を伴う重症デングウイルス感染症、いわゆるデング出血熱と呼ばれる状態になると、命にかかわることがあります。

日本ではデングウイルスを媒介する蚊は冬を越せないため、平成26年(2014年)に日本でデングウイルスを持っていた蚊は翌年の春にはいなくなっています。しかし、グローバル化が進んだ今日、デング熱の流行地からデングウイルスに感染したまま日本に来る人は少なくないと考えられます。国内での感染がいったん収まっても、また新たに海外の流行地から国内に入り込み、感染が広がるリスクは毎年あるのです。

2どのようにして感染するの?デング熱を発症した人の血を吸った「ヒトスジシマカ」によって感染が広がります

デングウイルスは、デングウイルスに感染した蚊に刺されることによって感染します。デング熱を発症した人が蚊に刺されると、その蚊にウイルスが移り、その蚊がほかの非感染者の血を吸う際に吸われた人の体内にウイルスが移ることによって感染が広がっていきます。人から人へ直接感染することはありません。

デングウイルスを媒介する蚊は、ヒトスジシマカとネッタイシマカの2種類があります。
ヒトスジシマカは、日本では本州以南に広く生息し、体長は4.5ミリ程度で、背中に1本の白い線があり、活動時期は5月中旬~10月下旬ごろまでです。

ヒトスジシマカの行動範囲は極めて狭く、飛行範囲は50~100メートル程度といわれています。しかし、デングウイルスを持つヒトスジシマカに刺されて感染した人が、別の場所に移動し、そこに生息するウイルスを持たないヒトスジシマカに刺されると、その場所でもデングウイルスを持ったヒトスジシマカが存在することになります。ヒトスジシマカの行動範囲は狭くても、感染した人が移動することで、デングウイルスの感染範囲を拡大しているのです。

ヒトスジシマカ

もう1種のデングウイルス媒介蚊であるネッタイシマカは、1955年以降、日本国内には生息していないと考えられています。そのため平成26年(2014年)に日本国内で発生したデング熱患者にウイルスを媒介したのは、このネッタイシマカではなくヒトスジシマカであったと考えられます。

ただし、ネッタイシマカは熱帯・亜熱帯に広く生息しているので、そうした地域に渡航する人は、ネッタイシマカの媒介によりデングウイルスに感染する可能性があります。また、今後、ネッタイシマカが日本に侵入する可能性がゼロとはいえません。

3デング熱を防ぐには?蚊に刺されないこと、蚊の発生源をなくすこと

現在、デング熱には、国内で利用可能なワクチンや治療薬はなく、治療法は対症療法が主となります。そのため、デングウイルスの感染を防ぐためには、媒介するヒトスジシマカに刺されないこと、また、ヒトスジシマカの発生を防ぐことが重要な対策となります。 平成26年(2014年)の日本での国内感染例をみると、8月上旬に最初の発症者が現れた後、8月下旬から9月上旬にかけて発症者数のピークが続き、その後収束して10月末にはゼロになっています。夏を過ぎてもしばらくの間は、デング熱への警戒を緩めないことが大切です。

対策1 蚊に刺されない

ヒトスジシマカが活発に活動する日中に、屋外で活動する場合には、できるだけ次のような対策をして蚊に刺されないようにしましょう。

  • 肌を露出しない長袖、長ズボンを着用する
  • 素足でのサンダル履きを避ける
  • 白など薄い色のシャツやズボンを選ぶ(蚊は色の濃いものに近づく傾向がある)
  • 露出する部分には虫除けスプレーなどを使い、蚊を寄せ付けないようにする
  • 蚊取り線香などを使って蚊を近づけない   など

対策2 蚊の発生を抑える

デングウイルスを媒介するヒトスジシマカの発生を抑えることが大事です。
ヒトスジシマカの成虫は雑木林や竹林などに生息し、日中(日の出から日の入り時間まで)に活発に活動します。交尾後、水中に産卵しますが、沼や池のような広い場所よりも、狭い水たまりのような場所を好みます。そのため、屋外に置かれた植木鉢の受け皿や空き缶、ペットボトルなどに溜まった水に産卵します。野積みされた古タイヤに溜まった水などにも好んで産卵し、孵化(ふか)した幼虫はそこで成長します。
こうした生態から、家の周囲を点検して不要な水たまりをなくすことが、ヒトスジシマカの発生を抑え、デング熱の発生を防ぐことにつながります。

家の周囲の不要な水たまりをチェック

4「この熱、デング熱かも?」早めに医療機関を受診し、適切な診断、治療を受けましょう

デング熱の初期に現れる発熱や筋肉痛、関節痛などの症状は、インフルエンザにかかった場合にもよく見られるため、これらの症状だけから素人判断を下すことは危険です。これらの症状が現れた場合はインフルエンザのほかにデング熱である可能性も考えて、早めに医療機関を受診して、適切な診断・治療を受けましょう。
特に、蚊に刺された数日後にこれらの症状が出たり、これらの症状に加えて皮膚に赤い小さな発疹が見られたりした場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

