家の中の思わぬ危険。
乳幼児のやけど事故にご注意を!
令和4年(2022年)1月28日

寝返りからハイハイ、つかまり立ちへ。子どもは1歳~2歳のうちにどんどん心身が発達し、動き回る範囲が広がります。それに伴い、思わぬ事故の危険も増えていきます。ここでは家の中で発生しやすい「子どものやけど事故」について紹介します。
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乳幼児のやけど事故は多いの?
消費者庁や国民生活センターが収集している医療機関からの事故情報によれば、令和2年(2020年)12月までの約10年間に、炊飯器や電気ケトルなどによる2歳以下の乳幼児のやけど事故は計333件、グリル付こんろによる乳幼児のやけど事故は計50件が確認されています(※)。そのほかにも、カップに入った飲み物をこぼしたり、加湿器やストーブなどの暖房器具に触れたりなどして、合わせて約2,000件のやけど事故が起きています。
多くは手指などにやけどを負って通院する程度ですが、中には顔面や頭部をやけどする例もあるほか、顔面から胸、腹まで広い範囲にやけどを負って入院した例もあります。特に乳幼児は一般に大人より皮膚が薄いため、やけどのダメージが皮膚の奥深くまで影響して重傷化する可能性があります。
炊飯器や電気ケトル、グリル付こんろなど大人にとって身近な製品であっても、乳幼児にとってはやけど事故の危険が潜んでいることがあります。家の中で乳幼児が巻き込まれる事故のひとつ、やけど事故の事例と予防についてご紹介します。
(※):消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、消費生活において生命または身体に被害が生じた事故に遭い、参画医療機関を受診したことによる事故情報を収集するもので、2010年12月から運用を開始。
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どんなやけど事故が起きているの?
消費者庁に寄せられた情報から、家の中で起きた乳幼児のやけど事故の事例を紹介します。
[事例1]炊飯器の蒸気に触れてやけど(1歳)
保護者が炊飯器でご飯を炊いていたところ、横に立っていた子どもが炊飯器から出ていた熱い蒸気に触り、額にII度(※)、指にIII度(※)のやけどを負った。
[事例2]炊飯器を倒し、こぼれた熱いおかゆを浴びてやけど(0歳)
食器棚の引き出し式の下段(高さ50cm)に炊飯器を置き、おかゆを炊いていた。保護者が音と子どもの泣き声で気づいて見ると、炊飯器のふたが開いておかゆが床にこぼれ、子どもが倒れていた。子どもが炊飯器につかまり立ちをして炊飯器ごと転倒したものとみられる。子どもは顔面、腕、足にII度のやけどを負った。
[事例3]電気ケトルを倒しこぼれた熱湯でやけど(1歳)
テーブルに置いた電気ケトルのコードを子どもが引っ張ったためケトルが転倒し、こぼれたお湯を浴び、子どもが手、指、腕から背中にかけてII度のやけどを負った。
[事例4]グリル付こんろに触ってやけど(10か月)
グリルで魚を焼いていたところ、子どもがつかまり立ちをして高温になったグリルに手をついたため、手のひらにやけどを負った。
(※)II度のやけど:表皮より深い真皮までのやけどで、水ぶくれができるのが特徴。
III度のやけど:皮膚全層、さらに皮下組織まで損傷が及ぶやけど。
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子どものやけど事故を防ぐには?
