水の事故を防ごう!海や川でレジャーを楽しむために知っておきたい安全対策
Point
夏を迎えると、家族や友人などと一緒に、海や川へと出掛ける機会が増えてきます。水辺のレジャーは楽しいひと時となりますが、一方で、毎年多くの「水の事故」が起きていることを忘れてはいけません。この記事では、「水の事故」の対策をまとめましたので、是非、海や川へ出掛ける際の参考としてください。
1「水の事故」は命にかかわる危険があります!
まずは実際に「水の事故」がどれだけ発生しているのか、警察庁のデータを見てみましょう。
令和5年(2023年)には1,392件・1,667人の水難事故が発生しています。そして、その約半数の743人ものかたが亡くなったり、行方不明になったりしています。水の事故は、命に関わる重大な事態になりかねないということを覚えておきましょう。
では、命に関わる水の事故はどのような場所で発生しているのでしょう。同年の水難の死者・行方不明者の割合を場所別に見ると、「海」が全体の49.5%と最も多く、次いで「河川」(33.4%)、「用水路」(10.1%)、「湖沼池」(5.2%)となっています(グラフ①)。
グラフ➀ 令和5年 水難の死者・行方不明者(743人)の場所別構成比
資料:警察庁「令和5年における水難の概況等」から政府広報室作成
また、死者・行方不明者の割合を行為別に見ると、「魚とり・釣り」全体の23.8%で最も多く、次いで「水泳」(7.4%)、「作業中」(6.9%)、「水遊び」(5.4%)、「通行中」(5.4%)、となっています。また、「その他」(51.1%)には、シュノーケリング、スキューバダイビング、サーフィンなども含まれており、様々なケースで水難事故が発生していることが分かります(グラフ②)。
グラフ② 令和5年 水難の死者・行方不明者(743人)の行為別構成比
資料:警察庁「令和5年における水難の概況等」から政府広報室作成
水の事故で心配されるのが、やはりこどもの事故です。令和5年(2023年)における中学生以下のこどもの水難の死者・行方不明者(27人)の割合を場所別にみると、「河川」が全体の59.3%と最も多く、次いで「海」(25.9%)、「湖沼池」(7.4%)、「プール」(7.4%)となっています(グラフ③)。河川での水遊びにおいてこどもの重大な水難事故が多く発生していることが分かります。
グラフ③ 令和5年 中学生以下の水難の死者・行方不明者(27人)の場所別構成比
資料:警察庁「令和5年における水難の概況等」から政府広報室作成
このように、水の事故は様々な場所や状況で発生しています。水の事故を防ぐためには、海や川など、それぞれの自然環境の特徴を踏まえながら、事故につながりやすい危険な場所や行為、そして安全に楽しむための対策を知っておく必要があります。
2「水の事故」から命を守る7つのポイント
水の事故から命を守るためには、次の7つのポイントを徹底することが「自己救命策」の基本となります。
(1)「立入禁止」の場所には近づかない
海や川など水辺には、パッと見ただけでは分からない危険が潜んでいます。管理者や地元のかたなどによって柵が設置されていたり、「立入禁止」などの看板がある場所には、絶対に近づかないようにしましょう。
(2)体調が悪いときは無理をしない
体調が悪いときに水に入るのは危険です。自身の体調を把握して、疲労や睡眠不足を感じる場合などは、決して無理をしないようにしましょう。
(3)単独行動を避ける
一人で行動した場合、事故に遭っても周囲の発見が遅れて、深刻な事態となりかねません。複数人での行動を心掛けましょう。
また、出掛ける際に、家族や関係者に行き先や帰宅時間を伝えておけば、万一のときにも異常に気付くきっかけとなり、速やかな救助につながります。
(4)こどもから目を離さない
こどもは大人と比べて危険を察知する力が弱いものです。小さな波にも足をすくわれ、沖に流されたり、溺れたりすることもあります。こどもの体に合ったライフジャケットを着用させるとともに、常にこどもから目を離さないようにしましょう。
(5)お酒を飲んだら海や川には入らない
