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  • ジョン・ゴントナーさん
  • 2017年、日本開催のSake Professional Courseで、千葉県の酒蔵を見学する受講者
  • 講義をするゴントナーさん
  • 2016年、カナダのトロントで開催されたSake Professional Course
  • 訪問先の長野県で地元の日本酒を味わうゴントナーさん

November 2020

日本酒の伝道師

ジョン・ゴントナーさん

かつてエンジニアだったアメリカ出身のジョン・ゴントナーさんは、日本酒に魅せられ、日本酒ジャーナリストとして、執筆や講演、講座開催など様々な活動を行い、その魅力を世界中の人々へ伝えている。

2017年、日本開催のSake Professional Courseで、千葉県の酒蔵を見学する受講者

全国約1730の蔵元が所属する日本酒造組合中央会が2020年2月に発表した統計によると、2019年の輸出総額は234億円と10年連続で過去最高を更新、2009年度と比較するとその額は3倍以上となっている。輸出先では1位がアメリカ、2位は中国であった。

「ここ10年で日本酒を飲むアメリカ人が非常に増えました。日本食の人気が高まったこともありますが、ワインのソムリエが日本酒に関心を持ち、レストランでお客さんに勧めるようになったことも大きな理由だと思います」とジョン・ゴントナーさんは話す。

アメリカのオハイオ州出身のゴントナーさんは、日本酒に関する記事の執筆や講演、日本酒輸出などの活動を行う、言わば「日本酒伝道師」として知られる。

講義をするゴントナーさん

ゴントナーさんは地元の大学を卒業後、電機メーカーの電子エンジニアとして働いていたが、「年を取る前に、何か冒険をしたい」と考え、日本で国際交流と外国語教育に携わる青年を海外から招致するJETプログラムに応募し合格、英語の外国語指導助手として1988年に来日した。

日本酒の魅力を知ったのは、神奈川県の高校で教え始めてから数ヶ月が経った1989年の正月。日本酒好きの同僚の家に招かれ、東北、四国、九州などの蔵元の日本酒を飲み比べた時であった。

「それまでも日本酒は飲んだことがありましたが、味はどれも同じと思っていました。しかし、その時に飲んだ日本酒はそれぞれの味が大きく異なり、しかも非常に複雑で奥深い。そこから私の人生が変わったのです」とゴントナーさんは振り返る。

2016年、カナダのトロントで開催されたSake Professional Course

ゴントナーさんはJETプログラムの任期終了後も日本に留まり、東京でエンジニアとして働きながら、居酒屋で日本酒を飲んだり、蔵元を訪ねたり、日本酒に関する本を読んだりして日本酒の知識を深めていった。そうした中、偶然知り合った英字新聞(Japan Times)の記者に勧められ、英字新聞で日本酒のコラムを連載することとなる。これがきっかけとなり、ゴントナーさんのもとには、日本酒関連の著書の出版や講演など、様々な仕事が舞い込むようになっていった。

1998年にはエンジニアとしての仕事を辞め、日本酒を仕事の中心に置くことを決めた。それだけ、ゴントナーさんにとって日本酒は奥深い魅力にあふれていたのである。日本酒は原料となる米や水、造り方、産地の気候や料理などの要素の違いによって、実に多種多様な味わいが生まれる。同じ日本酒でも常温で飲むか、冷やして飲むかによっても味が変わる。また、日本酒を造る蔵人の高度な技もゴントナーさんには驚きであった。例えば、日本酒造りには米を蒸す前に水に浸す工程があるが、蔵人は米を水にどの程度の時間浸せば、米にどの程度の水が含まれるようになるかを計測機械は使わずに、極めて正確に判断する。

訪問先の長野県で地元の日本酒を味わうゴントナーさん

「日本酒造りの全て工程は、熟練の蔵人によって支えられています。もちろん、現代の科学技術も活用しますが、結局は蔵人の経験と勘が最も重要なのです」とゴントナーさんは話す。

日本酒に関する知識と経験を重ねたゴントナーさんは2010年に「きき酒マイスター」を外国人として初めて取得、2015年には全国新酒鑑評会の結審の審査員を外国人として初めて務めるなど、日本酒専門家としての地位を確立していった。

そうしたゴントナーさんが力を入れてきた活動の一つが、2003年にスタートした「Sake Professional Course」である。これはゴントナーさんが講師となり、日本酒の歴史、文化、種類、醸造工程などの知識を3~5日間で集中的に学ぶ講座である。日本のみならずアメリカ、カナダ、中国、シンガポールで開催され、これまで合計2,000名を超える人が参加した。原則、英語で講座は進められるので、日本で開催される講座も含めて外国人の参加者が多い。 講座では、様々な日本酒を実際に味わうだけでなく、日本での講座では蔵元を訪れ、酒造り工程を学ぶ。新型コロナ感染症(COVID-19)流行のため、現在、ゴントナーさんはSake Professional Courseをオンラインで実施しているが、世界中のどこでも受講できるようになったことから、受講者の国籍が多様化したという。

「COVID-19収束後には、すぐに蔵元への訪問を再開したいです。私は蔵元の人と話すのが大好きなのです」とゴントナーさんは語る。「ワインで言えば醸造元のシャトーに当たる蔵元といったお酒の造り手に関する情報は海外ではまだまだ知られていません。日本酒を海外で更に広めるためにも、今後、お酒の造り手に関する情報をより多く発信していきます」