「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう

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「食育」とは、様々な経験を通じて、「食」に関する知識と、バランスの良い「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育むことです。食べることは生涯にわたって続く基本的な営みですから、こどもはもちろん、大人になってからも「食育」は重要です。健康的な食のあり方を考えるとともに、だれかと一緒に食事や料理をしたり、食べ物の収穫を体験したり、季節や地域の料理を味わったりするなど、食育を通じた「実践の環(わ)」を広げましょう。

1なぜ「食育」が大事なの?

食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎と位置付けられるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てるものです。
こうした「食育」がいま重要とされる背景には、近年、食に関連した様々な課題が浮上していることがあります。
例えば、栄養の偏りや不規則な食事などによる肥満や、それらが原因と考えられる生活習慣病の増加がみられます。また、若い女性を中心にみられる過度のダイエット志向に加え、高齢者の低栄養傾向等の健康面での問題も指摘されているところです。
また、食の安全や信頼にかかわる問題や、外国からの食料輸入に依存する問題など、食を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした中で、食に関する知識を身に付け、健康的な食生活を実践することにより、心と身体の健康を維持し、生き生きと暮らすために、食育を通じて、生涯にわたって「食べる力」=「生きる力」を育むことが重要になっているのです。

食育によって身に付けたい「食べる力」には、食事を通じて「心と身体の健康を維持できること」、「食事の重要性や楽しさを理解すること」、「食べ物を自分で選択し、食事づくりができること」、「家族や仲間と一緒に食べる楽しみを味わうこと」、「食べ物の生産過程を知り、感謝する気持ちを持つこと」などが含まれます。これらは、こどものころから家庭や学校、地域など様々な場所で学び、身に付けていくものです。そして、大人になってからも生涯にわたって実践し、育み続けていくものです。さらに大人には、そうした食の知識・経験や日本の食文化などを「次世代に伝える」という役割もあります。
食育を実践するのは、皆さん一人ひとりです。以下に紹介する日常生活の中での主な取組を参考に、できることから食育を始めましょう。

コラム1

「食育の環(わ)」

「食育の環」とは、生産から食卓までの「食べ物の循環」、こどもから高齢者、そして次世代へといった「生涯にわたる食の営みの循環」を示します。また、食育は、豊かな自然、先人から受け継がれてきた文化、社会経済といった環境と密接な関係を持ち、生活の場としての地域とのつながりとも関連しています。

食育の環
(資料:農林水産省)

コラム2

「食育ピクトグラム」について

食育ピクトグラムは、食育の取組をこどもから大人まで誰にでもわかりやすく発信するため、表現を単純化した絵文字であるピクトグラムを作成し、多くの人に使用していただくことを目的として制作しました。食育の取組についての情報発信する際に自由にお使いいただけます。

2健全な食生活を実践するには?

食生活と健康は深く関係しています。朝ごはんを食べないと、1回の食事の量が増えて食べ過ぎることがあり、肥満や生活習慣病の発症につながることがあります。栄養バランスのとれた、規則正しい食生活をするために、次のようなことから実践してみましょう。

朝ごはんをきちんと食べる

「朝は忙しくて、朝ごはんの支度をしたり食べたりする時間がない」「朝ごはんより寝ていたい」「朝ごはんくらい抜いたって大丈夫」と考える人がいるかもしれません。しかし、朝ごはんは1日のパワーの源であり、朝ごはんを食べると、寝ている間に低下した体温を上昇させ、からだは1日の活動の準備を整えます。また、毎日朝食を食べるこどもほど、学力調査の平均正答率や体力テストの合計点が高い傾向にあるという調査結果も報告されています。1日の食事を規則的にとり、生活リズムを作っていくことが、健康的な生活習慣にもつながります。朝ごはんで、生き生きとした1日のスタートを切りましょう。
下記のページに、朝ごはんをきちんと食べるための工夫が紹介されていますので、ぜひ、参考にしてください。

栄養バランスを考える

食事を作ったり、選んだりするときに、主食、主菜、副菜を組み合わせ、栄養バランスのとれた食事を意識しましょう。
栄養バランスのよい食習慣の人は、そうでない人と比較して死亡のリスクが低くなることが報告されています。

  • 主食
    ごはん、パン、めんなどの穀類を主な材料にした料理。炭水化物を多く含み、エネルギーの元になる。
  • 主菜
    魚、肉、たまご、大豆を主な材料にした料理。たんぱく質や脂質を多く含む。
  • 副菜
    野菜、いも、海藻などを主な材料にした料理。いろいろなビタミン、鉄、カルシウム、食物繊維などを多く含む。

