“こどもの貧困”は社会全体の問題 こどもの未来を応援するためにできること

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イラスト:こどもの貧困の例。だれもいない家で一人で食事をとるこども、音楽や美術、スポーツなどに触れる機会が少ない中学生、経済的な理由で進学をあきらめている高校生

「一日の中で栄養バランスのとれた食事は学校の給食だけ」「経済的な理由で進学をあきらめる」。世界有数の「豊かな国」であるはずの日本で「こどもの貧困」が問題になっています。生まれ育った環境によって、多くの家庭では当たり前の生活環境や教育の機会が得られないこどもたちがいます。そんなこどもたちの今と未来をより明るいものとするために、国や地方自治体、企業、NPOなどが行っている取組、そして、私たち一人ひとりができることについてその一例を紹介します。

動画

こどもの貧困 生まれ育った環境で、将来の夢を閉ざさないために【字幕付】
(3分20秒)

様々な家庭の事情から、健やかな成長に必要な生活環境や、教育の機会を得られないこどもたちがいます。こういったこどもの貧困に対して、政府や地方自治体の支援とともに必要なのが、‟こどもたちに身近な距離で、一人ひとりに寄り添える支援”。こども食堂やフードバンク、学習支援などこどもたちの未来を応援するために取り組まれている、地域に密着した草の根の支援活動を紹介します。【字幕付】
ナレーション:貫地谷しほり

1日本の中でも「こどもの貧困」があります

日本における「こどもの貧困」の現状は、見えにくいといわれています。なぜなら、親やこどもに貧困であるという自覚がなかったり、貧困の自覚があっても周囲の目を気にして行政の支援を求めなかったり、また、頼れる親戚も近隣付き合いもなく地域の目が届かなかったりすることがあるためです。
貧困というと「家がない」「食べる物がない」など、生きていく上で必要な生活水準が満たされていない状態(「絶対的貧困」といいます。)を想像するかもしれませんが、ここでいう貧困とは、現在の日本の経済や生活の水準において大多数の世帯に比べて貧しい状態(「相対的貧困」(※)といいます。)を意味します。
厚生労働省の調べによれば、日本の17歳以下のこどもの貧困率は11.5%(2021年)で、約8.7人に1人のこどもが貧困状態にあるともいわれています。家庭が「相対的貧困」の状態にあることで、健やかな成長に必要な生活環境や教育の機会が確保されていない、次のようなこどもがいます。
※相対的貧困:その国の所得(等価可処分所得)の中央値の半分に満たない状態。

  • 栄養バランスのとれた食事は、一日の中で給食しかない
  • 高校や大学、専門学校に進学したいけれど、経済的な理由であきらめている
  • 頑張っても仕方ないと将来への希望をなくし、学ぶ意欲をなくしている
  • こどもだけの時間が多く、保健衛生などの知識や生活習慣が身につかない
  • 視野を広げる機会や文化的な体験に乏しく、こんな人になりたいというロールモデルがいない
  • 人とのつながりが少なく、社会的に孤立している

こどもの貧困は社会の未来にも大きく影響します

こどもの貧困は、次世代にも連鎖します。親の収入が少ないと、こどもが十分な教育を受けることができず、こどもが進学を諦めたり、就職のチャンスが乏しくなったりすることがあります。そのため、結果として、そのこどもが大人になっても収入の確保が困難になり、親から子へ、子から孫へと連鎖して貧困から抜け出すことができなくなるおそれがあります。また、少子化の時代に、この問題を放置していると、国や地域社会、企業の資源である人材に深刻な影響を与え、大きな社会的損失となります。
そこで、社会全体で貧困の連鎖を断ち切り、こどもたちの未来を応援する必要があります。こどもの貧困は、個人や家庭だけの問題ではありません。

図:貧困の連鎖。「親の収入が少ない」「教育を十分受けられない」「進学・就職のチャンスが乏しい」「収入の確保が困難に」「大人になっても貧困に」、そして再び「親の収入が少ない」につながるというように、貧困は連鎖する。

2国や地方自治体が行う支援はどんなもの?

