下請事業者を守る「下請法」 親事業者との取引で困ったら相談を!

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イラスト:親事業者による「受取拒否」「買いたたき」「下請代金の支払遅延」「発注のキャンセル」のシーンと禁止マーク

「原材料費が高騰しているのに、値上げ交渉をさせてもらえない」「納品後、支払期日を過ぎても支払がない」…。こういった親事業者の行為は、下請法により禁止されています。下請法は、不公正な取引から下請事業者を守る強い味方です。親事業者に禁止されている事項、下請事業者が困ったときにどこに相談すればよいのかなどを紹介します。

動画

下請事業者を守る下請法【字幕付】
(2分59秒)

「原材料費が高騰しているのに、値上げ交渉をさせてもらえない」「納品後3か月経っても支払いがない」
こういった親事業者の行為は、下請法により禁止されています。下請法では、親事業者に対して11の禁止事項と、4つの義務を定めており、違反した場合は、勧告や指導が行われます。下請事業者の強い味方、下請法をご紹介します。【字幕付】
ナレーション:貫地谷しほり

1下請法とはどんな法律?

親事業者と下請事業者との間で行われる下請取引では、仕事を発注する側の親事業者のかたが、下請事業者よりも優位な立場になりがちです。そのため、親事業者の都合によって、下請代金の支払が遅れたり、代金を不当に引き下げられたりするなどして、下請事業者が不利な扱いを受けてしまう場合が少なくありません。
そこで、発注者である親事業者とその下請事業者との間の取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護するために定められているのが、下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)です。この法律では、下請事業者が不当に取り扱われないよう、親事業者に対して「4つの義務」と「11の禁止事項」を定めています。

下請法の対象となる条件

下請法の対象となる取引は、事業者の資本金規模と取引の内容で定義されます。

物品の製造委託や修理委託を行う場合

親事業者 下請事業者(個人を含む)
資本金3億円超 資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下 資本金1千万円以下

情報成果物作成委託・役務提供委託を行う場合(政令で定められる一定の取引は、物品の製造委託や修理委託の場合と同様です)

親事業者 下請事業者(個人を含む)
資本金5千万円超 資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下 資本金1千万円以下

2親事業者の4つの義務とは?

下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護のために、下請取引を行う際、親事業者には、次の4つが義務付けられています。

(1)発注書面を交付する義務

口頭発注によるトラブルを未然に防止するため、親事業者は発注に当たって下請代金の額などの必要事項を明確に記載した書面(又は電子メール等の電磁的記録)を直ちに交付しなければなりません。

【発注書面に記載が必要な事項の具体例】

  • 親事業者及び下請事業者の名称
  • 発注した日
  • 発注内容
  • 納期
  • 納入場所
  • 検査の完了期日
  • 下請代金の額
  • 下請代金の支払期日
  • 下請代金の支払方法 など

イラスト:下請法で定められた必要事項が記載されている注文書の例

(2)下請代金の支払期日を定める義務

親事業者は下請代金の支払期日を定めなければなりません。支払期日は、発注した物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内です。

(3)取引に関する書類を作成・保存する義務

親事業者は、下請事業者から受領した給付の内容や下請代金の額など、取引に関する記録を書類(又は電磁的記録)として作成し、2年間保存することが義務付けられています。

(4)支払が遅延した場合に利息を支払う義務

親事業者が支払期日までに下請代金を支払わなかった場合は、下請事業者からの給付を受領した日(発注した物品等を受領した日)から起算して60日を経過した日から実際に支払が行われるまでの期間について、その日数に応じ、遅延利息を払う義務があります。遅延利息は未払金額に年率14.6%を乗じて得た金額です。

図:支払期日は受領した日から起算して60日以内に定められます。支払期日に支払わないと支払遅延となり、60日を経過した日から実際に支払った日までの遅延利息(14.6%)を支払わなければなりません。注意:遅延利息を支払えば下請代金の支払を遅らせてよいというものではありま
せん。

3親事業者の11の禁止事項は?

下請事業者が親事業者からの不当な取扱いを受けないようにするために、下請法では、親事業者の次のような行為を禁止しています。
親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会が勧告や指導により、親事業者の違反行為をやめさせたり、下請代金の減額分を下請事業者に対して返還させたりしています。また、勧告が行われた場合、企業名などが公表されます。

(1)受領拒否の禁止

下請事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否することです。発注の取消し、納期の延期などを理由に納品物を受け取らない場合も受領拒否に当たります。

イラスト:納品に来た下請事業者に対して、親事業者が「前のが残っているからまだいいよ」と受取を拒否

(2)下請代金の支払遅延の禁止

発注した物品等の受領日から60日以内で定められている支払期日までに下請代金を支払わないことです。納品物品の検査等で日数がかかる場合でも、受領後60日以内に支払わない場合は支払遅延となります

イラスト:請求書を持ってきた下請事業者に対して、親事業者が「社内検査が終わっていないからまだ代金は支払えないよ」と支払を遅延

(3)下請代金の減額の禁止

下請事業者に責任がないのに、発注時に決定した下請代金を発注後に減額することです。名目や方法、金額に関わらず、あらゆる減額行為が禁止されています。

イラスト:下請事業者に対し、「発注した代金から5%引かせてもらいますね」と電話をする親事業者

(4)返品の禁止

下請事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品することです。

イラスト:下請事業者に対し、「在庫がいっぱいになったから返品するね」と段ボールに入った製品を返品する親事業者

(5)買いたたきの禁止

発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べて、著しく低い下請代金を不当に定めることです。現下のような労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの急激な上昇という経済環境においては、受注者からの要請の有無にかかわらず、発注者から積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けていくことが重要です。