「主食」、「主菜」、「副菜」を組み合わせた食事の参考になるものとして、1日に何をどれだけ食べればよいかの目安を示した、「食事バランスガイド」があります。これは、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つの料理区分に分け、それぞれの料理区分の1日分の適量と料理例をイラストで分かりやすく示したものです。食事バランスガイドの活用方法は、下記のウェブサイトなどに紹介されています。上手に活用して、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
また、「日本型食生活」は、ごはんを中心に、魚、肉、牛乳・乳製品、野菜、海藻、豆類、果物、茶など多様な副食などを組み合わせ、栄養バランスに優れています。ライフスタイルに応じて、日本型食生活を積極的に取り入れましょう。

コラム3

朝ごはん、食べてますか?

朝、時間が無いからと朝食を抜いて家を出ていませんか?朝食を食べないと、午前中、からだは動いても頭はボンヤリ、ということになりがちです。朝食を食べて、脳とからだをしっかり目覚めさせ、元気に一日をスタートさせましょう。

朝ごはんで、毎日ちゃんとスイッチ入れましょう

ごはんなど主食を食べると脳のエネルギー源になるブドウ糖となって、朝から勉強や仕事に集中できます。
幼児や中学生、成人を対象とした研究では、朝食を食べる人は、睡眠の質がよい人が多いことや不眠傾向の人が少ないことが報告されています。
また、小学生を対象とした研究では、朝食を毎日食べる人は、そうでない人と比較して、学力が高いことが報告されています。

まずは、簡単な食事から

朝日を浴び、朝食をとると、体内時計がリセットされ、一日の生活リズムが整います。前日の夕食が遅かったり夜食を食べ過ぎると食欲がわきません。また、夜型の生活で朝早く起きることができないと朝食をとる時間がとれません。まずは、生活時間を見直すことから始めましょう。

簡単なものから朝食作りに挑戦してみましょう

3食べることの「楽しみ」って?

何人かで食卓を囲む食事の場は、コミュニケーションの場でもあります。
しかし、最近は、核家族化やライフスタイルの多様化などによって、家族みんなが集まって食事をする機会が減ってきているといわれています。また、若者からお年寄りまで、一人暮らしの人も多くなっています。一人だと食事の支度が面倒で料理をしなくなったり、食欲が出なかったりする人も少なくありません。
一人で食べることが多い人は、家族や仲間と、会話を楽しみながら、ゆっくり食事をする機会を増やしていきましょう。みんなで一緒に食卓を囲んで、共に食べることを「共食(きょうしょく)」と言います。共食には、一緒に食べることだけではなく、「何を作ろうか」と話し合って一緒に料理を作ったり、食事の後に「おいしかったね」と語り合ったりすることも含まれます。

こどもがいる家庭では、家族みんなで一緒に食卓を囲むことによって、こどもたちが食事の楽しさを実感することができます。また、箸の正しい持ち方や 食事のマナー、「いただきます」「ごちそうさま」といった食事のあいさつ、栄養のバランスを考えて食べる習慣や食べ物を大事にする気持ち、郷土料理や季節の料理といった食の文化などを、親や祖父母からこどもに伝える良い機会にもなります。

一人暮らしの人は、友達や仲間を誘って一緒に食事をつくったり、食べたりする機会を増やしてみませんか。一緒にお弁当を食べたり、食堂で食べたり、誰かの家でホームパーティーをしたり。地域の食事会や食のイベントなどが開催されている場合もありますので、積極的に参加して、一緒に食べる楽しさを味わいましょう。

近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供するこども食堂などが広まっており、家庭における共食が難しいこどもたちに対し、共食の機会を提供する取組も増えています。

コラム4

誰かと一緒に食べていますか?

近年、家族がそろって食事をする「共食」の機会が減り、食生活も多様化しています。一人で食事をする「孤食」や、同じ食卓に集まっていても、家族がそれぞれ別々のものを食べる「個食」ばかりになっていませんか?

共食と食育

みんなで一緒に食卓を囲んで、ともに食べることを「共食(きょうしょく)」と言います。
こどもがいる家庭では、食事のマナー、栄養バランスを考えて食べる習慣や食べ物や食文化を大事にする気持などを、こどもに伝える良い機会にもなります。一方、家庭での共食が難しいこどもたちには、こども食堂などの共食の機会を提供する取組も増えており、食育の場としても期待されます。
また、感染症の感染予防対策として、会食時の会話の際はマスクをつけたり、オンラインも活用しましょう。

4私たちの食べ物はどこから?

