誰もが宿泊施設で気持ちよく過ごせるように! 旅館業法が変わります
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ホテルや旅館は、宿泊者が安心・快適に過ごせるよう様々なサービスを行っています。しかし、カスタマーハラスメントを受けることも多く、調査によれば、宿泊施設の約46パーセントは対応に苦慮した経験が!番組では、こういった背景などを踏まえ改正された「旅館業法」を深掘り!改正により、迷惑客のどういう行為が宿泊拒否に該当するのか。障害のあるかたが安心・快適に過ごせるよう配慮を求める行為は宿泊拒否に該当しない?感染症防止対策の充実とは?改正法による新しいルールは12月13日から運用開始です!
- ゲスト
-
厚生労働省 健康・生活衛生局
生活衛生課
課長補佐 竹中 良
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)12月10日
- 再生時間
- 16分57秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)12月9日
文字で読む
- 青木
- おもてなしといえば、ホテルや旅館で受けることが多いですが、今日は、そんなホテルや旅館での滞在を楽しむために知っておきたいテーマです!
- 足立
- 「旅館業法」というのは、ホテルや旅館などを営むかたに関する法律ですよね?私たちにも関係するんですか?
- 青木
- もちろんです。ホテルや旅館が、この法律にのっとり営業してくれているから、私たちは安心して施設を利用し、快適な時間や特別なひとときを過ごすことができているんです。
- 足立
- 旅館業法って、どんな法律なんですか?
- 青木
- 旅館業法とは、ホテルや旅館などの健全な発達を図るとともに、施設の衛生水準を保ち、国民生活を向上させるために、1948年に制定されました。この法律には、「ホテルや旅館の営業者は、宿泊拒否事由に該当する場合を除き、宿泊を拒んではならない」というルールがあります。「宿泊拒否事由」というのは、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるときなどとされてきました。
- 足立
- 基本的に「宿泊を拒んではならない」わけですね。
- 青木
- はい。ところが、近頃は明らかに度を超えたサービスや、対応が難しいことを繰り返し要求する、いわゆる「迷惑客」が少なくありません。
- 足立
- ホテルや旅館だけじゃなくて、飲食店にも過剰なサービスを要求したり、見当違いなクレームをつける人がいますよね。「クレイマー」とか「カスタマーハラスメント」なんて言葉もよく聞くようになりました。
- 青木
- 「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会」が昨年実施した調査によりますと、「いわゆる迷惑客から、過重な負担であって対応困難なものを繰り返し求められて対応に苦慮した事例があった」と回答した宿泊施設は、全体のおよそ46パーセントでした。
- 足立
- ほぼ半分近くじゃないですか!ホテルや旅館はそれによって通常の営業に影響が出てしまう場合もありますよね。一部の迷惑客のせいで、他のお客さんが迷惑を被るなんて、私は納得いきません。
- 青木
- そうですよね。こうした背景もあり、旅館業法が改正され、今月12月13日から施行されることになりました!ここからは、その改正ポイントを、厚生労働省 健康・生活衛生局 生活衛生課課長補佐の竹中 良さんと一緒に深掘りしていきましょう。
- 足立
- 竹中さん、早速、旅館業法の改正ポイントを教えてください。
- 竹中
- はい。今回、ご紹介したい改正ポイントは、大きく分けて二つあります。一つは「カスタマーハラスメントへの対応」、もう一つは「感染症防止対策の充実」です。
- 足立
- では、まず改正ポイント1、「カスタマーハラスメントへの対応」について教えてください。
- 竹中
- はい。改正された旅館業法では、新たに宿泊を拒否する事由が追加され、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行う迷惑客に対して、ホテルや旅館の営業者は、宿泊を拒むことができるようになります。カスタマーハラスメントに当たる特定の要求というのは、宿泊施設に過重な負担となり、他の宿泊客に対する宿泊サービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返す行為です。
- 青木
- 例えば、僕が迷惑客だとします。ホテルのフロントでチェックインの際、「ホテルのチェックイン時刻は15時、でも今は夜の23時ですよね。つまり僕が部屋を使う時間は8時間も少ないんだから、宿泊料は半分にしてよ」とか、「俺の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れるな」
- 足立
- 王様ですか!?
- 青木
- こういう自分勝手なことを言って過剰なサービスを繰り返し要求する場合は宿泊拒否できるようになります。
- 足立
- それは、拒否していいと思いますよ!竹中さん、他には、どんな例がありますか?