こどもたちの今をより明るくし、未来への貧困の連鎖を断ち切るために、国や地方自治体では教育費や養育費の軽減をはじめ、就職や家庭に関する相談窓口などの様々な支援策を設けています。この章では、その一部を紹介します。

(1)生活・子育ての費用に関する支援

児童手当

中学校卒業までの児童を養育しているかたに支給される手当です。(問合せ先:各市区町村)

児童扶養手当

父母の離婚などひとり親家庭の児童で18歳に達する日以降の最初の3月31日まで支給される手当です。(問合せ先:各市区町村)

母子父子寡婦福祉資金貸付

ひとり親家庭が利用できる経済的支援です。(問合せ先:各市区町村、都道府県(一部の町村のかた))

(2)教育費の負担に対する支援

幼児教育・保育の無償化

3歳から5歳児クラスの幼稚園、保育所等の利用料が無償になるなど。

就学援助

小中学生の保護者に学用品費や給食費等の援助です。(問合せ先:各市町村)

高校生等の修学支援

国公立私立を問わず高校等の授業料や、その他の教育費負担の軽減制度です。

高等教育の修学支援新制度

大学・短大・高等専門学校、専門学校等の授業料減免と給付型奨学金です。

高等学校卒業程度認定試験合格支援

ひとり親家庭の親又は子が、高卒程度認定試験合格のための講座を受講するための費用を支援します。

(3)就業・生活の相談

生活困窮者自立支援制度

働きたくても働けない、住む所がないなど生活全般の困りごとの相談窓口です。窓口では一人ひとりの状況に合わせた支援プランを作成し、専門の支援員が相談者に寄り添いながら、他の専門機関と連携して、解決に向けた支援を行っています。

母子家庭等就業・自立支援センター

ひとり親への就業支援や、弁護士等のアドバイスを受け養育費の取り決めなどの専門的な相談を行う「母子家庭等就業・自立支援センター事業」を実施しています。

マザーズハローワーク

子育てをしながら働きたいかたの就職支援を行っています。

(4) こどもや家庭のことに関する相談

スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー

学校現場でこどもや保護者の心のケアや支援を行います。

こどものSOS相談窓口

こどもが相談できる様々な窓口を紹介しています。

一般社団法人 生活困窮者自立支援全国ネットワーク

生活が苦しいご家庭のこどもの学習や進学について、こどもと保護者を支援します

ひとり親家庭のこどもの生活・学習支援

ひとり親家庭のこどもに、放課後児童クラブ等の終了後、学習支援や食事の提供等を行います。(問合せ先:各市町村、都道府県(一部の町村のかた))

ここで紹介した支援のほかにも、各地方自治体が独自に行っている支援もあります。詳しくは下記のページで紹介していますので、ご覧ください。

3NPOや地域コミュニティーなどが行う支援はどんなもの?

見えにくい「こどもの貧困」に対応するために国や地方自治体の支援に加えて、NPOや地域コミュニティーなどが、「学びの支援」「居場所の提供・相談支援」「衣食住などの生活の支援」をはじめ、「保護者の就労支援」「児童養護施設等の退所者等や里親・特別養子縁組に関する支援」などの支援を行っています。この章では、これらの具体的な取組の一部を紹介します。
また、こうした地域の活動を支援するために、政府が展開する「こどもの未来応援国民運動」では、「こどもの未来応援基金」(次の章を参照)による支援金を交付しています。

■学びの支援

塾や習い事など学校以外での学びや体験に恵まれないこどもを対象に、学習環境の確保や、学ぶ意欲・学力の向上を助ける取組が行われています。

NPO法人まんまるサポート(活動地域:香川県高松市)

不登校やひとり親世帯、放課後の居場所がないなど、学校や家庭以外の場所での支援が必要なこどもを対象に、学習支援を行っています。大学生や教師OBなどが、小学生には宿題や長期休暇の課題、中学生や高校生には定期テスト対策に加え、受験を控えた中学3年生には入試対策など、こどもの学年特性やニーズに合わせて個別にサポートしています。
参加したこどもには、「学習に対する集中力が向上した」、「登校への意欲が高まった」、「これまで自分だけの力ではできなかった宿題をやり遂げることができ、自信をもって登校できるようになった」などの変化が見られました。その結果、高校を受験した生徒は、志望校に合格し、進学の夢を叶えることができました。
また、学習支援のほかにも、地元企業や農家での職業体験、さらには生活のスキル習得のため料理教室や裁縫教室などを開催しています。

