ホテルや旅館に泊まる前に知っておきたい「旅館業法」改正のポイント

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旅行でホテルや旅館での滞在を楽しむ人たち

POINT
令和5年(2023年)12月13日から「旅館業法」が変わりました!

旅行や出張の際に、宿泊先で気持ちよく過ごすには、ホテルや旅館のおもてなしや私たちの過ごし方が重要です。ホテルや旅館などの健全な発達を図るとともに、施設の衛生水準を保ち、国民生活を向上させるために「旅館業法」という法律があります。令和5年(2023年)に、この旅館業法が改正され、同年12月13日から、ホテルや旅館の営業者は、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行った人の宿泊を拒むことができるようになりました。ホテルや旅館が、宿泊するかたにとっても、そこで働く方々にとっても、気持ちよく過ごせる場所となるように、改正のポイントをご紹介します。

1ホテル・旅館を取り巻く現状

「旅館業法」は、昭和23年(1948年)に制定された法律で、公衆衛生や国民生活の向上などの観点から、ホテルや旅館の営業者は、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるなどの宿泊拒否事由に該当する場合を除き、宿泊を拒んではならないとしています。
しかし近年では、いわゆる「迷惑客」など、過重な負担であって対応困難なものを繰り返し求められ、対応に苦慮する事例が少なくありません。
こうした現状も踏まえて、令和5年(2023年)6月に旅館業法が改正され、同年12月13日に施行されました。この改正によって、宿泊施設に過重な負担となり、ほかの宿泊者に対する宿泊サービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返す「迷惑客」の宿泊を拒むことができるようになりました。
また併せて、今回の改正により、ホテルや旅館の感染防止対策が充実しました。

コラム

ホテルや旅館における「迷惑客」の実態

迷惑客から営業者が無制限に対応を強いられた場合に、感染防止対策を始め、ホテルや旅館において本来提供すべきサービスが提供できず、業務に支障を来すおそれがあったなどの意見が、新型コロナウイルス感染症の流行期に寄せられました。

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が令和4年(2022年)8月に実施した調査では、半数近くのホテルや旅館の営業者が迷惑客などへの対応に一度は悩まされたことがある実態が明らかになりました。

  • 貴施設において、いわゆる迷惑客など、過重な負担であって対応困難なものを繰り返し求められて対応に苦慮した事例があったか。(複数回答)
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が実施した「旅館業法に関わる実態調査」の結果概要。「いわゆる迷惑客から、過重な負担であって対応困難なものを繰り返し求められて対応に苦慮した事例があった」と回答した調査対象の宿泊施設は全体の46.4%を占めている。
資料:全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会「「旅館業法に関わる実態調査」結果概要」から政府広報室作成

2改正ポイント1 カスタマーハラスメントへの対応

日本のホテルや旅館は「おもてなし」文化の象徴とされるものですが、理不尽な要求を繰り返すカスタマーハラスメントに当たる行為は許されるものではありません。
宿泊サービスに従事する従業員に対して行う次のような行為は、新たな宿泊拒否事由に該当するとして、営業者はそれらの行為をする者の宿泊を拒むことができるようになりました。

新たな宿泊拒否事由に該当する具体例

  1. ① 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、宿泊料の不当な割引や不当な慰謝料、不当な部屋のアップグレード、不当なレイトチェックアウト、不当なアーリーチェックイン、契約にない送迎など、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為
  2. ② 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為
  3. ③ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、特定の者にのみ自身の応対をさせることや、特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為
  4. ④ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、土下座などの社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為
  5. ⑤ 泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある宿泊者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為
  6. ⑥ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、対面や電話、メールなどにより、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為
  7. ⑦ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、要求する内容には正当性があるが、暴力や暴言など、要求方法に問題があるものを繰り返し行う行為
    ※身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求など
自らが宿泊する部屋の上下左右の部屋には宿泊者を入れるなという不当な要求を行う宿泊客のイメージ。
宿泊施設の従業員に対して長時間にわたって、対面で叱責したり、電話で不当な要求を繰り返す宿泊者のイメージ。

営業者が上記に該当する要求を求められ、応じられない場合は、まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明し、それでもなお同じ要求を求められる場合は、宿泊を拒むことができるとされています。

