あなたも伝統芸能の道を目指してみませんか?国立劇場伝統芸能伝承者養成事業

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歌舞伎のポーズ、竹本、鳴物の稽古を受ける若者と、隈取をし、衣装を着た歌舞伎俳優

歌舞伎や能楽、文楽などの伝統芸能は、無形の技であり、人から人へと伝承されてきました。この伝統芸能を未来へ継承していくため、国立劇場では、後継者を育成する伝統芸能伝承者養成事業に取り組んでいます。伝統芸能に興味がある、伝統芸能の道を目指したいと思っている若者の皆さん、あなたも挑戦してみませんか。

動画

伝統芸能の未来を担う~国立劇場伝統芸能伝承者養成事業伝統芸能の未来を担う~国立劇場伝統芸能伝承者養成事業【字幕付】
(4分36秒)

「新しい国に来たとおもえ」養成事業では人間国宝を含む一流の講師が歌舞伎界の常識や礼儀作法も含めて指導しています。受講料は無料。先人から受け継いだ技と魅力を未来へとつないでいます。舞台は若者たちに開かれています。【字幕付】
ナレーション:貫地谷しほり
※独立行政法人 日本芸術文化振興会調べ
歌舞伎音楽(鳴物)の演奏者40名のうち約4割に当たる15名が国立劇場伝統芸能伝承者養成事業の研修終了者です。(令和3年4月1日現在)

1伝統芸能伝承者養成事業とは?

伝統芸能とは、日本に古くからあった芸術と技能の総称を指し、演劇、音楽、舞踊や演芸があり、その多くは、明治時代以前に大成したものです。これらの芸能は、無形の技であり、長い時間をかけて師匠から弟子、親から子へと継承されてきました。その中でも能楽、文楽、歌舞伎、雅楽、組踊は、ユネスコの無形文化遺産に登録され世界的な評価を受けています。しかし、どの分野でも後継者不足に悩まされており、伝承者の数が減っています。

そこで、国立劇場では広く一般から研修生を公募し、伝統芸能の新たな担い手を養成する「伝統芸能伝承者養成事業」が行われています。伝統芸能の担い手となれるのは、その家柄に生まれたかただけだと思われがちですが、そんなことはありません。

この事業の始まりは、昭和45年(1970年)で、後継者の不足が危ぶまれていた歌舞伎俳優の募集でした。その後、歌舞伎音楽(竹本、鳴物、長唄)、大衆芸能(寄席囃子、太神楽)、能楽(三役)、文楽、組踊の9分野まで募集が拡大され、現在、この養成事業の出身者が、それぞれの舞台で活躍しています。

歌舞伎俳優
竹本
鳴物
長唄
寄席囃子
太神楽
能楽
文楽
組踊

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

2研修ではどんなことを学ぶの?

この養成事業の研修では、2年から6年かけて、人間国宝を含む一流の実演家などが務める講師からの直接指導のもと、実技はもとより、それぞれの研修分野で伝承者となるために必要な常識や礼儀作法などを基礎から学びます。

研修生になるための試験は作文、簡単な実技試験、面接などで、経験の有無は問われません。実際、この養成事業の研修生は、経験者だけではありません。この養成事業を知って伝統芸能に興味を持ち、未経験で研修生となり、現在活躍している方も大勢います。伝統芸能のことを深く知らなくても、研修生となってから、じっくり学んでいくことができます。実技の多くは、講師を務める先生方のまねから始まりますが、研修生になって初めて経験するということは変な癖がついていないので、短い時間で正しく技術を習得できるという面もあります。覚えることはたくさんありますが、未経験であっても心配はいりません。

また、研修の途中で行われる適性審査を経て、研修を修了すると、それぞれの舞台出演への道が開かれます。この養成事業の出身で重要無形文化財の保持者(いわゆる「人間国宝」)に認定されている方もいます。努力次第では、講師を務める実演家の先生方と同じ舞台に立つことも夢ではありません。
なお、受験料や受講料は無料で、奨励費を貸与する制度もあります。

研修分野

(1)歌舞伎俳優 令和5年4月開講 研修生募集中!

