よく話し合って決めておきましょう、「養育費」と「親子交流」

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離婚に当たって、こどもの養育費や親子交流(面会交流)などについて考える両親

POINT
離婚を考えるときは、養育費と親子交流(面会交流)について、できるだけよく話し合い、取り決めた内容を文書で残しておきましょう。

離婚を考えているかたは、今、様々な思いを抱え、将来のことまで考えるのは難しい状況かもしれません。しかし、まだ自立していないお子さんがいる場合には、その子の将来のために、離婚した後の養育費や親子交流について考えることはとても大切なことです。離婚によって夫婦の関係はなくなりますが、離婚をしても、こどもとの関係では、父母のどちらも親であることは変わりません。
こどもが自立できるまで健やかに成長していけるように、養育費や親子交流について話合いをし、取り決めたことを文書に残しておきましょう。

1離婚するとき、こどもの将来のために必要なこととは?

成長していくこどものイメージ。

こどもにとって、父母の離婚は大人以上に大きな出来事であり、将来への不安や緊張を抱えることになります。そうした中で、最も大切なことは、親として、こどものことを第一に考えることです。こどもとの関係では、離婚をしても、父母のどちらも親であることは変わりません。

まだ経済的・社会的に自立していないこどもがいる夫婦が離婚する場合は、養育費や親子交流など、こどもに関する事柄について、しっかりと決めておく必要があります。

離婚後の親子交流のイメージ。父親が公園でこどもたちと遊んでいる。
離婚後の親子交流のイメージ。母親が娘と話をしている。

2養育費とは?

こどもが経済的・社会的に自立するまでには、衣食住や教育、医療など、様々なことにお金がかかります。こうしたこどもの生活や教育に必要なお金が「養育費」です。こどもと一緒に暮らし、日常の世話や教育を行う親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。

こどもを育てることは親の義務です。離婚後にこどもと暮らす親だけでなく、離れて暮らすこととなった親も、こどもの親であることに変わりはなく、こどもの成長を支えるという親の責任も変わりません。離れて暮らすことになる親も、こどもに対して自分と同じ水準の生活ができるようにする義務があります。

離婚後も父母の双方が親としてこどもの成長を経済的に支えるためにも、離婚するときには、養育費の支払いについてきちんと取り決めておくことが重要です。

養育費について取り決めておくべきことの例

養育費を決めるときは、次のようなことについて、よく話し合って具体的に取り決めておきましょう。

金額

父母の経済状態やこどもの事情に応じてよく話し合って決めましょう。
その際には、家庭裁判所の家事調停や家事審判の手続においても目安として参照されている「算定表」を参考にしてもよいでしょう。
「算定表」は、父母双方の収入額と、子の年齢・人数に応じて、標準的な養育費などの目安を算出するものです。家事調停や家事審判の手続においては、「算定表」の額を参照しつつ、個別の事情も考慮して、具体的な養育費などの額が検討されることが多いようです。
「算定表」は、最高裁判所のウェブサイトに「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」の研究報告とともに「改定標準算定表(令和元年版)」が掲載されています。

支払期間

養育費をいつからいつまで支払うか、明確に支払期間を決めておくことが望ましいでしょう。例えば、「〇年〇月まで」、「こどもが〇歳に達した後に初めて到来する3月まで」などと具体的に定めておくことが考えられます。
支払期間を取り決めるときは、こどもが進学する可能性などを踏まえて、こどもが経済的に自立することが見込まれる時期を考慮して、こどもの成長、自立のために十分な期間を設けておくことにしましょう。

支払方法

毎月、決まった日に一定の金額を支払う例が多いようですが、取決めの仕方次第である程度の期間の分を一括して支払うことも可能です。

臨時の費用

大学などの入学金や、突然の傷病による入院・治療費など、臨時の費用が生じた場合の取扱いについても、決めておくことが考えられます。

3親子交流(面会交流)とは?

