梅毒が拡大しています!一人ひとりが予防と検査を!
「梅毒(ばいどく)」は、梅毒トレポネーマという病原体による感染症です。近年、「梅毒」の感染者が急増しています。梅毒は主に性行為によって感染し、感染に気づきにくいことから治療の遅れや感染拡大につながりやすい危険な感染症です。梅毒の拡大を食い止めるため、主な症状や予防策などをご紹介します。あなた自身と大切なパートナーを守るため、検査をぜひ受けましょう。
1梅毒とは?性的な接触によって感染し、放置すると心臓や脳に合併症を起こして死に至ることも。
「梅毒(ばいどく)」は、梅毒トレポネーマという病原体による感染症で、全身に様々な症状を引き起こします。
梅毒トレポネーマは、口や性器などの粘膜や皮膚から感染するため、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)が主な感染経路となっています。また、梅毒に感染している母親から妊娠・出産時にこどもに感染すること(先天梅毒)もあります。
梅毒に感染すると、3週間から6週間程度の潜伏期を経て、様々な症状が現れ、場合によっては死亡に至ることがあります(囲み記事「梅毒の主な症状」)。
その間、症状が軽くなったり消えたりする時期があるため、発症したことに気づきにくく、治療の遅れにつながる危険があります。
梅毒は1940年代以降にペニシリンによる治療法が普及してからは、早期に適切な治療を受ければ完治が可能になりました。
ただし感染しても再感染を予防する免疫は得られないため、完治した後も再度感染する可能性があります。
梅毒の主な症状
梅毒に感染すると、次のような症状が現れます。
I期:感染後約3週間
感染が起きた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりや潰瘍ができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。この時期は他の人に感染させやすいです。痛みがないことも多く、治療をしなくてもやがて自然に軽快します。しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、他の人にうつす可能性もあります。
II期:感染後数か月
治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹(バラ疹)が出るなど、様々な皮疹が出ることがあります。皮疹は治療をしなくても数週間以内に消え、また、再発を繰り返すこともあります。しかし、抗菌薬で治療しない限り、病原体である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。
アレルギーや風しん、麻しんなど他の感染症に間違えられることもあります。この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後にいろいろな臓器の障害につながることがあります。
晩期顕性梅毒(感染後数年から数十年)
感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることがあります。
また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産になったり、生まれてくるこどもの神経や脳などに異常をきたすことがあります(先天梅毒)。
(資料:厚生労働省「梅毒に関するQ&A」 )
2梅毒患者は増えているの?近年急増。男性は20代から50代、女性は20代が突出して患者さんが増えています。
日本では昭和23年(1948年)から梅毒の発生を報告する制度があります。報告された患者数は、昭和42年(1967年)の1万1,000人を最多とし、その後何回かの小さな流行はあったものの、おおむね減少傾向にありました。
しかし、平成22年(2010年)以降、梅毒患者の報告数は増加に転じています。特に最近は、平成25年(2013年)の1,228人から平成30年(2018年)は7,007人へと5年で6倍近くに急増しています。令和元年(2019年)、令和2年(2020年)には減少したものの、令和4年(2022年)には、12,966人(速報値)の梅毒患者が報告され、高い水準が続いています。
梅毒患者報告数

資料:厚生労働省
令和4年(2022年)は、12,966人(令和5年(2023年)1月5日時点集計値(速報値))。
3梅毒を予防するには?コンドームを使う、オーラルセックスの場合にも気をつける、パートナーは1人に限定する、など。
梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは、傷口からの浸出液、精液、膣分泌液、血液などの体液に含まれており、非感染者の粘膜や傷口などと直接接触することで感染します。
実際には、感染経路の多くが、性器や肛門、口などの、粘膜を介する性的な接触となっています。

このため、梅毒の感染を防ぐためには、次のようなことに注意してください。
必ずコンドームを使いましょう
コンドームを適切に使って、粘膜の直接の接触を避けるようにしましょう。避妊のためにピルを使用していても、コンドームを使いましょう。

オーラルセックス(口腔性交)・アナルセックス(肛門性交)にも気をつけましょう
コンドームを適切に使って、粘膜の直接の接触を避けるようにしましょう。避妊のためにピルを使用していても、オーラルセックスやアナルセックスでは妊娠の可能性がないこともあり、コンドームを使わない方が多いかもしれません。無防備なオーラルセックスやアナルセックスは梅毒を含む性感染症のリスクになります。コンドームを使用し、性感染症から身を守りましょう。
多数の相手と性的接触を持つと、感染する(又は感染させる)リスクが高まります
性的接触の際には、コンドームを適切に使うことで、梅毒の感染予防に有効です。
4心あたりがあるときは?早めに近くの医療機関や保健所で検査を。早期診断と治療が完治につながります。
医療機関で検査を受けましょう
性的接触の後、いつもと違う症状が現れるなどして、梅毒に感染しているか不安なときは、早めに医療機関を受診し、検査を受けましょう。
皮膚科や感染症科、また男性は泌尿器科、女性は産婦人科で診察を受けられます。口腔内に異常が生じた場合は、耳鼻咽喉科などで診察を受けてもよいでしょう。
梅毒に感染したかどうかは医師による診察と、血液検査(抗体検査)で判断されます。
また、地域によっては、保健所で匿名/無料で検査を受けられるところもあります。
詳細は最寄りの保健所にお問い合わせください。
検査を受けるときには、検査結果を正確に判断するために、感染の可能性がある時期や感染の予防状況(コンドームの使用等)について、医師に伝えましょう。
感染していた場合はパートナーも検査を
梅毒に感染していたと分かった場合は、周囲で感染の可能性がある方(パートナーなど)にも医療機関の受診・検査を奨めましょう。パートナーも感染していた場合は、一緒に治療を行うことが重要です。

もしも感染していたら?
医師の判断に応じた期間、抗菌薬を使用して治療します
医師の判断によりますが、抗菌薬の注射薬及び内服で治療します。場合によっては入院のうえ、点滴で抗菌薬の治療を行うこともあります。処方された内服薬は、医師が治療終了と判断するまで確実に飲むことが必要です。
性感染症にご注意を!まずは検査を受けましょう
梅毒のほかにも、性器クラミジア感染症や淋菌感染症などの性感染症が問題になっています。
性感染症の多くは、感染しても自覚症状が現れないことが多いため感染に気づかずにパートナーに感染を広げる危険があります。
性感染症の拡大を防ぐために、性感染症を知り、適切に予防しましょう。また、医療機関などで検査を受けましょう。
あなた自身とパートナーを性感染症から守るために。
厚生労働省が設置している「感染症・予防接種相談窓口」では、性感染症に関する情報提供や相談も行っています。お気軽にご相談を。
感染症・予防接種相談窓口
【電話番号】
050-3818-2242
【受付時間】
午前9時から午後5時(土日祝日、年末年始を除く)
※本相談窓口は、厚生労働省が業務委託している外部の民間会社により運営されています。
(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)