屋内は原則禁煙!受動喫煙防止のルールを守りましょう
喫煙者にとって一服は至福のひと時。ただその一方で、望まない受動喫煙で困っている人もいます。「健康増進法の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)により、望まない受動喫煙をなくすための取組がマナーからルールへと変わりました。受動喫煙防止のためのルールのポイントをご紹介します。
1受動喫煙はどんな影響があるの?
たばこが健康に悪影響を及ぼすことは、多くの人が知るところです。喫煙は、肺がんをはじめとする多くのがん、心臓病や脳卒中などの循環器疾患、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患などにかかるリスクを高めます。
また、そのリスクは、たばこを吸わない人へ及ぶこともあります。喫煙者が吸い込む煙(主流煙)だけでなく、たばこから立ち昇る煙(副流煙)や喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)にも、ニコチンやタールはもちろん、多くの有害物質や発がん性物質が含まれています。本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。実は、たばこの有害物質は、主流煙よりも副流煙に多く含まれています。家族に喫煙者がいたり、喫煙可能なお店で働いたりするなど、受動喫煙にさらされる機会が多い人は、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群等のリスクが高くなるなど、健康への悪影響を受けることが分かっています。
2受動喫煙防止のルールとは?
受動喫煙による健康影響を防ぐため、受動喫煙対策を努力義務として盛り込んだ「健康増進法」が平成14年(2002年)に制定され、公共交通機関やオフィスなど様々な場所で禁煙や分煙の取組が広がっていきました。しかし、店舗や施設によって対策はまちまちで、受動喫煙にさらされる機会が依然としてある状況が続いていました。
そこで、平成30年(2018年)に、次の3つの趣旨で健康増進法が改正され、受動喫煙を防ぐための取組が「マナー」から「ルール」へと変わりました。
- 「望まない受動喫煙」をなくす
- 受動喫煙による健康への影響が大きい子ども、患者などに特に配慮する
- 施設の種類や場所にあった対策を実施します
この改正法によるルールは平成31年(2019年)1月から段階的に施行され、令和2年(2020年)4月1日から全面施行となりました。
受動喫煙対策ルールのポイントは次のとおりです。
1. 様々な施設において、原則屋内禁煙に
多くの人がいる施設や鉄道、飲食店などの施設は、原則屋内禁煙です。禁煙エリアで喫煙した個人に罰則(過料)が科されることもあります。
なお、施設によっては基準を満たした専用の喫煙室がある場合もあります。
また、学校・病院・児童福祉施設、行政機関、バス・航空機などは、敷地内禁煙で、喫煙室を設けることもできません。
ただし、屋外には受動喫煙を防止するために必要な措置が取られた場所に限り、喫煙場所(特定屋外喫煙場所)を設置することができます。
2. 20歳未満の人は、喫煙エリアへの立入りが禁止
20歳未満の人は、喫煙を目的としない場合であっても、喫煙エリアへの立入りは一切禁止となります。
そのため従業員であっても喫煙エリアに立ち入ることはできません。
3. 喫煙室がある場合には標識を掲示
施設の中に喫煙室がある場合には、施設の主たる出入口となる場所と喫煙室の出入口に、喫煙室の種類に応じた標識(ステッカーもしくはプレートなど)を掲示することが義務づけられています。
飲食店を選ぶときに、禁煙のお店を選びたい、もしくは喫煙室があるお店がいいなどの希望がある場合には、店舗の出入口にある標識を確認しましょう。
<喫煙が可能な場合>
屋内に喫煙ができる場所を設けるときには、法律で定められた次のような技術的な基準を満たさなければなりません。
- 喫煙室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m毎秒以上であること
- たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること
- たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されていること
※1 喫煙可能室
経営規模の小さな既存飲食店は、直ちに喫煙専用室等を設けることが事業継続に影響を与えることが考えられることから、経過措置として、喫煙可能室の設置を可能としています。喫煙可能室では、喫煙に加え、飲食等を行うことが可能です。
※2 喫煙目的室
シガーバーや、店内で喫煙可能なたばこ販売店、公衆喫煙所など、喫煙を目的とする施設(喫煙目的施設)については、たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準に適合した室に限り、喫煙目的室を設けることができます。喫煙目的室では、喫煙に加え、飲食(主食※3を除く)等を行うことが可能です。
※3 主食とは、社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、麺類等が主に該当しますが、主食の対象は各地域文化により異なるものであることから、実情に応じて判断していただくこととなります。
<参考:屋外の喫煙所に関して>
現在、屋外の喫煙場所設置に関する規制は法律や条例では設けられていませんが(※)、受動喫煙を生じさせることがないよう配慮することが求められています。
(※)第一種施設における特定屋外喫煙場所を除く
3受動喫煙対策のルールはいつから始まっているの?
改正法の一部が施行され、令和元年(2019年)7月1日から「学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等」では敷地内が禁煙となっています。令和2年(2020年)4月1日からは全面施行となり、学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等以外の多数の人が利用する様々な施設が原則屋内禁煙となりました。
令和元年(2019年)7月1日から
学校、児童福祉施設、病院、行政機関などが「敷地内禁煙」に
ただし、屋外で受動喫煙を防止するための必要な措置が取られた場所に、喫煙場所(特定屋外喫煙場所)が設置されている場合は、その中でのみ喫煙することができます。
令和2年(2020年)4月1日から
飲食店やオフィス、事業所、交通機関など、上記以外の様々な施設が「原則屋内禁煙」に
ただし、技術的基準を満たす喫煙専用室・指定たばこ(加熱式たばこ)専用喫煙室であり、喫煙専用室等の出入口に標識が掲示されている場合、その室内でのみ喫煙することができます。
受動喫煙対策は、望まない受動喫煙にさらされてしまうという問題を解決するための取組です。改正法によって、それがマナーからルールになり、守られない場合は罰則の規定も設けられました。従来のマナーと新たなルールによって、受動喫煙対策が進むことが期待されます。
屋外や家庭などで喫煙する際にも、望まない受動喫煙を防ぐために、周囲へのご配慮をお願いします。たばこを吸う人もたばこを吸わない人も、それぞれがお互いの立場を尊重し、気持ちよく過ごせる環境をつくっていきましょう。
(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)