乳幼児は、心身の発達に伴って急速に行動範囲が広がり、行動の内容も豊富になります。いろいろなものに興味をもち、危険かどうか分からないまま、興味を持った物に触れようとしたり、つかもうとしたり、口に入れようとしたりします。
子どもが触れることのできる範囲も発達に伴って広がります。
例えば1歳前後の子どもの身長は70~80cm程度ですが、これは一般的なグリル付きこんろのグリル窓と同程度の高さです。
発達に伴う乳幼児の心身の変化を踏まえて、家の中でのやけど事故の危険性を点検してみましょう。例えば次のようなポイントが考えられます。
(1)炊飯器、電気ケトル、電気ポットなど
a.高温の蒸気を避ける
- 乳幼児が触れない場所で使う。
- ベビーゲートなどを利用して、使用する場所に乳幼児が近づかないようにする。
- 高温の蒸気が出ない、または出る量の少ない機能(蒸気レスなど)の製品を使う。
b.使用中にふたが開かない、転倒しても中身がこぼれにくい製品を使う
- 炊飯器は、炊飯中にふたが開かないチャイルドロック機能のある製品を使う。
- 電気ポット、電気ケトルなどは、使用中に転倒してもふたが開きにくく、中身がこぼれにくい製品を使う。
c.電源コード、本体の置き場所に注意する
- 電源コードを子どもが引っ張ったり、移動中にひっかかったりしないよう、本体と電源コードが磁石などで着脱式の製品を選ぶ(強い力が加わると外れて本体が転倒しにくい)。ただし、電気ケトルの電源コードは着脱式のものがないため、電源コードをまとめるなど配慮する。
- 電気ケトルや電気ポットはお湯が出ないよう必ずロックし、子どもの手が届かない場所に置く。
(2)グリル付こんろ
グリル扉の窓の温度をテスト測定したところ、魚焼きの一般的な使用では最高で150度に達し、使用後15分程度を経過しても50度以上のままでした(※)。
- グリルの使用中は子どもを近づけないようにする。
- グリルの使用後も十分に冷めるまで子どもを近づけないようにする。
- 製品によっては複層ガラスを用いるなどして高温になりにくいグリル扉を使ったものや、そうしたグリル扉に交換できるものがあります。
※:国民生活センター「こんろのグリルでの子どものやけどに注意-使用後でもグリル窓は高温です-」
(3)その他
○アイロン
子どもが使用中の熱いアイロンに触れた、使用後に冷めるのを待っていたアイロンに子どもが触った、子どもがアイロンのコードを引っ張って倒れた本体やこぼれた熱湯でやけどをした、といったケースがあります。ヘアアイロンも同様に事故が発生しています。
アイロンを使用する際は子どもを近づけさせない、使用後も十分に冷めるまで子どもの手が届かないところに置く、といった配慮が大切です。
○テーブルクロス
子どもがテーブルクロスを引っ張ったり、つまずいたりして、上に置いた熱いスープやみそ汁、カップ麺、コーヒー・お茶などを倒して、やけどをすることがあります。
熱いものをテーブルや調理台に置く際には、子どもの手が届かないようにしましょう。
子どものやけど事故に関する情報を知っていれば、危険がどこに潜んでいるか、安全のためにどのような対策をすればよいかを考えるのに役立ちます。消費者庁や国民生活センターの下記のページでは、子どもの事故に関する情報を随時公表していますので、ぜひご活用ください。
○消費者庁
- 「特集:子どもを事故から守る!プロジェクト」
- 「子どもの事故防止ハンドブック」
こちらからダウンロードできます
消費者庁「子どもの事故防止ハンドブックについて」
○国民生活センター
もしも、やけどをしたときは?
やけどは初期の対応と治療が大切です。もしも、子どもがやけどをしてしまったときは、次のような対処をしてください。
すぐに10分以上冷やしましょう。刺激を避けるため、容器に溜めた水で冷やすか、水道水・シャワーを直接当てないようにしましょう。服の上から熱湯などがかかった場合は、脱がさずに服の上から冷やしてください。
- 全身の広い範囲・顔面などのやけどの場合: すぐに救急車を呼びましょう。
- やけどの範囲が片足、片腕以上の広範囲にわたる場合: 救急車を呼ぶか、至急病院を受診しましょう。
- やけどの範囲が手のひら以上の場合や水膨れの場合: 潰さないようにして、病院を受診しましょう。
なお、市販の冷却シートは、やけどの手当てには使えません。電気カーペットなどによる低温やけどは、見た目より重症の場合がありますので、症状が悪化したり、子どもが痛がることが続いたりなどした場合には病院を受診しましょう。
(出典:子どもを事故から守る!事故防止ハンドブック)
どのように対処したらよいか、病院を受診したほうがよいかどうかなど、迷ったときには、小児救急電話相談「#8000」に連絡してください。
小児救急電話相談事業(#8000)について
(取材協力:消費者庁、(独)国民生活センター 文責:政府広報オンライン)
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