歌舞伎は、400年ほど前に奇抜な扮装やしぐさで人目を惹いた「傾き者(かぶきもの)」の風俗を取り入れ流行した「かぶき踊り」が始まりといわれています。その後、能楽や人形浄瑠璃など、様々な芸能や文化と交流しながら、外来の楽器を用いた音楽や複雑な物語による構成など、新しい要素を次々と取り入れて、独特の様式を持つ総合的な演劇として発展しました。

研修は2年間で、歌舞伎実技、立廻り・とんぼ(宙返り)、化粧、衣裳、日本舞踊、義太夫、長唄、鳴物、箏曲、作法など歌舞伎俳優になるための基礎を学ぶほか、舞台実習、公演見学なども行われます。

歌舞伎俳優の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

歌舞伎俳優研修生の1日(例)

10:00
研修開始
稽古着に着替え、自習および研修の準備。

10:30
化粧
実際の楽屋と同様の鏡台を使用し、近習(きんじゅ:主君の側近くに仕える侍)や男役、
女役の化粧の基本を習得します。
授業は1コマ80分。

12:00
休憩・昼食

13:00
歌舞伎実技
舞台で演じられる歌舞伎のセリフを発声・発音・アクセントからしっかり教わります。先生のお手本をまねて演技の稽古をします。

14:30
日本舞踊
舞台での立ち居振る舞いの基礎である日本舞踊、姿勢、基本の動作、扇子の使い方を教わります。

16:00
立廻り・とんぼ
刀・十手・棒・長刀等を使用した基本的な型の立廻りと、三徳(さんとく)や返り立ちなどのとんぼを繰り返し稽古します。

18:00
研修終了
今日一日で学んだことを研修日誌にまとめ、明日に向けての準備。

(2)歌舞伎音楽(竹本)

竹本は、歌舞伎における義太夫節の演奏者です。義太夫狂言には欠かせない存在で、太夫の語りと三味線により、情景や登場人物の心理を表現します。

研修は2年間で、義太夫と三味線の稽古を中心に、筝曲、胡弓、狂言などの実技稽古に加え、作法、習字といった基礎を学ぶほか、楽屋実習、公演見学なども行われます。

竹本の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(3)歌舞伎音楽(鳴物)

鳴物は、太鼓や鼓など、三味線以外の様々な楽器を担当し、歌舞伎の儀式的音楽や天候、自然、情景などを音楽や音によって表し、歌舞伎に臨場感を与え芝居を盛り上げます。舞台の下手(客席から向かって左側)にある黒御簾(くろみす)と呼ばれる御簾の中で演奏します。また、所作事(しょさごと:舞踊劇)では、出囃子といって、舞台上に出て演奏することもあります。

研修は2年間で、太鼓や鼓などの鳴物の稽古を中心に、笛、長唄、三味線など実技稽古のほか、作法、習字、楽屋実習、公演見学などを通じて必要な技術と心構えを学びます。

鳴物の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(4)歌舞伎音楽(長唄)

長唄は、歌舞伎とともに発展した音楽で、唄と三味線により演奏されます。黒御簾音楽として舞台下手の御簾内(下座)で情景や登場人物の心情を表現し、所作事(舞踊劇)では鳴物とともに舞台上で演奏します(出囃子)。
研修は3年間で、長唄、三味線、黒御簾音楽、鳴物の演奏法を学ぶほか、謡曲、作法、習字、楽屋実習、公演見学等などを通じて必要な技芸や知識を学びます。

長唄の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(5)大衆芸能(寄席囃子)

寄席囃子は、寄席に入ると聞こえてくる賑やかな音楽です。演奏者は、三味線の演奏技術に加え、様々な邦楽の知識が求められます。

研修は2年間で、長唄・三味線の技量向上をはかるほか、端唄(はうた)・俗曲(ぞっきょく)・鳴物の演奏、数百曲におよぶ寄席囃子の曲の習得、また、寄席での実習などを行います。

(6)大衆芸能(太神楽)

太神楽(だいかぐら)は、江戸時代末期に伊勢神宮や熱田神宮の御師(おし:祈祷師)たちが、獅子頭を担いで各地を廻る神事芸能に始まり、余興として曲芸などをレパートリーに加え、次第に娯楽色の濃いものとなり舞台芸能へ変化していきました。現在では寄席芸能に欠かせない演芸種目になっています。

研修は3年間で、太神楽曲芸の基本である“立てもの”と“投げもの”を中心に、獅子舞、囃子、舞踊、長唄、鳴物、寄席囃子、実習(前座見習)、公演見学などを通じて寄席での活動に必要な技芸を学びます。

太神楽の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(7)能楽(三役)令和5年4月開講 研修生募集中!