毎日口にする食べ物が私たちのところに届くまでには、生産・加工・流通など様々な過程があり、それらはたくさんの人の手によって支えられています。食べ物を取り巻く様々なことがらについて、知識や理解を深めたり、体験したりして、食べ物の大切さを考えてみましょう。

農林漁業、食品工場、市場などの現場に触れる

農林漁業や食品工場、市場などを見学したり体験したりすることは、食生活が多くの人の手に支えられていることを考えるきっかけになる取組として注目されています。
学校の農業体験授業や教育ファーム、体験農園など、全国各地で様々な農林漁業の体験活動が行われています。
工場見学では、原料が加工されて製品になるまでの過程を見ながら、安心しておいしく食べてもらうための工夫を知ることができます。
また、市場などでは様々な食べ物を発見したり、食べ物のおいしい食べ方を教えてもらったりすることもできます。

食料自給率について考えてみる

国内で消費する食料のうち、どのくらいが国内で生産されているかの割合を「食料自給率」といいますが、令和3年度(2021年度)現在、日本の食料自給率(カロリーベース)は38%で、62%は海外からの輸入によるものです。食料自給率が低いと、私たちの生活にはどのような影響があるのか、また、食料自給率を向上させるために私たちができることは何かを考えてみましょう。

食品ロスについて考えてみる

我が国では、食料及び飼料等の生産資材の多くを海外からの輸入に頼っている一方で、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品ロスが、令和2年度(2020年度)の推計で522万トン発生しています。 食品ロスは、売れ残りや期限切れの食品、食べ残しなど、食べられるのに捨てられている食料です。食品ロスを減らすために、私たちはどのようなことを心がけたらよいのか、考えてみましょう。

食育の取組の最初の一歩を踏み出すための手引きとして、「食育ガイド」をご活用ください。皆さんが、ご自分の食生活の振り返りを行い、実践できそうなことをチェックしたり、書き込んだりすることができるようになっています。「食育ガイド」は、下記のホームページに掲載されていますので、ぜひ、皆さんの食育の実践のためにご活用ください。

コラム5

第4次食育推進基本計画の基本的な方針

食育推進基本計画は、食育基本法に基づき、食育の推進に関する基本的な方針や目標について定めています。第4次食育推進基本計画では、これまでの5年間の取組による成果とSDGsの考え方を踏まえ、多様な主体と連携・協働し、今後5年間、3つの重点事項を柱に取組と施策を推進していきます。
食育により、社会全体で連携・協働して持続可能な食料システム(フードシステム)を構築することが期待されます。

重点事項1(国民の健康の視点)
生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進

国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むためには、妊産婦や、乳幼児から高齢者に至るまで、多様な暮らしに対応し、家庭、学校・保育所等、地域の各段階において、切れ目なく、生涯を通じた心身の健康を支える食育を推進します。

重点事項2(社会・環境・文化の視点)
持続可能な食を支える食育の推進

健全な食生活の基盤として持続可能な環境が不可欠であり、食育においても食を支える環境の持続に資する取組を推進することが重要です。
そのため、「食と環境との調和」「農林水産業や農山漁村を支える多様な主体とのつながりの深化」「和食文化の保護・継承」を通じて、持続可能な食を支える食育を推進します。

重点事項3(横断的な視点)
「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進

「新たな日常」においても食育を着実に実施するとともに、より多くの国民が主体的、効果的に食育を実践できるよう、ICT等デジタル技術を有効活用する等により、食育を推進します。

コラム6

毎年6月は「食育月間」、毎月19日は「食育の日」です。

毎年6月は「食育月間」です。国や地方公共団体、関係団体などが協力して、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施し、食育の一層の浸透を図ることとしています。期間中は、全国規模の中核的な行事として食育推進全国大会が開催されるほか、全国各地で食育をテーマとした多くの取組やイベントが実施されます。

また、毎月19日は、自分や家族の食生活を見直す、「食育の日」とされています。「食育月間」や「食育の日」を機会に、皆さんも食育に取り組んでみませんか。

令和4年度食育月間ポスター(農林水産省);

(取材協力:農林水産省 文責:政府広報オンライン)

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