一方で、次の事例は、新たな宿泊拒否事由には該当しません。

新たな宿泊拒否事由に該当しない具体例

  1. ① 障害のあるかたが社会の中にある障壁(バリア)の除去を求めること(「合理的配慮」の提供を求めることを含む。)。

例えば、「合理的な配慮」の求めに当たると考えられるものとして、次のものが挙げられます。

  • 聴覚障害者への緊急時の連絡方法としてスマートフォン(又はフードコートなどで普及している「振動呼出し機」)の利用やフロント近くの客室の用意を求めること。
  • フロントなどで筆談でのコミュニケーションを求めること。
  • 視覚障害者の部屋までの誘導を求めること。
  • 車椅子で部屋に入れるようにベッドやテーブルの位置を移動することを求めること。
  • 車椅子利用者がベッドに移動する際に介助を求めること。
  • 車椅子利用者が高いところの物を従業員に代わりに取ってもらうよう求めること。
  • 精神障害のある者がエレベーターや階段などの人の出入りがあるエリアから離れた静穏な環境の部屋の提供を求めること。
  • 発達障害のある者が待合スペースを含む空調や音響などについての通常設定の変更を求めること。
  1. ② 医療的な介助が必要な障害者、車椅子利用者などが宿泊を求めること。
  2. ③ 介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めること。
  3. ④ 障害者が障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことについて、謝罪などを求めること。
  4. ⑤ 障害の特性により、場に応じた声の音量の調整ができないまま従業員に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることを把握できる場合。
  5. ⑥ 営業者の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求めること。(手段や態様が不相当なものを除く。)

3改正ポイント2 感染防止対策の充実に向けて

特定感染症(※)が国内で発生している期間に限り、次のような取扱いが行われます。

  • 営業者は、法令上の根拠をもって、宿泊者に対し、特定感染症の症状の有無などに応じて、必要な限度において感染防止に必要な協力を求めることができるようになりました。
  • 宿泊者は、正当な理由がない限り、その協力の求めに応じなければなりません。(ただし、協力の求めに正当な理由なく応じないことのみをもって、営業者が宿泊を拒むことは認められません。)

(※)「特定感染症」とは、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症及び指定感染症(注:指定感染症は、感染症法の入院などの規定が準用されるものに限る。)を指します。新型コロナウイルス感染症は、五類感染症に移行しているため、旅館業法における特定感染症の対象外となります(令和5年(2023年)12月現在)。

営業者は、旅館業法によって宿泊拒否をしてはならないと規制されているのと同時に、宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない義務も課せられています。営業者がその義務を果たすためには、相応の法令上の根拠をもって宿泊客に対して感染防止対策への協力を求められるようにする必要があるため、こうした改正が行われました。

このほか、宿泊拒否事由の一つである「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」が「特定感染症の患者等」(※)に改正されました。
(※)人に感染させるおそれがほとんどないと医師が診断したかた(退院基準を満たした結核患者など)の宿泊を拒否することはできません。

また、宿泊者名簿の記載事項について、「職業」が削除され、「連絡先」が追加されました。宿泊者は、営業者から請求があったときは、氏名や住所に加えて連絡先も告げなければならないこととなります。

4相談窓口

宿泊者側が営業者から不当な宿泊拒否などをされた場合や、また営業者側が宿泊拒否などに関して悩んだ場合には、地方自治体やその他の相談窓口にご相談ください。

地方自治体

地方自治体の相談窓口は、厚生労働省「旅館業法の相談窓口について」をご覧ください。

宿泊者向け相談窓口

消費者ホットライン 188(いやや)

受付日時:相談窓口によって受付時間が異なります。

全国どこからでも3桁の電話番号「188」でご連絡ください。お近くの消費生活センターや地方自治体の消費生活相談窓口をご案内します。
詳しくは、消費者庁「消費生活相談窓口」をご覧ください。

公益社団法人全国消費生活相談員協会(週末電話相談室)

東京

受付日時:土曜日・日曜日 10:00から12:00、13:00から16:00(年末年始を除く)

大阪

受付日時:日曜日 10:00から12:00、13:00から16:00(年末年始を除く)

北海道

受付日時:土曜日 13:00から16:00(年末年始を除く)

公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(ウィークエンド・テレホン)

東京

受付日時:日曜日 11:00から16:00(年末年始を除く)

大阪

受付日時:土曜日 10:00から12:00、13:00から16:00(年末年始を除く)

営業者向け相談窓口

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)

受付日時:9:00から18:00(年中無休)

宿泊者及び営業者向け相談窓口

日本司法支援センター(法テラス)

法的トラブルに関する相談窓口

受付日時:平日 9:00から21:00 土曜日 9:00から17:00(日曜日・祝日を除く。)
メールでのご相談は法テラス「メール受付」から。

みんなの人権110番

人権に関する相談窓口

受付日時:平日 8:30から17:15

詳しくは、法務省「みんなの人権」をご覧ください。

まとめ

今回の法改正は、ホテルや旅館が誰もが気持ちよく過ごせる場所になることを目指したものです。宿泊者もホテル・旅館の従業員も、この改正を機に、より一層気持ちよく過ごせるようにしていきましょう。

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

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