親子交流とは、こどもと離れて暮らす親が、こどもと定期的、継続的に、会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙、SNSなどで交流することをいいます。

父母の離婚を経験したこどもは、一方の親と離れることを寂しいと感じたり、「自分が悪いことをしたから、こんなことになったのではないか?」「自分を嫌いになっていなくなってしまったのではないか?」などと不安な気持ちになったりします。親子交流は、そんなこどもに、父母それぞれの立場から、「あなたは悪くないよ」「離れていても大好きだよ」という気持ちを伝えていく一つの方法です。こどもは、親子交流を通して、いずれの父母からも大切にされているという安心感を得ることができ、そのことが生きていく上での大きな力となります。

親子交流によって両親どちらとも交流しているこどもたち。

親子交流の方法や時期、回数などについては、こどもにとって望ましい親子交流かという視点から、こどもの年齢や健康状態、生活状況などを考えて、無理のないように決めましょう。
例えば、離婚により離れて暮らす親とこどもが暮らす場所との距離や移動の時間なども考慮した方がよいでしょう。
また、親子交流中は相手の悪口を言わないなど、親同士が互いに守らなければならないルールを具体的に決めておくようにしましょう。

親子交流について取り決めておくべきことの例

親子交流のルールを決めるときは、次のようなことについて、よく話し合って具体的に取り決めておきましょう。

頻度

週又は月に何回程度か、など。

内容

1回当たり何時間程度を目安とするか。日帰りか、宿泊を伴うか。長期の休みなどの場合は、一定期間の宿泊を伴う交流を行うか、など。

場所

親子交流を行う場所、こどもの受渡し場所など。

その他

こどもの急病などで予定どおりに親子交流を行えないときの調整をどのようにするか、プレゼントに関する取決めなど。

親子交流に不安がある場合

相手から身体的、精神的暴力を受けるおそれがあるなど、交流をすることで、かえってこどもの安心・安全を害する場合にまで交流を行う必要はありません。

また、父母だけで親子交流を行うことに不安がある場合は、無理をせず、第三者に間に入ってもらうことも検討しましょう。こどもの受渡しなど、親子交流の支援活動を行う民間の団体もあります。これらの団体は、当事者の間に入って、連絡の代行のほか、こどもの受渡しや交流への付添いなどの活動をしています(費用などの詳細については、各団体にお問い合せください。)。

4養育費や親子交流(面会交流)の取決め文書を作るには?

養育費の支払いや親子交流の取決めの内容は、後にトラブルにならないよう、文書に残しておきましょう。

「合意書」を作成する

こどもの養育費や親子交流について話合いができたら、「合意書」を作成しましょう。離婚届を出す際に「合意書」を提出する必要はありませんが、こどもの健やかな成長のためにも、できる限り作成するように努めてください。2通作成し、双方が1通ずつ保管してください。
こどもの成長や、離婚後の父母の状況によっては、合意書の修正・変更が必要になることがあるかもしれません。その場合も、よく話し合い、こどもに十分に配慮するようにしましょう。

合意書を作成しやすくするために、法務省のウェブサイトに「こどもの養育に関する合意書」のひな形が掲載されています。このほか、同ウェブサイトには、養育費と親子交流の取決め方や、その実現方法について分かりやすく説明したパンフレット「こどもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」なども掲載されていますので、参考にしてください。

この合意書のひな型は、一般的に必要と考えられている項目を記載・紹介しているものです。細部はこどもの立場に立って、それぞれの事情に応じて取決めを行って記載してください。

こどもの養育に関する合意書の記入例

「公正証書」を作成する

公証人が作成する「公正証書」で養育費の取決めをしておくと、養育費が支払われなかったときでも、相手の財産を差し押さえるなどして、そこから養育費を回収する裁判上の手続(強制執行)を利用することができます。
公正証書の作り方や手数料などについては、最寄りの公証役場にご相談ください。

5相談したいときは?

養育費や親子交流について、市区町村によっては相談窓口を設置したり、無料法律相談を行ったりしているところもありますので、まずは、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
そのほか、母子家庭等就業・自立支援センター、養育費等相談支援センターでも、相談に応じているところがあります。

裁判手続や強制執行手続などの法律的な問題について相談したい場合には、日本司法支援センター(法テラス)に相談してみてもよいでしょう。
また、家事調停手続の申立てなどをお考えであれば、必要な書類などについて、裁判所のウェブサイトをご覧いただくほか、最寄りの家庭裁判所に問い合わせてみましょう。

養育費や親子交流についての相談窓口

法律的な事項についての相談窓口

コラム

養育費と親子交流についてのよくある質問

Q 養育費や親子交流の取決めをしないと離婚はできないの?