能楽は、能と狂言の総称で江戸時代までは猿楽と呼ばれていました。その始まりは、はるか千数百年も前に海外から渡ってきた芸能へその歴史を辿ることができます。

能楽の三役とは「ワキ方」「囃子方」「狂言方」のことで、「ワキ方」は主役の「シテ方」の演技を引き出す役を演じ、「囃子方(笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方)」は能の音楽を担い、「狂言方」は狂言や能の間狂言(あいきょうげん)を演じます。
研修は6年間で、謡、囃子、狂言、仕舞などの実技を学ぶほか、舞台実習、楽屋実習、公演見学などが行われます。

能楽(三役)の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(8)文楽 令和5年4月開講 研修生募集中!

文楽は、太夫の語りと三味線弾き、人形遣いが一体となって舞台を作り上げる総合芸術です。江戸時代初期に大阪で生まれ、いつの時代も変わらぬ人間の情を舞台で表現してきました。

研修は2年間で、義太夫、三味線、人形実技、箏曲、胡弓、謡、狂言、日本舞踊のほか、作法、舞台実習、公演見学などを通じて基礎を学びます。

なお、現在の文楽の技芸員(太夫・三味線・人形)の約半数は、文楽研修修了者です。

文楽の研修風景

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

(9)組踊 令和5年4月開講研修生募集終了

組踊(くみおどり)は、台詞、歌、踊りで構成された沖縄独特の歌舞劇です。中国から琉球王国の新しい国王を任命するためにやってくる冊封使(さくほうし)を歓待するため、創作されました。沖縄土着の芸能や故事を基礎に能、狂言、歌舞伎、さらには中国の演劇に影響を受けたものです。

研修は3年間で、組踊の代表的な演目6演目の習得を目指します。また、琉球芸能史や沖縄方言等に関する講義、地域芸能鑑賞、歌舞伎・能・文楽鑑賞などを通じて組踊の伝承者としてふさわしい知識と素養を身につけます。

研修の様子は、下記のウェブサイトでまとめられていますので、ご覧ください。

囲み

令和5年4月開講 研修生募集中!

現在、令和5年(2023年)4月に開講する3つの研修で、受験の応募を受け付けていますので、詳細は国立劇場ウェブサイト「養成事業」でご確認ください。実際の研修の様子をご覧いただける研修見学会のお知らせや研修修了者のメッセージなどの情報が掲載されています。

(1)歌舞伎俳優        研修期間2年間
(2)能楽(三役)       研修期間6年間
(3)文楽(太夫・三味線・人形)研修期間2年間

歌舞伎、能楽(三役)、文楽の研修生募集のポスター

画像提供:独立行政法人日本芸術文化振興会

―― 問い合わせ ――

◆歌舞伎俳優研修について
独立行政法人日本芸術文化振興会 国立劇場調査養成部養成課
〒102-8656 東京都千代田区隼町4番1号

【電話】
03-3265-7105(直通)

【受付時間】
午前10時から午後6時まで(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)

◆能楽(三役)研修について
独立行政法人日本芸術文化振興会 国立能楽堂企画制作課養成係
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目18番1号

【電話】
03-3423-1483(直通)

【受付時間】
午前10時から午後6時まで(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)

◆文楽(太夫・三味線・人形)について
独立行政法人日本芸術文化振興会 国立文楽劇場企画制作課養成係
〒542-0073 大阪府大阪市中央区日本橋1丁目12番10号

【電話】
06-6212-5529(直通)

【受付時間】
平日午前10時から午後6時まで(年末年始を除く)

(取材協力:文化庁・国立劇場 文責 政府広報オンライン)

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