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Highlighting JAPAN

世界初の警備用ドローン

日本の大手警備会社がドローンを用い、セキュリティサービスを発展させている。

人々の暮らしの安全を守るサービスを提供しているセコム株式会社(以下、セコム)は、世界で初めて民間防犯用の自律型小型飛行監視ロボット「セコムドローン」を開発し、2015年からサービスを提供している。

セコムは1990年代からヘリコプターの空中農薬散布方法をヒントに、独自にセキュリティ用に小型飛行機の研究開発を行ってきた。背景には空き巣などによる短時間犯行の増加と、人々の日々の安全安心を守るというセキュリティサービスの質の向上がある。

従来のセコムのセキュリティシステムは、企業や一般家庭など利用者の建物の扉などにセンサーを設置し、外出する際に警戒モードにセンサーを切り替え、敷地内に不審者(車も含む)が侵入するような異常があれば警備員が駆けつけて確認するというものである。しかし、現場に警備員が駆けつけるまで一定の時間がかかり、不審者が立ち去った後に警備員が到着することもあった。こうした問題を解決するため、セコムは予め建物内外にドローンを待機させるという警備システムを考案した。不審者等の侵入異常をドローンが察知すると、追尾を開始し搭載されたカメラで車両ナンバーや不審者を撮影するシステムである。仮に不審者等が逃亡した場合でもその映像は追跡・確保に役立つ。ドローンの警備によって迅速な現場確認が可能となり、質の高いセキュリティサービスに繋がることに加え、現場確認のための同社の待機人員の削減にも貢献している。

「我々がドローンを使ったセキュリティシステムの開発コンセプトを発表した2012年、日本でドローンはまだ普及していませんでした。当時はドイツ製屋内仕様のドローンを試作機としましたが、我々のセキュリティ体制を実現するには、無人でも顧客の敷地内を自律飛行し、天候や昼夜問わずに屋外でも飛べる技術を持ったドローンが必要でした。そのようなドローンは市場になかったので、自社で開発することになりました」とセコムの企画部兼オープンイノベーション推進担当部長の長谷川精也さんは話す。

セコムは、完全自律飛行ドローンの実用化に向けてシステム技術の研究を進めた。いかなる時でも利用者の敷地を越えて飛行しないよう万全の対策を図り、ドローンのハッキング防止対策のため暗号化した無線通信を採用した。セコムのグループ会社には3次元地図情報(参照)作成技術があり、その技術を応用し3次元地図情報を自社開発のドローンに読み込ませた。これによりドローンは敷地内の障害物を避けながら不審者を追う一方、敷地外への飛行は制御することが可能になった。

こうした対策の背景には、2015年12月に施行された人又は家屋の密集している地域上空におけるドローンの飛行などを制限する航空法の一部改正があった。セコムがコンセプト発表から3年あまり、セコムドローン完成目前のタイミングの法改正だった。

「改正航空法の話は衝撃でした。念願の新サービスを開始した後に、法律に抵触してサービスを停止するという事態を避けようと、リリース時期を延期し2015年12月10日に改正航空法が施行されると即時に第一号として申請し許可を得た上で、セコムドローンは正式に運用できるようになりました」と長谷川さんは話す。

セコムは現在、決められたルートを巡回飛行するドローンの実証実験を行っている。実用化されれば、人間が警備巡回する代わりにドローンに建物の周囲を飛来させ、警備員は管理室で映像確認を通して警備する。屋根の上に飛来物があった場合、ドローンの高度を上げるだけで簡単に確認できる。

セコムは海外20の国と地域で事業を展開している。そのうち12の国と地域でセキュリティ事業を手がけており、各国の航空法や電波法をクリアしセコムドローンの海外展開を視野に入れている。

ドローンを利用した新しい技術が、より安全な世界の実現に貢献する日も近い。