A 離婚できますが、できる限り離婚前に、取決めをすることが望ましいといえます。
民法には、離婚をする際に父母が話し合って決めるべき事柄として養育費の分担や親子交流が定められており、これらの取決めをする際には、こどもの利益を最優先して考慮しなければならないとされています。しかし、養育費や親子交流の取決めをしていなくても離婚届は受理され、離婚は成立します。
離婚という結論を出すまでには、様々ないきさつや事情があり、親にとってもそれを乗り越えて新しい生活を築いていくことは大変なことです。しかし、こどもにとっては親以上につらいことであり、こどもが父母の離婚を乗り越えて健やかに成長するためにも、養育費や親子交流について取り決めておくことはとても重要です。
養育費や親子交流の取決めは、できる限り、離婚をする前に行っておくことが望ましいですが、離婚後であっても、これらの取決めをするのが望ましいことは変わらないといえます。

Q 親子交流に応じなければ養育費を払ってもらえないの?

A そうではありません。
親子交流と養育費の支払いは別々の問題ですので、「親子交流に応じられなければ養育費を支払わなくてよい」ということにはなりません。同様に、「養育費が支払われないから親子交流もさせなくてよい」ということにもなりません。
養育費も親子交流も、その目的はこどもが心身ともに健やかに成長できるよう、親として支えることです。養育費についても親子交流についても、こどもの幸せを第一に考えましょう。

Q 相手が養育費や親子交流について話合いに応じない場合は?

A 家庭裁判所の家事調停手続を利用することができます。
相手が話合いに応じない場合や話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の家事調停手続を利用することができます。調停は、裁判官と民間から選ばれた調停委員が間に入り、非公開の場で双方の言い分を聞きながら、話合いによって適切な解決を目指す手続です。養育費や親子交流について、調停手続で話合いがまとまらない場合は、調停手続は終了しますが、引き続き、家事審判手続に移行し、そこで必要な審理が行われた上で、審判によって結論が示されます。

Q 養育費や親子交流の取決めをしたが、約束を守ってもらえない場合は?

A 履行の確保の手続や強制執行の手続ができます。
(1)履行の確保の手続
養育費の分担や親子交流の実施が家事調停や家事審判の手続などで決められた場合には、相手に対してそれを守るよう勧告することを家庭裁判所に求めることができます(この手続に費用はかかりません。)。
また、家事調停や家事審判の手続などで決められた養育費の支払いを命じるよう、家庭裁判所に申し立てることもできます(相手が正当な理由なくこの命令に従わないときは、過料を科される場合があります。)。この命令の申立てには、1件につき、500円の手数料が必要です。なお、これらの手続では相手の財産の差押えなどはできません。

(2)強制執行の手続
養育費の分担が、一定の条件を満たす公正証書(執行証書)や、家事調停や家事審判の手続などで決められた場合には、これらの文書に基づいて、相手の財産を差し押さえるなどを行い、そこから養育費を回収する手続(強制執行)を利用することができます。相手にどんな財産があるか分からないときは、相手を裁判所に呼び出し、どんな財産を持っているかを、裁判官の前で明らかにさせて差押えに必要な情報を取得(財産開示手続)したり、銀行などの金融機関や登記所などに対し、相手の財産に関する情報を提供してもらう仕組み(第三者からの情報取得手続)を利用することができます。
また、親子交流の実施が調停・審判などで日時などを具体的に特定して決められた場合には、間接強制(履行がされない場合に間接強制金を課すことで義務者に自発的な履行を促す裁判上の手続)を利用することができる場合があります。
なお、父母が話し合って執行証書を作成せずに養育費の分担を決めた場合(掲載されている「こどもの養育に関する合意書」によって取り決めた場合も同様)には、改めて、執行証書を作成するか、家庭裁判所に家事調停などの申立てをすることが必要となります。

他のQ&Aも知りたいかたは、以下をご参照ください。

まとめ

離婚後の新しい生活を考えなくてはいけなくなったときには不安があるかと思いますが、こどももまた不安を感じています。こどもの将来のためにも、父母の双方がどのようにこどもの成長に関わり支えていくかを決めておく必要があります。養育費や親子交流について、必要に応じて支援を受けながら、しっかりと取り決めて、取決めの内容に誠実に対応していくことが大切です。

(取材協力:法務省 文責:政府広報オンライン)

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