イラスト:原材料費上昇の状況を説明し、見積書を提示する下請事業者に対し、「値上げの話は受けません」と拒否する親事業者

(6)購入・利用強制の禁止

下請事業者に発注する物品の品質を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者が指定する物(製品、原材料等)、役務(保険、リース等)を強制的に購入・利用させることです。

イラスト:下請事業者に対し、「うちの取引先の商品を買ってよ」と言う親事業者

(7)報復措置の禁止

親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、その下請事業者に対して取引数量の削減・取引停止など、不利益な取り扱いをすることです。

イラスト:下請事業者に対し、「言いつけられて迷惑したよ!おたくとはもう取引しないよ!」と言う親事業者

(8)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

親事業者が有償支給する原材料等によって下請事業者が物品の製造等を行っている場合、その原材料等を使って製造された物品の下請代金の支払日より早く、原材料等の対価を支払わせることです。

イラスト:下請事業者に対し、「材料はこれを使ってね。先払いだからね」と材料を渡す親事業者。下請事業者は製品の代金をもらう前に支払うんですか?」と困っている。

(9)割引困難な手形の交付の禁止

下請代金を手形で支払う際、銀行や信用金庫など一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付することです。

イラスト:下請事業者に「手形のサイトは150日だからね」と言いながら手形を提示する親事業者。下請事業者は「150日は長すぎますよ」と困っている。

(10)不当な経済上の利益の提供要請の禁止

親事業者が自己のために、下請事業者に金銭や役務、その他経済上の利益を不当に提供させることです。下請代金の支払とは独立して行われる、協賛金や従業員の派遣の要請などが該当します。

イラスト:下請事業者に対し、「うちも決算苦しいから○○円協力してくれないかな」と言う親事業者。下請事業者は「おたくの決算はうちと関係ないのに…」と思いながらお金を出している。

(11)不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、受領した後にやり直しや追加作業を行わせたりする場合に、下請事業者が作業に当たって負担する費用を親事業者が負担しないことです。

イラスト:下請事業者に対し、「お客さんの都合でこの前頼んだ仕事はキャンセルするから、お金も支払わないよ」と通告する親事業者。下請事業者は「もう材料を買っちゃいましたよ」と困っている。

4親事業者からの不当なしわ寄せを感じたときの相談窓口は?

親事業者から不当なしわ寄せを感じたときは、公正取引委員会の相談窓口に連絡してください。公正取引委員会では、相談した下請事業者の情報が親事業者に特定されないように徹底していますので、安心してご相談ください。

公正取引委員会の下請法相談窓口

下記のフリーダイヤル又はウェブサイトから相談できます。

最寄りの商工会議所・商工会

公正取引委員会では、商工会議所及び商工会との連携により、独占禁止法及び下請法に関する様々な相談を受け付ける「独占禁止法相談ネットワーク」を運営しています。相談窓口は、全国約2,200か所の商工会議所及び商工会に設置されています。

コラム

独占禁止法ってどんな法律?

独占禁止法は、私的独占、カルテル・入札談合などの不当な取引制限や不公正な取引方法を禁止し、公正かつ自由な競争を促進するための法律です。全ての事業者に適用されますが、とりわけ、中小・小規模事業者の皆さんにとっては、取引先の不公正な取引から 自分の会社を守ってくれる、中小・小規模事業者の味方ともいえる法律です。
一方、中小・小規模事業者の皆さんも、公共事業の入札で談合に参加したり、販売する商品やサービスの価格を協定したり、新規に参入する事業者を共同して妨害したりするなどすると、独占禁止法に触れてしまうおそれがあります。独占禁止法に違反する行為が認められた場合、違反事業者には排除措置命令や課徴金納付命令、罰則などの厳しい措置が採られます。その上、社会的信用を失うことにもつながります。
自らの事業活動が独占禁止法に違反しないために、また、不公正な取引から自分たちの会社を守るためにも、独占禁止法の内容を理解し、未然防止に努めることが重要です。
公正かつ自由な競争を妨げるものとして、独占禁止法で規制される行為には、主に次の3つがあります。

(1)私的独占

事業者が単独又は他の事業者と手を組み、不当な低価格販売、差別価格による販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害したりして市場を独占しようとする行為や、有力な事業者が、株式の取得、役員の派遣などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとする行為は、私的独占として禁止されています。

(2)不当な取引制限

事業者や事業者団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為は「カルテル」として禁止されています。
また、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する事業者たちが事前に相談して受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」も不当な取引制限の一つとして禁止されています。

(3)不公正な取引方法

自由な競争を減殺する行為、競争の基盤を侵害するような行為などは「不公正な取引方法」として禁止されています。
例えば、次のような行為が不公正な取引方法として禁止されています。

共同の取引拒絶

ある特定の事業者に対し、共同して、正当な理由がないのに取引を停止したり、注文数量に応じなかったり、その他取引の内容を制限したりする。

差別対価

不当に地域や取引先によって著しく異なる価格で取引する。

不当廉売

正当な理由がないのに商品の仕入価格以下で販売するなど、供給に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売することにより、他の事業者の事業活動を困難にさせる。

優越的地位の濫用

取引上優越的地位にある事業者が、取引相手に対して、取引に関係のない商品等を購入しなければ取引を打ち切るなどと今後の取引に影響すると受け取られるような要請をして購入させたり、発注した商品を一方的に受領拒否や返品したりすることにより不当に不利益を与える。

(取材協力:公正取引委員会 文責:政府広報オンライン)

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