お酒(アルコール)が体内に入ると、判断力や注意力、集中力、さらには運動能力も低下するため、自身が危険に遭遇するリスクが高まり、大変危険です。海上保安庁によると飲酒をして海水浴中に事故に遭った人の死亡率は、飲酒をしていない人の約2倍も高くなっています。海に限らず、飲酒後の遊泳は大変危険ですので、お酒を飲んだら泳がないようにしましょう。また、こどもから目を離すことにもつながりかねません。
(6)ライフジャケットの常時着用
水の事故で生死を分ける重要な要素となるのが、ライフジャケットの着用です。これを徹底するだけで、重大事故発生の確率を大きく下げることができます。
水中に落ちたときに、ライフジャケットが脱げてしまったり、膨張式のライフジャケットが膨らまなかったり、といったことがないよう、体のサイズに合ったライフジャケットを適切に着用するとともに、着用時の保守・点検を心掛けましょう。
(7)連絡手段の確保
万一、水の事故が起きたときに、救助機関に速やかに通報できるよう、携帯電話などの連絡手段を確保しておきましょう。水没して使えないといった事態を防ぐため、ストラップ付き防水パックの利用をお勧めします。
救助が必要なときは、「110番(警察)」又は「119番(消防)」に連絡しましょう。
また、海上における事故の場合は、海上保安庁の緊急通報用電話番号「118番」に連絡してください。海の事故で救助を求める際は、携帯電話のGPS機能を「ON」にした上で遭難者自身が「118番」に直接通報することで海上保安庁が正確な位置を受信することができ、迅速な救助につながります。なお、海上保安庁では、聴覚や発話に障害を持つかたを対象に、スマートフォンなどを使用した入力操作により通報が可能となる「NET118」というサービスも運用しています。
「NET118」の登録方法
電子メールの宛先にentry@net118.jpを入力して空メールを送信すると、登録用メールが返ってくるので、案内される手順に従って登録します。
3海での「水の事故」を防ぐポイント
周囲を海に囲まれた日本では、海水浴や釣り、サーフィンといったマリンレジャーが楽しめます。楽しいマリンレジャーのひと時を暗転させないよう、2章でご紹介した「「水の事故」から命を守る7つのポイント」に加えて、次のようなことに気を配りましょう。
(1)管理された海水浴場で泳ぐ
一口に「海」といっても、遠浅の海や急に深くなったり潮の流れが変わる海、岩だらけの海など、その環境は地域によって異なります。一見しただけでは危険性が判断できないので、ライフセーバーや監視員などが常にいる海水浴場など、管理された安全な場所で楽しみ、「立入禁止」「遊泳禁止」などと表示がある場所には絶対に近づかないようにしましょう。
(2)荒れている海には決して近づかない
同じ海でも、天候によって危険度は大きく変化します。波が高く、荒れている海は非常に危険ですので、事前に天気予報をチェックして、海が荒れることが予想される場合は、予定を変更し、決して海に近づかないようにしましょう。
(3)海にいる危険な生物に注意
海には、様々な生物がいます。なかにはクラゲやエイなど、危険な生物も少なくありません。これらに刺されたりした場合はすぐに海から出て、受傷部分を冷やすなどの対処をしましょう。痛みが引かない、炎症がひどいといったときは、医療機関を受診しましょう。
4川での「水の事故」を防ぐポイント
川でのレジャーでは、河川敷でのバーベキューなど、必ずしも水に入ることを目的としない楽しみ方もありますが、それでも毎年、多くの水の事故が発生しています。特にこどもは河川での事故が多いため、絶対に一人では遊ばせないようにしましょう。川での水難を避けるためには、2章でご紹介した「「水の事故」から命を守る7つのポイント」に加えて、次のようなことに気を配りましょう。
(1)川の地形を知り、危険な場所には近づかない
川の状態や地形は千差万別で、曲がり方や傾斜・川幅・深さ・岩の突出などによって、流れの速さや危険度が異なります。川には、「危険を示す掲示板」が設置されている場合があります。そうした掲示板がある場所では決して遊ばないようにしましょう。
(2)天気予報などをチェックして、急な増水に備える
安全と思われる場所でも、上流(水が流れてくる方)での豪雨による急な増水のために水難につながる危険があります。事前に天気予報をチェックするのはもちろんですが、上流を含めた天候には常に気を配りながら、国土交通省が発表する「川の防災情報」なども参考にしましょう。また、上流のダムの放流により増水する場合は、警報で注意喚起がされます。ダム管理者からの情報に留意しましょう。