(写真:NPO法人 まんまるサポート)

■居場所の提供・相談支援

経済的に困窮している親やこどもが、社会的に孤立しないようにするため、居場所の提供や相談支援などの取組が行われています。

一般社団法人ヒューマンワークアソシエーション(活動地域:大阪府)

団地の困窮世帯のこどもを対象に、学校のない土曜日に、小規模のこども食堂を開いています。食事を提供するだけでなく、学習支援やスポーツ活動を行っており、これらの活動で得た情報は、地域の人権協議会で共有し、地域一体となって困窮世帯をサポートしています。
また、不登校などをきっかけに低下した自己肯定感を高めてもらうため、まずは自分がやりたいことから始めてもらうアプローチ「やりたいことから始める学習支援」を行い、こどもたちの自信につなげています。
さらに、海外ルーツの生徒の割合が多い地域の高校では、相談への第一歩として、校内の一教室でカフェを運営し、リラックスした雰囲気の中で気軽に話しながら、必要に応じたサポートを行っています。

(写真:一般社団法人ヒューマンワークアソシエーション)

■衣食住など生活の支援

経済的に困難な状況にある子育て家庭やこどもが、栄養のある食事を確保したり、正しい生活習慣を習得したりするための取組や行政の支援につながりにくい家庭の支援が行われています。

ハピママメーカープロジェクト(活動地域:埼玉県川口市)

夜間に働くシングルマザーは、生活時間の違いや周囲の偏見などから、問題を抱えていても行政の支援や支援団体につながりにくい現状があります。そこで、そのようなシングルマザーを対象にフードパントリー※で支援しています。食料の配布だけでなく、企業や個人からの寄付による衛生用品や生活用品も無償で配布しています。また、ハロウィンやミニ縁日など親子で楽しめるイベントなども開催しています。また、必要な支援ができるよう弁護士や社会福祉士、心理士、スクールカウンセラーなどと相談事業も行っています。

※フードパントリーは、経済的に困窮する人や世帯に、寄付や購入によって集めた食料品や生活用品などを配布する活動です。

(写真:ハピママメーカープロジェクト)

■保護者の就労支援

ひとり親世帯の保護者等の就労環境改善のため、就職相談や職業訓練の機会を提供するなど様々な就労支援を行い、安定した収入を得られるようにするための取組が行われています。

■児童養護施設等の退所者等や里親・特別養子縁組に関する支援など

児童養護施設を退所したこどもの生活基盤の確立や、里親委託などを支援する取組が行われています。

全国各地で展開されている支援活動を、もっと知りたいかたは、下記のページをご覧ください。

こどもの未来応援国民運動ウェブサイト「各地の支援団体」

コラム

こどもたちと家庭の変化

「こどもの未来応援基金」(4章を参照)による支援を受けた団体の活動に参加したこどもたちやその家庭に、様々な変化が現れています。その声を紹介します。

学びの支援

  • 学習に対する集中力が向上した。(中学3年生)
  • これまで自分だけのチカラではできなかった宿題をやり遂げることができ、自信をもって登校できるようになった。(小学5年生)
  • ここにきて前よりもテストの点数があがったから良かった。個人で教えてもらうから質問がしやすい。(中学3年生)

居場所の提供・相談支援

  • ご飯がおいしい。自分で用意しなくていい。(小学2年生)
  • 自分の家のように「ただいまー!」と入れた。学校であった話ができる。(中学2年生)
  • レジを手伝えたのが楽しかった。このような体験ができてとても勉強になるし楽しい。(中学生)
  • お休みの日なのに友だちと遊べるのが楽しい。(小学生)

衣食住などの生活の支援

  • こどもがとてもうれしかったようで、帰り道はずっとおしゃべりしていました。(3歳児の保護者)
  • たくさんの物資を届けてくださり、ありがとうございました。(保護者)
イラスト:小さいこどもがいる母子家庭に、様々な食品が入った箱を届けるフードバンクの担当者
イラスト:こどもたちの宿題を手伝うボランティア

(出典:子供の未来応援国民運動推進事務局「子供の未来応援基金 令和3年度活動事業報告書」)

4一人ひとりができることは?