- 竹中
- 宿泊サービスに従事する従業員に対し、土下座を繰り返し求める場合や、特定の従業員を勤務させないことを繰り返し求める場合は、宿泊を拒否する事由に該当します。
- 足立
- 今、伺ったことは明らかに悪質なカスタマーハラスメントですね。
- 青木
- そうですよね。これに加えて、「対面や電話、メールなどにより、長時間にわたって不当な要求を繰り返し行う場合」や、また、要求する内容には正当性があっても、暴力や暴言など要求方法に問題がある要求を繰り返し行う場合も、宿泊を拒否する事由に該当します。
- 足立
- こうやって聞くと、繰り返し行うという点が一つのポイントになりそうですね。
- 青木
- そうなんです。ホテルや旅館がこうした要求を求められ、応じられない場合は、まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明し、それでもなお同じ要求を求められる場合は、宿泊を拒むことができます。
- 足立
- 「繰り返し」というのは、そういうプロセスを踏むということなんですね。
- 青木
- それにより、他のお客さんに迷惑が掛かったり、従業員のかたの業務に支障を来すわけですからね。ここまでは、旅館業法に新しく加わる「宿泊拒否事由」について深掘りしましたが、次は、「新しい宿泊拒否事由に該当しないもの」、そして旅館業法改正ポイントその2、「感染症防止対策の充実」を深掘りします。
- 足立
- 竹中さん、今度は旅館業法に新しく加わる「宿泊拒否事由」に該当しないものを教えてください。
- 竹中
- はい。障害のあるかたが、ホテルや旅館で安心して快適な時間を過ごせるように、合理的な配慮の提供を求めることは、新しい宿泊拒否事由に該当しません。
- 青木
- 例えば、ホテルや旅館に対して、「フロント等で筆談でのコミュニケーションを求めること」や「車椅子利用者がベッドに移動する際に介助を求めること」などです。
- 足立
- 障害のあるかたが安心や快適を求めてお願いすることは、カスタマーハラスメントではないですよね。
- 竹中
- はい。その他にも、「盲導犬の同伴を求めること」、「障害者が障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことについて、謝罪を求めること」、「大声を出すなど、その行為が障害の特性によることを把握できる場合」、そして「ホテルや旅館の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求めること」、これらは新しい宿泊拒否事由には該当しません。
- 青木
- 確かに、大声を出している人がいたら、カスタマーハラスメントに見えるけれども、それが障害の特性によるものであれば、それは仕方のないこと、と言えますからね。
- 竹中
- ただし、ホテルや旅館の故意・過失により損害を被って、何かしらの対応を求めるとしても、暴力や暴言など要求方法に問題があるものを繰り返し行う場合は、新しい宿泊拒否事由に該当します。
- 青木
- では、旅館業法の改正ポイントその2についても伺っていきましょう。「感染症防止対策の充実」について、竹中さん、ご説明をお願いします。
- 竹中
- はい。危険性の高い感染症を特定感染症として、その特定感染症が国内で発生している期間に限り、ホテルや旅館は、宿泊者に対して、その症状があるかどうかなどに応じて、感染防止に必要な協力を求めることができるようになります。また宿泊者は、正当な理由がない限り、その協力の求めに応じなければなりません。
- 青木
- 新型コロナウイルス感染症が流行していたとき、ホテルや旅館は宿泊客に対して感染拡大防止のために「体温の確認」「マスクの着用」などを依頼しましたが、応じてもらえず対応に困ったケースがありました。これまでの旅館業法では、宿泊客に対して感染防止対策への実効的な協力を求めることができなかったんです。そこで、改正旅館業法では、「特定感染症の感染防止に必要な協力を求めることができること」、また「宿泊者は正当な理由がない限り、その協力の求めに応じなければならないこと」を明記したんですよね、竹中さん。
- 竹中
- はい。ただし、これに従わないことのみをもって、ホテルや旅館が宿泊を拒否することはできません。法律に明記されたことにより、宿泊客に対して、感染防止対策への実効的な協力を求めることができるようになることを期待しています。
- 足立
- 特定感染症というのは、どういった感染症のことですか?
- 青木
- 感染症というものは、感染症法という法律により、感染力や症状の重さなどに応じて1類から5類まで分類されています。旅館業法における特定感染症とは、エボラ出血熱などの1類、SARSなどの2類に加え、新型インフルエンザなどの感染症や、新しい感染症及び指定感染症を指すんです。
- 足立
- なるほど。じゃあ、新型コロナウイルスは今は5類ですし、特定感染症ではないというとなんですか?
- 青木
- そうなんです!新型コロナウイルス感染症は、今は季節性インフルエンザと同じ5類なので、ホテルや旅館が法的な根拠を持って感染防止に必要な協力を求めるほどの感染症ではなくなっているんです。ただ、ホテルや旅館は不特定多数の人が利用する場所です。季節性のインフルエンザや新型コロナウイルス感染症の症状があれば、私たち宿泊者側も、ホテルや旅館を基本的に利用しないなど、適切な判断をしていきたいですよね。
- 竹中
- はい。宿泊するかたも、ホテルや旅館などの従業員のかたも、誰もが気持ちよく過ごせる宿泊施設になるよう、ご協力をお願いします。
- 青木
- このほか、感染防止対策の充実には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 竹中
- 宿泊者名簿の記載事項について、「職業」が削除され、「連絡先」が追加されます。宿泊者は、ホテルや旅館から請求があったときは、氏名や住所に加えて連絡先も告げなければならないこととなります。これにより、感染防止対策の観点から、宿泊者が特定感染症の患者やその関係者であった場合などに、必要に応じて連絡が取れるようになります。
- 青木
- 以上が改正旅館業法の主な改正ポイントでした。もし、ホテルや旅館から不当な宿泊拒否等をされた場合は、各自治体等に電話して相談してください。またホテルや旅館側も、宿泊拒否などに関して悩んだ場合には、各自治体等に相談してください。
- 足立
- 今日の話の中にあった「改正された旅館業法の中でカスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行う迷惑客に対して、ホテルや旅館の営業者は宿泊を拒むことができるようになる」これは、良いことだなと思いました。迷惑客の人たちが減れば、私たちも気持ちよく過ごせますよね。
- 青木
- 僕が印象に残ったのは、足立さんもおっしゃっていたことですが、宿泊するかたもホテルや旅館の従業員のかたも、誰もが気持ちよく過ごせる宿泊施設になるように、という根本の願いが込められているところです。やっぱり、働いているかたも人間ですし、お客さんも人間、周りで見ている人も人間です。人間同士、良い気持になるようなコミュニケーションが図れればいいですね。
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