特に中州は、増水すると逃げ道がなくなり、取り残されてしまう危険があります。河原に草が生えていない所があれば、増水時に水が流れていることの証なので、こうした場所では特に注意が必要です。また、川幅が狭い場所は、増水すると短時間のうちに水位が上昇し、川の流れが速くなるおそれがあります。
次のような変化は、川の水が急に増えるサインです。すぐに避難しましょう。
- 上流の空に黒い雲が見えたとき。
- 雷が聞こえたとき。
- 雨が降り始めたとき。
- 落ち葉や流木、ゴミが流れてきたとき。
- 水が急に冷たく感じたとき。
- 水位が急に低くなったとき。
増水前の川
増水後の川
写真提供:公益財団法人河川財団
川の水難防止については、以下のウェブサイトも参考にしてください。
5ケース別「水の事故」対策
(1)遊泳:海では離岸流に注意
「遊泳」は特別な用具もいらない身近なレジャーですが、事故に遭う危険性も少なくありません。水に溺れる事故に加えて、海では潮に流されて岸に戻れなくなるケース、川では急流に流されるケースなどに気を付ける必要があります。
海で遊泳する際の事故に大きく関わるのが、岸から沖へと向かう海水の強い流れ「離岸流(リップカレント)」です。いったん離岸流に入り込んでしまうと、流れに逆らって岸へ戻ることは非常に困難です。
もし離岸流に流されてしまったら、まずは慌てないこと。離岸流の幅は10メートルから30メートルほどなので、無理に陸に向かって泳ごうとせず、海岸と平行に泳いで離岸流から脱出します。風が強いときや、泳ぎに自信がないといった場合には、無理に泳がず、浮いて救助を待つことも有効です。
(2)釣り:ライフジャケットが必須
海や川での釣りは、磯場や岩場・岸壁などの不安定な場所で楽しむケースが多く、ちょっとした不注意で足を滑らせ怪我をしたり、水中に転落したりすることがあります。
水の事故を防ぐために、立入禁止区域に設定されている場所には近寄らないようにし、体型・体格に合ったライフジャケットを常時着用するとともに、釣り場の環境に合わせた、脱げにくく、滑りにくい履物を選びましょう。
(3)サーフィン:自分の技量や体力を過信しない
サーフィンに関連する事故では、サーフボードやほかのサーファーに衝突して負傷する事故や、波を求めて沖に出過ぎたり、海面に浮かんで波を待つ間に流され岸に戻れなくなったりする事故が目立ちます。
これらの事故は、自分の技量をよく知り、周囲のサーファーや遊泳者などに注意を払うことで避けられる可能性が高まります。天候に合わせて慎重に行動することは言うまでもありませんが、自分の技量や体力に応じて活動するよう心掛けましょう。
また、単独行動をしない、お酒を飲まない、事前に十分なウォーミングアップを行うといった基本を守るとともに、浮力と体温の維持につながるウエットスーツを着用しましょう。
(4)モーターボート、水上オートバイ:事前の点検を忘れずに
モーターボートや水上オートバイなどの「プレジャーボート」による事故内容では、故障などによる「運航不能」が最も多く見られます。発航前に燃料油や冷却水、バッテリーの確認などを確実に実施しましょう。また、操縦免許証や、海難を周囲へ知らせる小型船舶用信号紅炎、海図などの法定備品を積み込んでいるか確認しましょう。
また、プレジャーボートの事故の中でも、特に死傷者が多いのが「衝突」によるものです。周囲を行き交う船舶に注意し、早めに危険を察知して衝突を回避できるよう、見張りの徹底が重要です。
加えて、乗船者全員がライフジャケットを着用する、連絡手段を確保する、事前に気象情報を確認するといった基本を改めて徹底するとともに、酒酔い操縦や遊泳区域への侵入は絶対にしないなど、海上交通ルールやマナーを守って楽しむよう心掛けましょう。
まとめ
水の事故は、いったん起きると命に関わる事態になりかねません。海や川などに出掛ける前に、安全対策のポイントを押さえておきましょう。また、遊泳、サーフィン、モーターボートや水上オートバイなどといったケース別の安全対策も押さえておくと良いでしょう。
(取材協力:警察庁、海上保安庁、国土交通省 文責:政府広報オンライン)