政府は、支援したい人や企業と、草の根でこどもたちを支えているNPOなどの団体を結びつけ、支援の輪を広げるために「こどもの未来応援国民運動」を平成27年(2015年)から展開しています。
この運動では、寄付を通じて全国の草の根活動を支える「こどもの未来応援基金」と、こどもたちにモノや体験を届ける「マッチングネットワーク推進協議会」による取組を実施しています。この2つの事業へのかかわりを通じて、企業や個人レベルで、こどもの貧困をなくすための支援ができます。
以下にどのような事業を行っているか紹介します。無理なくできる範囲でこどもたちへ支援をお願いします。

(1)「こどもの未来応援基金」に寄付をする

「こどもの未来応援基金」は、企業や個人から広く寄付を募り、草の根でこどもに寄り添って支援活動を行うNPOなどの民間団体を支援します。それらの団体は毎年、全国から公募され、審査によって選ばれます。支援を受けた団体は活動実施後に、どのような活動を行ったかの報告が義務付けられています。そして、どのように基金が使われたのかを審査し公表しています。なお、基金はこどもの未来応援国民運動推進事務局の一員である独立行政法人福祉医療機構が管理しています。

図:こどもの未来応援基金の概念図。企業・団体、個人がこどもの未来応援基金に寄付。こどもの未来応援基金は、草の根で支援を行うNPO等の支援団体を公募し、支援する。子どもの未来応援基金は、内閣府・文部科学省・厚生労働省と福祉医療機構が事務局となり、運営。基金事業審査委員会が基金による支援先を審査し、結果を公表することで透明性・公平性を確保する。

寄付の方法

「こどもの未来応援基金」に寄付する方法には、直接寄付、ウェブ上のボタンをクリックして寄付、物を購入して寄付など、様々な方法があります。

銀行振込やクレジット決済により寄付をする
詳しくは下記のウェブサイトをご覧ください。

募金箱を通じて寄付をする
街の小売店や飲食店、イベント会場などに設置された募金箱を通じて寄付をすることができます。また、こどもの未来応援国民運動推進事務局では、募金箱の設置に御協力いただける企業や団体を募集しています。詳しくは下記のウェブサイトをご覧ください。

クリック募金
「こどもの未来応援基金『クリック募金』」は、特設ウェブページ上の「募金ボタン」をクリックするだけで、「こどもの未来応援基金」に寄付できます。
クリックするかたに金銭的負担はなく、基金に賛同する企業がクリックしたかたに代わり、1クリック1円を「こどもの未来応援基金」へ寄付します。
また、こどもの未来応援国民運動推進事務局では、クリック募金にご協力いただける賛同企業を募集しています。
詳しくは下記のウェブサイトをご覧ください。

その他の方法を通じて寄付する
多くの企業や団体の御協力により、特定の商品を購入すると売上げ等の一部が基金に寄付される「寄付付き商品」が販売されたり、古本などの買取価格が基金への寄付になるサービスが提供されたりするなど、様々な取組が行われています。そうした企業の取組を通じて、「こどもの未来応援基金」に寄付することもできます。

  • 寄付金付きの商品を購入する
  • 本やCDなどの不用品を提供して寄付する仕組みを利用する
  • ポイントプログラムや株主優待などで設定された寄付メニューを選択する
  • 寄付型自動販売機で商品を購入する
こどものみらい古本募金のチラシ
子供の未来応援「お宝エイド」のポスター

募金や寄付による支援については、支援事例一覧で様々な企業の取組を紹介しています。

(2)「マッチングネットワーク推進協議会」を通じてモノやサービス・体験を提供する

マッチングネットワーク推進協議会は、貧困状態にある家庭やこどもの支援に関わる「一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」「一般社団法人全国フードバンク推進協議会」の三つの団体と「こども家庭庁」が連携して活動する協議会です。
「こどもたちにモノや体験を提供して支援をしたいけれど、どの支援団体に協力すればいいか分からない」といった企業や個人のかたのために、提供先とのマッチングを行います。

図:マッチングネットワーク推進協議会の概念図。企業・個人がマッチングネットワーク推進協議会に相談し、マッチングネットワーク推進協議会が加盟団体と調整。

支援したいときは

まずは、こども家庭庁支援局家庭福祉課(こどもの未来応援国民運動担当)にご相談ください。協議会を構成する各団体に直接問い合わせることも可能です。

問合せ先

(取材協力:こども家庭庁 文責:政府広報オンライン)

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