国内で感染した疑いがある場合

発熱や頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が現れたときには、早めに医療機関で受診しましょう。

デング熱の主な症状

熱を下げるために解熱剤を使うことがありますが、その成分によっては、デング熱の重症化を促すことがあります。症状が出る数日前にヤブ蚊に刺されたなど、デングウイルスに感染した可能性がある場合は、自己判断で解熱剤を服用したりせずに、医療機関を受診してください。

医療機関を受診するときは、蚊に刺されたかどうか、刺された場合はいつどこで刺されたかなどについても伝えてください。

海外で感染した疑いがある場合

次の章で説明するように、海外の熱帯・亜熱帯地域では、多くの国でデング熱などの感染症が発生しています。

  • デング熱などの感染症が発生している国に渡航した方は、渡航中に発熱や筋肉痛・関節痛などの症状が現れたときは、すぐに医療機関を受診してください。
  • 帰国時に発熱など心配な症状のある方や渡航先において医療機関を受診するなど体調に不安のある場合は、空港や港の検疫所にご相談ください。
  • 帰国後に発症した場合は、速やかにお近くの医療機関を受診してください。
  • 医療機関を受診するときは、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

「一度かかったから免疫がある」と、油断しないで

デング熱は、一度かかったら免疫によって生涯かからないという感染症ではありません。デング熱の原因となるデングウイルスは4種類あるといわれており、同じ種類のウイルスに再感染した場合は発症しても軽く済みますが、異なる種類のウイルスに感染すると重症化することがあります。

デング熱にかかったことのある人も、油断しないで、蚊に刺されないよう予防に努めるとともに、万一、デング熱を疑う症状が出た場合には、できるだけ早く医療機関を受診してください。

5海外での感染に注意しましょうデング熱のほかにマラリアやチクングニア熱など、蚊が媒介する感染症が発生しています

デング熱患者は、デングウイルスを媒介する蚊が生息する熱帯・亜熱帯地域、特に、東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国で多くみられ、アフリカ諸国、オーストラリア、中国、台湾を含め100か国以上で患者が発生しています。全世界では年間約1億人のデング熱患者が発生し、約25万人のデング出血熱患者が発生していると推定されています。

デング熱・デング出血熱の発生地域

(資料:国立感染症研究所「デング熱とは」

2016年発生地域から帰国された方がデング出血熱で死亡する事例がありました。

平成28年(2016年)、日本国内で、フィリピンでの滞在歴がある女性1名がデング出血熱と確認されお亡くなりになりました。デング熱症例の国内での死亡例としては、2005年以来となります。

参考)厚生労働省・報道発表資料
平成28年7月22日「デング出血熱患者(輸入症例)死亡例の発生について」

発生地域へ渡航する方へ

  • デング熱の発生地域へ渡航する場合は、長袖・長ズボンを着用したり、虫よけスプレーなど蚊の忌避剤を使用したりして、蚊に刺されないよう注意してください。
  • 海外からの帰国者は、体調に異常がある場合は、到着した空港等の検疫ブースで検疫官に申し出てください。帰国後に症状が認められた場合は、医療機関を受診し、海外への渡航歴を告げてください。

海外では、デング熱のほかにも、マラリアやチクングニア熱など、蚊が媒介する様々な感染症があります。
マラリアは、マラリア原虫を持つハマダラカ属の蚊によって媒介される感染症です。世界の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、1年間に約2億人の患者が発生し、約43万人以上が死亡していると報告されています。日本でも数十例の輸入症例が報告されています。

また、海外でチクングニアウイルスに感染し、日本で発症する例も毎年報告されています。チクングニアウイルスを媒介するのは、デングウイルスの媒介蚊であるヤブカ属の蚊です。チクングニア熱も、平成26年(2014年)のデング熱患者の発生と同じように、国内感染が広がる危険性がありますので、海外でも国内でも、蚊に刺されないよう、しっかりと対策をしておくことが重要です。

感染症 特徴 媒介する蚊
マラリア 主な症状は、寒気、発熱、息苦しさ、目の充血、おう吐、頭痛、筋肉痛など。全世界で年間2億人以上の患者が発生し、約43万人以上の死亡者が報告されている。
アジア、オセアニア、アフリカおよび中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。
マラリア原虫を保有した「ハマダラカ」。山間部や田園地帯を中心に日没後に出没。
チクングニア熱 主な症状は、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、発疹など。東南アジア(特にフィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール)や南アジアなどで流行。 チクングニアウイルスをもつ「ネッタイシマカ」や「ヒトスジシマカ」。ヤブカだが、日中、都市部や家の中にも出没する。

海外では、蚊による感染症だけでなく、マダニや動物、水や食べ物などを介し、日本にはない感染症が発生していることがあります。海外旅行や仕事などで海外に出かけるときは、厚生労働省検疫所のウェブサイト「FORTH」や外務省の「海外安全ホームページ」で、渡航先の感染症の発生状況に関する最新の情報や注意事項を確認しましょう。

詳しくはこちらをご覧ください。

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

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